大きな東京タワーの下。
夏央は、私に話した。
私と彼は、小学校が同じだった事。
彼の初恋が私だった事。
すごい勢いで、彼は話し続けた。次から次へと、彼は想いを私に伝えた。
私はその話を聞いて、やっと納得した。夏央のことは、なぜか前から知っていた様な気がしたからだ。
「学年も違うし、オレは小学校の頃はもう少しぽっちゃりしてたから、見た目は変わったかも」
と言われ、更に納得した。今はシュッとした輪郭だが、これをもっと丸くしたら、ああ、確かに小学校にいたあの子かもしれない、とわかったのだ。不思議な感覚だった。懐かしいような、自分が小学生に戻ったような気持ちになった。
「何回かしゃべったことある…」
私はそう自然と口から出た。記憶が蘇ったのだ。高学年の頃、一緒に体育館で何かイベントで交流したことがあった。その話をすると、
夏央は目を丸くさせて、
「そうそう!それそれ!」
と大喜びだった。
そのイベントの最中に、夏央が指を切ってしまい、私がポシェットからバンドエイドを渡したそうだ。それが、夏央が恋に落ちた瞬間だと言った。そのことは覚えていなかったが、確かに私はいつもポシェットを持っていて、バンドエイドも持っていた。なんだかとても嬉しかった。
中学に入ると同時に私は隣の街に引っ越したのだが、夏央は当然同じ中学校に、私が来るだろうと期待してた、と言った。
「メイちゃん、引っ越したよ」
と友達に知らされた時のショックは、凄まじいもので、部屋で大泣きした、と言った。だからこそ、高校で偶然出会えたことに感動した、という話だった。
が、驚くことに、それで終わりではなく、翔太郎の告白事件に続いた。
翔太郎が、夏央に嫌がらせをしたくて、私に告白した、と聞いた時、
「あー!だからか!」
と、私は思わず大きな声で言った。
翔太郎からの好意なんて一ミリも感じなかったし、なんで私?という謎がやっと解けて、スッキリしたのだ。
「ごめんね、メイちゃん。くだらないモメ事に巻き込んで」
と、夏央は言った。
「でもなんで、なんで嫌がらせするの?」
と、聞くと、
「さぁ、よくわからないんだよね、ただ嫌がらせしたいんじゃない?オレもあいつのことは嫌いだから、どうでもいい」
と、冷たく言った。
いつも一緒にいる仲間なのに、お互い嫌い合っているなんて、とても息苦しいのでは、と思った。でも夏央から感じられたのは、翔太郎の行動に悩んでいるというよりも、どうでもいい、といった、突き放した感じだった。
女子の場合なら、もっとネチネチして陰湿さがあるのかもしれないが、男子はこんな感じなんだろうか、と少し羨ましくも思った。
私たちは、石垣に座って話していたのだが、いつの間にか距離が近くなっていた。夏央の香りが届く距離にいられることが、私を温かくした。
人を好きになる、恋をする、ドキドキする、その人のことで頭がいっぱいになる、そういう感情を経て、交際に発展するのに、なぜ私はあの時、流されてしまったのだろう、と、またそこに行き着いた。
翔太郎が私に好意がないのなら、何も問題はない、一刻も早く別れたい。
「めいちゃん?大丈夫?」
夏央が心配そうに、私の顔を覗きこんだ。
「大丈夫!」
そう笑顔を見せた。
夏央もニッコリ笑った。そして、少し考えた顔をして、
「だから、めいちゃん、できれば、あいつとは早く別れて。あいつ頭おかしいから。それで…」
と言った。
「うん、別れる。そしたら…」
私もそう答えた。
二人で見つめ合って、笑った。
気が遠くなるほど、好きだと思った。
夏央は、顔を近づけた。
お腹と胸がギュウウっと縮む感覚がした。
私は、生まれて初めてキスをした。
つづく