朝起きると、のどが痛かった。ひさしぶりの休日。
 
朝からバレンタインまで開催している百貨店の催事にいく約束をしていた。
 
家を出ると冷たい雨。空気も痛いくらい冷たかった。
 
電車からながめていると、目的地に着くころには雪に変わっていた。
 
溶けかけの雪を乗せた列車。
ファーのついたあったかそうなフードをかぶるひと。
吐いた白い息をみて笑顔をみせるひと。
 
冬の風景にあたたかさを感じるのはどうしてなのか。
 
そんなことばの矛盾を考えたりしながら、約束の場所へたどり着いた。
 
本当にたくさんのチョコレートが並んでいる。
 
この時期の活気に、私は懐かしさと時間の流れと高揚感を感じずにはいられない。
 
3年半のあいだ、チョコレートの販売をしていた私は
 
バレンタインには深い思い入れがある。
 
どんなものにも込められた想いがある。
 
その想いを伝えるお手伝いを、チョコレートを通してできるよろこび。
 
チョコレートの広い世界を知れば知るほど
 
だいすきだと実感する。虜になる。
 
もっと知りたい。
 
そんな想いがまだ自分のなかにあったことに気付く。
 
昼過ぎまでゆっくり見て回って、
 
いくつか自宅用に、プレゼント用に、購入した。
 
とても幸せな気分だった。
 
帰り道、もう雨も雪も止んでいた。
 
空気は相変わらず冷たい。
 
だけどこころがあたたかい。
 
この季節にうまれた想いのおかげだ。
 
矛盾すらもそのままでいい、そんなやさしさが
 
私の中に、真冬の寒いこの季節に
 
いつのまにかうまれて、
 
あたためてくれていた。
 
それはことばにするのがむずかしいほど形のないもので
 
理解を強制したいともおもう隙を与えないほど
 
すべてのなかにあるもの、思い出すだけでいいものなのだとおもう。
 
いや、よくわからないけど。
 
そんな気がするだけ。
 
痛かったはずの冷たさが、心地よかった。
 
それでも足先の冷えはどうしようもなく
 
家に着くとすぐこたつにもぐりこむ私は、変わらなかった。