--------3話のつづき--------




「やはり、5階に行くのは止めた方がいいかもしれんな。危険だ。」

「なんだと!バビシャ!!そいつぁどういう事だ!?」

みんな意味が分からず戸惑っている。

「危険って、どういうことなんだ!!!バビシャ!なぁ!バビシャバビシャバビシャ!!」

モコトが焦りと不安をそのままバビシャにぶつける。

バビシャは、小うるさいモコトを制するかのように、

ゆっくりとした口調で話し出した。

「実は・・・・・・おれに来た招待状には体育館に集合するように書いてあったんだ。」

「それはただ単に玄関には人が多すぎるから分けたんじゃないのか?」

ヒロが口を挟む。

「いや。違うな。おれが指定された時間に行ってみると、そこには誰もいなかった。」

おれらは指定された時間に遅れてしまったが、ほとんど同じ展開じゃ!

まさか・・・・

バビシャが頷く。

「そう、まっ赤な紙が貼ってあったよ。」

「!!」

みんなが唖然とする。

「でも、それだけでは危険かどうかなんてわからないじゃねーか!ま、ましてやただの同窓会なんだぞ!!」

またもやヒロが口を挟む。

どうやらヒロが一番怯えているようだ。

「じゃあ、耳をすましてみろよ。おれの言っている意味が分かるはずだ。」

俺たちはバビシャに言われるがままに耳を澄ます。

何も聞こえない。もちろん人の気配などない。

聞こえるのは隣で興奮するモコトの荒い鼻息だけだ。

おかしい、ここは4階。

さっきは3階くらいから4階のバビシャと神戸の声が聞こえた。

ならばここから5階で開かれている同窓会の声が少しは聞こえてもいいはずだ。




・・・・・・・・・・

「な、分かっただろ?・・・・・・いわゆる一つの、こんなにおかしなことはない。」

バビシャがゆっくりと口を開く。

みんなもその言葉に促されて頷く。

しかし、そんな中、一人だけまだ目を閉じ耳を澄ましている男がいた。

モコトだ!!!

どうもモコトはまだ理解できていないようだ。

そんなモコトをほっといてバビシャの話は進む。

「実はおれは前日に土谷と安木と連絡をとっていたんだ。」

土谷と安木もそんなに仲良くはなかったが、俺たちの同級生だ。

もちろんみんな知っている。

「なんと驚くことにみんな集合場所が違ったぜ。だから、ちょっと警戒して遅れて行くことにしたんだ。

まぁ、実際仕事が忙しかったからって理由もあったがな。

土谷と安木は先に時刻通り行き、おれがこっちに到着したらケータイに連絡するようにしてあったんだ。

だが、電話してもつながらない。どれだけかけても、2人とも圏外なんだ。

一応4階まで来たが、そこでばったり神戸に出くわして・・・」

なるほど、そういう経緯があったのか。

それにしても・・・・圏外だって?

おれは慌ててケータイを出す。

みんなも各自ケータイを確認している。

電波表示は・・・・・・「圏外」だ!

「おいおいーー!!!どーゆーこったこりゃ!!」

タックが悲鳴にも似た叫びを上げる。

「な、なんだよ!人口カバー率99.9%達成ちゃちゃちゃうんか?

まさか、か、か、ここ残りの0.1%?パパパパパ・・・!!」

珍しく噛み噛みでモーテルが慌てる。




いや、違う。

この学校に入るまでは3本電波は立っていた。

だって、おれは確認したんだ。

チカちゃんからのメールが入っていないか、この学校に入る前に確認したんだよ。

だから間違いない。もちろんチカちゃんからのメールはなかった。

「この学校新しいから、圏外になるんじゃね?」

ヒロの言っためちゃくちゃな一言に、みんなが無理矢理納得する。

みんな、恐かったのだ。

だから無理矢理納得するしかなかったのだ・・・・






「くっそー。でも、ほんとにおかしいことだらけだぜ。もう帰っちまおーぜ。」

タックが怒る。

「おう!そうだぜ。帰ろうぜ!!帰ろうぜ!!」

ここぞとばかりにモコトも同意する。

なんだかみんな不安を隠しきれなくなってきているみたいだ。




「でもやっぱり5階が気にならねーか?実はみんなおれらを驚かそうと静かにしてるだけかもしれねーじゃん!」

ついついみんなに同意を求めてしまったおれがいた。

だって、おれはどうしてもこの同窓会に参加したかったんだ。

そのためにこんなに15万もかけてオシャレしてきたのだ。

こんなところで終わってたまるか!!

おいらのヘア・マックスはどうなる!!!

おれのサクセスロードはここから始まるのだ!!!





「やめよぉーぜぇ。なんか嫌な予感がする。何か・・・何か恐ろしいことが待っている気がするんだ。」

モコトが怯えて訴えるが、モコトの話に耳を傾ける奴は誰もいない。

インチキ霊能力者のレッテルは思ったより大きいのだ。

「まあ、取りあえず行ってみるか?こんだけいりゃなんかあっても大丈夫だろ。」

ヒロの言うとおりだ。こんだけ人数が揃っていれば大丈夫だ。

ましてやバビシャがいる。

こいつがいれば鬼に金棒だ。

バビシャも渋々同意して、おれたちは5階に行くことになった。




暗く長い階段を上り、5階につく。

相変わらず校内には異常なくらいの静けさが続いている。

「美術室はどこやろかいな?」

モーテルが辺りを見渡す。




「うぅん。。」

その時バビシャの背中に背負われていた神戸が口を開く。

「おお、神戸・・・・大丈夫か?」

リョウが心配そうに神戸をのぞき込む。

「うん。だぁいじょおぶだぁよ。・・・なんだかバビシャ君が急所を外してくれてたみたいだよ。」

神戸はそう言ってバビシャの背中から降りる。

「ゴメン。バビシャ君・・・・・・・・・・いわゆる一つの、ぼぉくが悪かったよ。」

神戸がバビシャ調で、バビシャに謝る。

「いいや。いわゆる一つの、もう気にするな。」

バビシャは笑顔で神戸を許す。

緊迫した空気の中、ようやくみんなにも笑顔がこぼれた。

それは、ほんの一時の出来事だったが、俺たちの堅くなった心を少しだけほぐしてくれた。

本当に、良かった。

神戸ももう大丈夫そうだ。

そんな神戸だったが、

その後のモコトの神戸への、くどいまでの説教を逃れることは出来なかった。





取りあえず俺たちは暗く、どこまで続いているかわからない廊下を歩いた。

教室の表札を見ながら一つずつ確認しながら進む。

中には教室名が書いてない表札もあるので、その都度、緊張しながらドアを開けて確認した。





「しっかしこれじゃ、ラチがあかんな。」

ヒロが疲れたように言う。

確かに教室の数も多すぎる。

これでは全室調べるのには相当時間がかかるだろう。

その時、ふと、おれは窓の外を眺める。

外はもう日が落ちて、すっかり暗くなっていた。

ん?

ってゆーか、真っ暗だ。何も見えない。

あっれ?なんかオカシイ。。。。

心の奥に隠していた違和感が、一気に溢れだしてくる。

ずっと感じていたことだ。

そう・・・俺たちはこの中学校に閉じこめられたのではないか?ということだ。

おれだってそんなこと考えたくない。

だが、現実に誰かにここに呼ばれ、そして俺たちはどんどん奥へと足を向けている。

何かに導かれるように。

ひょっとして、俺達、とんでもないことに巻き込まれているのではないか!?

この学校だってそうだ。おれが外から見た最初の外観は以前と全く変わっていなかった。

なのに中に入ると、なんだ、このとてつもない広さは!?

ケータイも何故か圏外だし、不思議なことばかりだ。

そんな風に考えがまとまると、おれの中に急に焦りが生まれる。

おれは急いで窓に近寄った。




あっけなく窓は開いた。




ふぅ。なんだ。開かないかと思ったぜ。思い過ごしだな。

軽く安堵のため息をつき、下を見る。




ハァ!!??




下が見えない!真っ暗だ。

ここはたかだか5階なのに下が・・・地上が見えないってどーゆーことだ!?

その暗闇は、どこまでも続いていそうにも思える。

まるで、ブラックホールにでも吸い込まれたかのような感覚に捕らわれた。

そこしれぬ恐怖が、またおれの心を満たす。





いやいや、暗いからだ。

今日は曇りで月も見えない。だから異様に暗いだけなんだ。

おれは自分をそう納得させて、また美術室をさがすため廊下を歩く。

大丈夫。

きっと美術室に着けばみんなが楽しく同窓会をやってるさ。







「ドサッ」







その時、おれたちの後方から、

何かが床に倒れるような鈍い嫌な音がした。








つづく。

--------2話のつづき--------






「お前はまさか、バビシャ!!!!」

モーテルと、おれの声がかぶる。

みんな動揺している。

そう・・・この大男はバビシャ。

本名、池土 大(イケド ダイ)。

昔より一回り、いや、二回りも大きくなっているが、そいつ本人に間違いない。

俺たちの同級生である。ついでに小学校も一緒だ。

汚い話になって申し訳ないのだが、バビシャという人物を語る上で欠かせないので話しておこう。

バビシャというあだ名は彼が小学校の時にう○こを「ビシャビシャ!!」っともらした音にちなんでつけられたものだ。

「バ」が何故ついたのかは定かではない。

これはおれの推測だが、「ビシャ」そのままではあまりに露骨だったためと思われる。

こいつぁマズイな。

バビシャは完全にキレれている。

う~ん。困った。

こうなるともはや手のつけようがない。

神戸は小学校3年と、5年の2回、

バビシャの怒りにふれたことがあって、病院送りになっている。

二度あることは三度あるとはまさにこのことだ。

通常バビシャはとても温厚で、頼りがいのある男。

それを怒らすということは神戸に非があるのだろう。




その時リョウがバビシャに向かって走り出した。

「リョウ!待て!!!待つんや、リョウ!!」

タックが止めるもむなしくリョウはバビシャに突っ込む。

だがリョウは俺たちの中でも最近、冷静な男として認められつつある。

能ある鷹は爪を隠す。

何か策があるはずだ。

いや、むしろそう願いたい。

モーテルが不安と期待で葛藤しているおれの肩に手をやってつぶやく。

「リョウのあの顔を見よ・・・・」

見ると、リョウの顔は険しくも・・・・・・・晴れ晴れとした爽やかな顔だった。

「あれが、これから死にに行く無謀な男の顔に見えるか?」

モーテルがニヤリと微笑んだ。

その時リョウが左右に激しく首を振った!!!

バビシャはその不規則な人間離れした動きにとまどっている。

あ!あれは!!・・・・・・・・

さっきリョウが首を左右に傾げていたのは準備運動だったのか!!!

そしてとまどうバビシャをしり目に、バビシャの横を目にもとまらぬ素早い動きで駆け抜けた。

やった!!!

さすがはリョウだぜ!!

あのバビシャの横をいとも簡単に抜けるとは。

おみそれした。



・・・・・・・



感心していたおれだったが、なんだか腑に落ちない。

リョウは向こう側で最高の笑顔でピースをしている。とても満足げだ。

これ、チョット待てよ。チョット待てよ・・・・・・・・と。

混乱した頭を一度整理する。

リョウは見事なまでの動きでバビシャの横を駆け抜けた。

それはすごいことだ。

しかし、神戸は助かっていない。

バビシャも無傷だ。

状況は何も変わっていない。




・・・・こいつ、ただのアホや。・・・・・




くっそー。

こいつに期待したおれが馬鹿だった。

バビシャはそのまま神戸をさらに高く持ち上げた。

「待て!待つんだ!バビシャ!!!」

しかしバビシャには、その願い全く届かず。

そんな俺たちの前で、バビシャは神戸の腹部に懇親の一撃をくらわせた。

「ぶぉふっぶぁっ!!!」

何とも言い難い奇声と共に、神戸は天高く蝶のように舞い上がった。

それはそれは美しい見事な舞だった。

俺たちはしばし、その美しさに見とれていた。

そして、存分に空中で舞いを堪能したかと思うと、

今度は一直線に急降下した。

マズイ!神戸が落ちる!!!!

その瞬間、黒い影が神戸の下に入る。誰だ!!

それは、ほんの一瞬の出来事だった。




・・・そこにはリョウがいた。

床にたたきつけられそうになった神戸を間一髪で救ったのだ。

なんということだ。

おれは自分自信の心を恥じた。

リョウははじめから神戸がこうなると予測していたのだ。

すまぬリョウよ。

お前はやはり出来る男だったんだ。

それと同時にみんながバビシャを羽交い締めにする。

おれはリョウの元へ駆け寄った。

リョウはおれを見てニッコリ微笑んだ。

「リョウ・・・・お前なんて・・・なんて・・・スゴイ男なんだ・・・・すまん・・・おれ・・・・おれ最初・・・お前は・・・」

おれが謝罪を言葉にする前に、リョウがおれの口をそっと手で覆う。

「それ以上言うなて。おれはおれの出来ることを考えたまでだて。それより神戸の介抱を頼むて。」

「あ・・・ああ。」

おれは熱く込み上げてくるものをぐっとこらえ、神戸の様子を見る。

神戸は気絶しているだけのようだ。

しばらく寝かせれば回復するだろう。




しばらくすると、バビシャの方も怒りがおさまってきた。

「ふぅ。なんとかこの場は一件落着だな。」

モコトが額の汗を拭いながらおれに言った。

お前は机の下で震えとっただけやんけ。

そう思ったが、あえて口にはしなかった。

とにかく一安心だ。

でも、なんでケンカなんてしたんだろうか?

バビシャもだいぶ落ち着きを取り戻したようなので、羽交い締めにしていたタックやヒロも腕を緩めた。




おれはバビシャにいきさつを聞くことにした。

「バビシャ・・・・・なんで・・・」

おれが何を聞こうとしてるのか察したように、バビシャが語り出す。

「実は・・・・・・・5階に行く途中で神戸と出会ったんだよ。いわゆる一つの、「久しぶりだな!」という話になって、昔話に花が咲いたのさ。しかしながら神戸がおれの小学校の時の失態について事細かに話してきて、・・・・・・そして・・・・・・そして笑ったんだ・・・いわゆる一つの・・・・虐待だよこれは・・・・」

バビシャはそこまで言うと、下を向いた。

そうか・・・あのう○こ事件のことをまだ気にしていたのか。

泣いているのかバビシャ。

お前も悲しき宿命の星のもとに生まれた哀れな男よ。

今ここにいるのは本当に純粋で、本当に繊細なガラスの心を持った、ただの大男だ。

「そうか・・・」

おれはそれだけ言うとバビシャの肩に手を置いた。

俺たちはバビシャの心の傷が癒えるのを待つためにしばし、休憩をとることにした。





「もう大丈夫だ。みんな・・・・いわゆる一つの、ありがとう。」

しばらくするとバビシャが、精一杯の笑顔でおれたちにお礼を言ってきた。

まだ心の傷は癒えていないだろうに。

その大きな傷を背負ったまま前に進もうというのか?

なんという強い男よ・・・・・バビシャ。

今だけは、大きなバビシャがやたらと小さく見えた。

「君たちも同窓会に呼ばれたのかい?」

そんな自分を隠そうとするかのように、バビシャは本題に入る。

バビシャの問いにみなが頷く。

「そうか、君たちも体育館集合だったのか?」

「そうそう、俺たちも体育館集合だったんだけど遅れちゃって・・・・・・・え!?体育館??おれらは玄関に来てくれって書いてあったけど?」

ついついつられて答えていたが、間違いに気づき、おれは少しばかり焦った。

「やはり・・・・そうか・・・」

バビシャの表情は真剣になっていた。

「やはり、5階に行くのは止めた方がいいかもしれんな。危険だ。」





つづく。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・

・・


・・・・・・・・・・・・・う~ん。

なんだか頭がぼーっとする。

なんだこれは?

おれは寝てしまったのか?

今日は・・・・なんだっけか・・・・・

うぅ・・・・みんなで集まって・・・・・それで・・・同窓会・・・・・・

!!!!!!!!!!

そう、今日は同窓会!!!

ハッと目が覚めた!

なんということよ!!時計を見る。

はぅあっ!!

時刻は6時ちょうど。やべぇ!!

集合の時間だ!!

周りを見るとみんながグッタリして寝そべっている。

そういえば、みんな酒が弱かったんだ・・・・・

とにかくおれは急いでみんなを起こした。

なんとかみんな起きて、取りあえず一般人のマナーのため後かたづけをした。

「あれ?神戸がいないぞ。どこ行ったんだ?・・・・・・・・・・・・・・・ま、いっか。」

モコトが気づいたが、勝手に自分で整理してしまった。

相変わらず薄情な奴だ。

「おーい!神戸ーーーー!!」

おれも一応あたりを見渡し呼んでみたが神戸はどこにもいなさそうなので、

「ま、いっか。」

という結論になった。

とにかく今は、神戸どころではない急がねば。

あいつは既に向かったんだろう。

おれたちは勝手にそういうことにして集合場所の中学校へと急いだ。




6時35分。

なんとか中学校についた。

くっそ、神戸探索で5分も時間を割いたのが響いたな。

あいつを探さなかったら6時半ジャストに気持ちよくここに到着できたのに。ちっ。

自分勝手な怒りに身を任せているおれの隣で、

「くっそー。やっぱ遅かったか!!しまったな!」

タックが自慢の筋肉を震わせながら、激しく怒りをあらわにする。

「くっそーおれがもう少し酒が強ければな・・・・ブツブツ・・・」

モコトが根本的な問題で悩む。

「ったく、これじゃどこで同窓会やってんのか場所がワカンメーよ。」

モーテルがダジャレを交えて今の気持ちを表現する。

大体こういった集まりごとは相場は飲み屋と決まっている。

どこの飲み屋でやってんだろ?

まぁでもこの町に飲み屋なんて2軒しかないから電話すりゃわかるか。

あ・・・・

ちなみに一軒は俺んちやんか。

ってことは、もう一軒の方だっちゃ。てへっ。




と、お茶目な一面も覗かせてみたおれだったが、

さっきから気になっていた事があった。

それは、他のみんなも本当にここに集合していたんだろうか?ということだ。

その割には誰かいた形跡が全くない。

おかしい。

これは明らかにおかしいぞ。

ここに他の人間が集まっていたならゴミの一つもあってよさそうなものだ。

どこを見渡してもゴミ一つ無い。

ついさっき掃除でもしたかのように綺麗である。

おいら間違えてたんか?

不思議に思っていたその時、良が変な言葉で指さしながらわめいた。

「う~っ。なんだて!あれ!!んだんだんだ!!」




そこには・・・・・・・・とても殺風景な掲示板があった。

中央にまっ赤な一枚の紙のみが貼ってある。

みんながその紙に引き寄せられるように近寄る。




その紙には黒い文字でこう殴り書かれていた。

「ようこそみなさん。本日の同窓会はこの中学校の5F美術室でやります。オコシ クダサイ マ  セ」

また、この手紙か。

最初から美術室ってかいとけよ。

またもや怒りが込み上げてきた。

「なぁんだ、みんな5Fの美術室でやってんだな。行こうぜ。」

あっけらかんとヒロが言う。

なんだか釈然としない気持ちのまま、おれたちは5Fに向かった。




久しぶりに入る中学校は、俺たちが通っていた頃とは違う印象を与えた。

まぁ、おれらが成長したからだろうな。

「それにしても暗えな。なんで電気つけねーんだろ。」

タックがもっともな意見を言う。

確かに非常灯の明かりしかついていない。

「まぁ、全部つけると電気代がバカにならないからじゃん?省エネの世の中だからね。」

モコトがサラリと答え、続ける。

「それにしても思ったんだけどさ、この中学校って5階ってあったっけ?」

「ん?そう言われたらそうだて。確か3階建てじゃなかったけかて!!!しかも、美術室って2階だて!!」

リョウが激しく左右に首をひねる。

おいおい、確かに驚くべき事実だがそんなにひねったら首がイカレちまうぞ。

リョウに言われるまですっかり忘れてたけど、

美術室って2Fだった気がする。

「なんだよー。改装でもされたかこの学校?昔とだいぶ変わったなー。」

タックが周りを見渡した。

「確かに以前とは全然違うな。めちゃくちゃ広くねーか?廊下の先が見えねーもんな。」

おれが言うと、みんながうなずいた。

さっき外観を見た感じでは昔と全く一緒だったような気がしたんだけどな。

ここに来てから、ぬぐいきれない違和感。

多分みんなも感じていることだろう。

そんな気持ちを振り払うかのように、

俺たちはとにかく指定された5階に向かった。




長い階段を登っていると、上の方から声が聞こえてきた。

お!やってんな!どうやら盛り上がってるみたいだ。

階段を上るにつれてその声は大きくなってくる。

でも、なんか変だぞ。




「おま・・・が・・・・えこ・・・・!!!!・・・・・し・・・・・・じゃ!!!」

「・・・ぼぉ・・・・く・・・は!!!・・そん・・・・な!・・・・・!!!!!」




声は良く聞き取れないが、どうやら誰かが言い争っているようだ。

俺たちは階段を駆け上った。

4階までくると、声はハッキリ聞き取れるようになっていた。

声はこの階の奥のほうから聞こえてくる。

「なぁ~にを言っているんだね!!君は!!久しぶりに会ったのに、いわゆる一つの・・・また殺されたいのか!!!オラァッ!」

「いわゆる一つのって・・・そぉんな・・・・ぼぉくは・・・・ぼぉくは・・・・ただ・・・たぁだ・・・・・」

ん?待てよ。

この声。この喋り。

みんながかおを見合わせる。

「神戸だ!!!!」

神戸が誰かともめているようだ。

俺たちは4階の声のする教室へ飛び込んだ。




中に入ると神戸が誰かに襟首を捕まれている。

しかも驚いたことに身長180cmを越える神戸を片腕一本で持ち上げているのだ。

こちらからでは背中しか見えないが、とにかくこいつはとてつもない大男だ!

「うぅうぅうう。み・・・みんな・・・ぼぉーくは・・・悪気はなかったんだぁよ・・・」

神戸はすでに虫の息だ。

早く助けてやりたい。

しかし、これほどまでのパワーの持ち主、タックでも勝てるかどうか・・・・

ただならぬオーラを前に、俺たちは躊躇した。




突然、リョウが叫んだ!

「ダァーー!!神戸を放せて!おれが相手だて!!」

あわわわわ。

なんちゅー無謀な男よ!!

余計なこと言うな。わわわ。己を知れ!

大男がゆっくりとこちらを振りかえる・・・・・・

・・・・・

あれ?

どっかで見たことあるぞ。

まさか・・・・

この巨漢・・・・・

神戸を持ち上げるほどの剛力・・・・・

そして何より、ビールの泡がジョッキから溢れている様を彷彿させる不思議なシルエットのこの髪型・・・・・

間違いない・・・こいつは・・・



「お前はまさか、バッ、バッ、バババッ、バビシャ!!!!」





つづく。

・・・1ヶ月後。








既に3日前からおれは地元に帰省していた。

今日は、待ちに待った8月15日。

・・・おれたちは早めに地元の公園に集合することになっていた。

その日、おれはお気に入りの一張羅に着替えた。

そして、いつもよりさらに一段とおめかししてみる。

もちろんハイカラシティTOKYOの洗練されたオシャレさをみんなにアピールするためだ。

そう・・・「おれはハイカラシティTOKYOでブイブイ言わしているんだぜ!」的な雰囲気をかもしだすために・・・

今日のためにハイカラシティTOKYOで15万円もはたいて服を買ってきたのだ。

本日のオシャレポインツは、この靴・・・・そう、ネイキのヘア・マックスだ。

しかもみんなには絶対言わないがニセモノです。

このヘア・マックスが今、ハイカラシティTOKYOでは大流行なのだ!

へへっ。

みんな驚くに違いない。

今宵の宴(同窓会)では何かあるかもしれない。

ひょっとすると誰か女の子と・・・・へへへぇーへへっ。

その為にもオシャレは欠かせないぜ。ぐふふふふ。

おおっと、こうしちゃいられない。

早く行かなければ。

おれは近くに用意してあったピンク色の箱から、

コンドームを出来るだけ鷲づかみ、部屋を飛び出した。




おれは変な期待を胸の内に秘めつつ、公園へと向かった。

まだお昼時。

天気は良好。

熱い陽射しがおれの配達焼けした肌をさらにこんがり小麦色に焼く。

山に囲まれた景色は以前と全く変わっていない。

近所のおばちゃんが畑を耕している。

こんな光景はハイカラシティTOKYOでは絶対に見られない。

なんだかこちらは穏やかにゆっくりと時間が進んでいるように思える。

しばらく歩くと公園が見えてきた。

よくここで遊んだものだ。缶蹴りや鬼ごっこ。

花火戦争をした時は、

近所の家にロケット花火が飛び込んでしもて、必死に逃げ帰ったっけかなー。

懐かしい思い出が走馬燈のように甦る。

公園につくと皆すでに集まっているようだ。

おれは懐かしさと新鮮さを感じながら一人ずつ確認する。

・日下茂誇斗(ひげ もこと)
・井堂琢磨(いどう たくま)
・加藤良一(かとう りょういち)
・田淵弘敏(たぶち ひろとし)
・神戸高広(かんど たかひろ)
・星野輝(ほしの てる)

そしておれ中下孝義(なかしも たかよし)

仲のいい7人がついに揃ったわけだ。

相変わらずみんな元気そうだ。

「おーうぃ!みんな!」

おれは走り寄った。

「おう!久しぶりじゃん。元気だったのかい? おっ。まぁまぁオシャレになったじゃん。」

モコトが標準語バリバリでしゃべる。

こいつはハイカラシティTOKYOに汚染されすぎている。

それにしても・・・・「まぁまぁ」ってつける所がモコトらしい。

まぁまぁとは・・・

「お前もおれほどまでではないがオシャレになったな。その意気込みで今後も勝手にがんばってくれよ。まぁ、到底おれに追いつけはしないだろうがな。ははは。」

的な意味合いを含んでいる。

くっ。

モコトから見下されるとは・・・これほどまでの屈辱、未だ

かつて味わったことはない。

悔しかったのでおれも言い返してやった。

「お前も元気そうだな。まぁまぁオシャレやん。そのTシャツ。」

モコトの顔が瞬く間にピンク色に変わった。



しばらく、そんな皮肉ったやりとりを皆で交わした。

誤解を招く前に言っておくが、お互いけなし合っていても、

仲が悪いというわけではない。

これは俺たちの挨拶みたいなもんだ。

仲がいいほど相手を落とす。

これがおれたちの、「おれ流」ってやつよ。



とにかくこの個性豊かなおれ以外の6人を簡単に説明しておこう。




日下茂誇斗(ひげ もこと)・・・まずはこいつをトコトン嫌と言うほど紹介せねばなるまい。

一言では紹介しきれないが、こいつはとんでもない男だ。

そのエピソードは星の数ほどあるが、

その内の一つは、モコトがかつて自分が霊能力者だと思いこんでいたことだ。

そう、あれはみんなで肝試しに行ったときのことだ。

以前から「おれには霊能力がある」と、豪語していたモコトは草むらを指さしてこう言った。

「ここはやばい。寒気がする。君たち。絶対にこの草むらには近づくな。おそろしや~おそろしや~。あぁ・・寒気が止まらない・・・」

みんなはびびりまくって一目散に帰宅した。

当のモコトはというと、次の日風邪を引いて熱を出した。

なんと・・・ただ単に風邪の初期症状で寒気がしていただけだったのだ!!

肝試し以前から風邪薬は飲んでいたらしい。

それ以来モコトは「インチキ霊能力者」と呼ばれる。

しかし、モコト本人、嘘をついていたつもりは全くないのだ。

本気で自分が霊能力を持っていると思いこんでいたのだ。

要するに勘違いボーイってやつだ。

許してやって欲しい。

さらには中学校のバレーボール部で3年になった時ついにレギュラーを手にしたモコトだったが、

速効で後輩に追い抜かれてしまい、

出場回数1回こっきりというなかなか真似できない伝説も作り上げている。

おれもよくバレーボール部を応援しに行っていたのだが、

モコトがベンチ横で興奮気味にアップしだし、

「お!ついにモコト投入か!!?思い切った采配だぜ!!」

と思っていると、そのまま出番無く試合が終わってしまい、

体がほてってピンク色になったままベンチに引きあげるケースを何度も見た。

アップの総合時間は誰にも負けないだろう。

自信を持てモコト。

それが今後の人生への糧になるはずだ。

そんな忍耐強いモコトだがこいつもいいところはいっぱいある。

まず、多分だが頭が良い。

顔に似合わずサイパンが好きで、

スキューバーダイビングというサワヤカな趣味を持っているということ。

ソフトボールが好きだということ。

こう見えて以外と真面目だったりもする。

他が見えなくなるくらいに一つのことに熱中するタイプだ。

みんなには冷静沈着で先を読んで行動しそうに見られるタイプだが、

以外と感情的になりやすくパニックに陥ることも多々ある・・・

良い悪いはあるにせよ、

特筆すべきは、とにかく誰からも愛される憎めない奴で、

こいつ抜きでは俺たちの存在理由を語れないほど絶大な価値を持った男だということだ。




次に井堂琢磨(いどう たくま)。

通称タンクトップのタック。

こいつもものすごい男だ。

元々自衛隊に入っていて、今はオレと同じ公務員をやっている。

背も高く、筋肉ムキムキで誰もが憧れる理想の体をしている。

趣味は筋トレ。キレイ好き。秘密主義。

顔はハーフのような端正な顔立ちだ。

俺たちのグループの中で最も男前だろう。

・・・・・・・・・まっ・・・・まぁ、おれよりは下だがな。

多少は認めてやろう。う、うん。

でも、何故か彼女を作らない。

かといって女遊びが激しいわけでもない。

秘密主義なので実際どーだかわからんが。

最近思ったのだが、こいつはただ一人の時間が好きなだけなのではないだろうか?

それだけのような気がする。

でもここぞと言う時は、その人間離れしたパワーと熱い正義感で俺たちを守ってくれるだろう。

そんな好青年だ。

あ、こいつも一つだけ弱点があった・・・

肉体は強いのだが、下の方は今イチ弱いらしい。

あくまで噂ではあるが、一応ここにバラしておく。




加藤良一(かとう りょういち)、通称リョウはとても熱い男だ。

背は低く、少しばかり猿の面影が残るかわいらしい顔立ちをしている。

・・・え?何?

芸能人で言えば誰に似てるかって?

即答しよう。

「ポンチオサム」に似ている。

・・・・え?・・・みんな知らないの?

うーん。

要するに、「はぐれすぎ刑事の里見刑事役」にクリソツだということが言いたいわけ。

これで、お分かりか?

天然ボケで母性本能をくすぐるのはこいつの得意技だ。

しかしその反面かなりアグレッシブな一面も兼ね添えている。

例えばナンパなんかは平気でやれるし、かなりの女好きだ。

度胸と無謀さは俺たちの中でもダントツトップだろう。

タンクトップではないぞ。

実は誰よりも冷静沈着で全て計算ずくなのでは?

という説が最近、急浮上してきているが、それはどうなんだろう?

でも、ありうるな。

あ、そういえばこいつ結婚して子供も一人いるんだ・・・

未だに信じられないぜ。




田淵弘敏(たぶち ひろとし)通称ヒロは、こいつも鍛えに鍛え抜かれた生え抜き戦士と呼ぶにふさわしいだろう。

かつてヒロの口から何度も発せられた

「ドカンと一発、旗あげしようぜ!」

という野望に充ち満ちた言葉はあまりにも有名である。

結局ヒロの言う旗あげとはどんな行為を示すのかは分からなかったが、

とにかくヤンキーに憧れる男であった。

今では落ちついている。

根はとっても優しいキャバクラ好きの大工である。




最後に神戸高広(かんど たかひろ)は保育園からの幼なじみで、背が185cm以上もある。

しかしただのヒョロヒョロの菜食主義者だ。

見かけはインテリヤクザに間違われるほどの強面だが、

しゃべると「ぼぉ~くは~」と、

自分のことを「ぼく」呼ばわりするとってもシャイで変わった男だ。

もちろんケンカはめっぽう弱い。

背も高く容姿は悪くないのだが、いまいちつかめない性格が、

女性のハートをもつかむことができず、

俺たちの中では女にもてない男の代表として未だに君臨し続けている。




これで全員の紹介がやっと終わったな。




あ、しもた。

モーテルの紹介が無かったな。

ま、いっか。

前に説明してるし、それを読んでおくれよ。

今後も新しい人物が登場するたびに説明せねばならんのか。

ふぅ。

パイプ役というのも結構大変だ。

結局、紹介というよりけなしてばかりだったような気がするが、これも愛情の裏返しだ。

なんだか仲のいい仲間を褒めるってことがどうも恥ずかしくてな・・・みんなすまんな。

まあ、これも「おれ流」ってことで片づけといて。




まぁ、そんな感じのイカれたメンバーが揃ったのだが、

さぁ、これからどうしようか?

まだ時計は2時を回ったばかりだ。

「とりあえず・・・乾杯すっか!?」

ヒロトシが缶ビールを出した。

「まぁ、昼からビールも悪くないな。ここは都会を忘れて

パーッっと景気づけにやるか!」

「カンパーーーーーーーーウィ!」

俺たち7人は久々の再会を祝って乾杯した。

その後話は尽きず、おもろい昔話をネタに、例えばタックがストーカーに追いかけ回されたりだとか、ヒロの弟がいかり肩だとか、モーテルが屁をこいたりだとか、モコトがサイパンで海に入ったら水の中の魚が全て気絶してしまっただとか、おれが郵便配達の途中でヤクザさんに怒られたりだとか、リョウが「あぁーーーっ!」と奇声を発したりだとか、
神戸がオチのないつまらんどーーーーでもいい話をしたりだとか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そんな感じで楽しい時間を過ごして・・いたら・・・・・・・・・・

そんな・・・・そ・・・そんな・・・・・感じで・・・・・・・・・・・・・・

みんな・・・・・・よっぱらって・・・・・・・・・・あれ?・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・

・・





つづく。

そこにはこう記されていた。

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拝啓、親愛なる中下 孝義様。
お元気でお過ごしでしょうか?
今回、あなたに送りましたのは、中学校同窓会の招待状でございます。
あなたの過ごした中学3年間の思い出を、
久しぶりに会う仲間と共にひたってみてはいかがでしょうか?
是非ともお越し下さいませ。
きっと忘れられない1日となることでしょう。

ゼヒ トモ オコシ  クダサイ  マ  セ

会費 無料
日時 8月15日午後6時開始。
場所 中学校内1F玄関にお集まり下さい。

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8月15日って、お盆じゃねーか?まぁ、お盆なら人も集まるだろうが・・・・
それにしても差出人の名前はないし、
「是非ともお越し下さいませ」を二回も言っているところがウザイ。
しかも、二回目はなぜかカタカナで途切れ途切れだよ。なんで?
これでは怪しすぎて行く気にもならない。
そういえば、中学校名も書いてない。今流行のオレオレ詐欺のたぐいか?
とにかく意味不明だ。黒い封筒も怪しく見えてきた。
全く誰だ、こんないたずらをするのは・・・

その時マイ携帯電話が鳴った。非通知着信だ。
誰だ?でようかでまいかオレは迷った。
ひょっとして出会い系の架空請求の電話じゃないだろうか。
全く最近はこんなのばかりだな。腐った世の中だぜ。

・・・・・ん・・・・いや待てよ。

そういえば、今日は以前から片想いだったチカちゃんの誕生日じゃないかっ!!そういうことかっ!!・・・・

チカちゃんとは大阪生まれのとっても元気でキュートな女の子だ。おれがずっと追い続けている憧れの子なのだ。
もしかしたら、電話番号を変えて電話してきたのかもしれない。
そして、多分こう言うんだ!
「久しぶりだね! 最近、孝義君と全然会ってないやぁんかぁ。いろいろお話もしたいし、良かったら今度食事でも行かへん?」
あはは。かわいいやつめ。
そうかそうか、最近ずっと連絡とってなかったからかけづらくて、わざわざ電話を変えたタイミングでおれを誘ってきたのか。なるほどなるほど。
恥ずかしがり屋さんだなぁ。うふふふふ。

おれは、嬉しくなってノリノリで電話に出た。
「ヘーイ!! めっさ暇な中下ですよ!!!」
・・・・・・・
「おお!よっくん?久しぶりブリーフ!」
なんだか聞き覚えのあるテンション高めの男の声が聞こえてきた。
この声は・・・・・・もちろんチカちゃんではないだろう。
事実を認識したくはないが、確実に違うだろう。
ちょっとガッカリしたが・・・この声の主は一発で分かった。
「おお!モーテル君か!!!誰かと思ったよ!」

モーテルはおれの幼なじみ。本名、星野 輝(ほしの てる)もちろん中学の同級生でもある。
おちゃらけてイカれたイカ臭い男なくせに、女にモテモテ。そのためつけられたあだ名が「モーテル」というわけだ。
もちろん本当のモーテルも頻繁に使用するため、そっちの意味も含まれている。
この男なら芸能界でも通用するのではないだろうか?
いや、それは言い過ぎだな。そーんなことはありえんわ!そこまでのもんちゃうわ!
まぁ、おれも劣らず、いやそれ以上のイケメンボーイなのだがな・・・・・どうしてもチカちゃんだけは落とせない。はぁ。

モーテルもここハイカラシティTOKYOで広告代理店の営業マンとして働いている。同じハイカラシティTOKYOでも、やつは最近仕事が忙しすぎて年に3、4回会う程度だ。

「非通知だったからわからんかったわ」
「すまねーすまねー!!ケータイ新しくしたばかりでさ!それはそうと・・・」
モーテルが続ける。
「黒い封筒に入った招待状来た?」
おれは一瞬ビクっとした。
「おお。来たぜ?チミにも来たの?」
「やっぱり、よっくんにも来てたか。実はさっき他の奴らにも聞いたらみんな来てたぜ。」
おれはモーテルに詳しく聞いた。
どうやらモーテルの話だと、他にこの封筒が届いた人間は、
日下茂誇斗(ひげ もこと)・井堂琢磨(いどう たくま)・加藤良一(かとう りょういち)・田淵弘敏(たぶち ひろとし)・神戸高広(かんど たかひろ)
・モーテル・おれの合計7人だ。
もち全員中学校の同級生だ。

「んでさー。さっきみんなと相談して、おもろそうだから行ってみっか。ってことになったけど、どうよ?」
「マジ!?そんな怪しい同窓会いくんかよ!?・・・・・・・」
でも、確かにおもしろいかもしれない。
呼ばれているのはおれ達だけではないだろうし、久々に地元に帰ってみんなに会うのも悪くない。
仲のいいモコトなどここ一年ほど会っていない。あいつはもともと薄情なところがあるからな・・・電話すらないし。

まぁ、最近このTOKYOでの暮らしに飽き飽きしていたところだ。たまっている有休を使って羽でも伸ばすかな。

そう思うと単純なおれはだんだん楽しくなってきた。
「よし!行こうぜ!」
おれはモーテルにGOサインをだした。どうやらみんなも有休を使って行くらしい。考えることは皆同じか。
「ほんじゃ1ヶ月後な!よろしくメカドック!バイビー曖昧ミーマイン。」
モーテルはかなり懐かしいギャグを言い残し電話を切った。やれやれ、いつまでたっても困った男よ。

にしても、みんなが行くということが分かって、少しワクワクしてきたぞ。
不安もあるがそれがまた楽しみの要素のひとつだ。
不安という名の感情が、日常のつまらない日々を変えてくるであろう刺激的な気持ちでおれを満たす。


あぁ、こんなに心地よく眠れるのは何年ぶりだろう。

時計の針はまだ7時を回ったばかりだったが、

オレは1ヶ月後を夢見ながらに床についた。





・・・・・・・・・それが悪夢の始まりだとも知らずに・・・・・・・・・



つづく。



午後6時30分。

おれは、揺れるバスの車内から、とめどなく流れゆくネオンの川をぼんやりと見ていた。

何も考えない・・・何も聞こえない・・・ただキラキラと流れる光を眺める・・・

そんな、宇宙のような異空間に入った感覚にとらわれるのがおれは好きだ。

ここはおれが現実逃避できる場所の一つだ。そう。

おれは心地よい脱力感に満たされていた。

「・・・次は~激しき町~次は~激しき町です。・・・」

バスの車内にいつもの音声が流れ、そんなおれを一気に現実に引き戻す。

ついでに、おれはこの機械的な音声が、とっても気に入らない。

いつまでたっても慣れることができない。

田舎育ちだからだろうか?

ふと、我に返って周りを見渡す。

社内は人でごった返しているのに、誰一人しゃべることはない。

無言でうつむいている。

地元のバスだったらワイワイいっているのにな・・・・

ふと、昔のことを思い出す・・・・

まぁ、こんな都会では仕方ないか。

人が多すぎて人と人との繋がりなんてあったもんじゃない。


みんな孤独に生きている。



機械的な街・・・そう・・・ハイカラシティ・・・TOKYO。



おれの名前は、中下孝義(なかしも たかよし)。

なぜかみんなには孝義のヨシをとられて、ヨックンと呼ばれている。

高校を卒業してすぐ上京した。

約半年間勉強して、郵便局の国家公務員試験に受かり、それからもう8年この街にいる。

もう26歳。あっという間とはこのことだ。




平凡な毎日、単調な仕事・・・いつも決まった定時に帰宅・・・・・

おっと、最近は郵政民営化などで騒がれ仕事も少しばかりビジーになってきているが、

それでも定時にはきっかり帰れる。

ってか、帰ったる。絶対帰ったる。

そして・・・いつも同じ髪型・・・

おおっと!これは自分が悪いんだな!

反省。

皆に言わせると、昔からオレの髪型は変わっていないらしい。

自分なりにいつも変えてみているつもりなのだが・・・

え?どんなかって?

しょーがねー、初回限定で特別にお教えしよう。

簡単に言うと、ヘルメットのようなまーるいシルエットだ。

と、そんなどうでもいいことを考えていると、バスの扉が開いた。

「激しき町でございます。激しき町でございます。」

くそったれな車内音声が流れる。

ふぅ、降りなければ。おれはたいして何も入っていないカバンを荷台からおろし、人の合間を抜けバスを降りた。

あぁ、今日も仕事が終わった。このまま帰るのもしのびない。

そう思った時、バス停前のネオンが、オレに主張してきた。

・・・久しぶりにスロットでもやって帰るか。

おれは輝くネオンにつられるように、そのパチンコ屋に足を向けた。

1時間後・・・・・・・・財布がぺったんこになってしまっている惨めなおれがいた。


くっ・・・5万円も使ってしもた・・・・。今月どないしよ。



「チクショー。まあ取りあえず貯金しておいてやる!」と、

お決まりのセリフを言いながらおれはそそくさとその場を後にした。

おれのマンションは家賃8万円の2LDKだ。

都心から離れているため比較的安い。

リビングも広いし、新築だし、かなり良い物件だったと思う。

そうそう見つかるものではないらしい。




小腹が減ったのでカップラーメンを作り、

待っている間に郵便受けから持ってきた郵便物に目を通す。

おっと、誤解を招かないように言っておくが、これはおれが配達したものではない。

ここはおれのエリアではないからな。

ここは・・・そう、あいつだ、伝説の徳田エリアだ。

徳田エリアには誰も文句は言えない。

・・・え?なぜって?

そりゃ、徳田がものすごい権力を持っているからだ。

おれ達郵便配達局員の中では伝説の男なのだ。

まぁ話すと長くなるから、そんな徳田は置いといて・・・

え?徳田がどんな伝説かって??

もうやめとくれ、これ以上詮索しないでくれ。・・・・・

徳田に殺されちまう。頼む、お願いだ。




とにかく郵便物を見ていると、チラシやDMに混ざって一通の黒い封筒を見つけた。

なんだこれは?

もしかしてラブレター?そんなあわい期待を抱きつつもその封筒の裏を見る。

宛名は無い。

封筒を開けると中には一枚の招待状が入っていた。

そこにはこう記されていた。




つづく。

マメオトコ ~ご説明~

テーマ:
あの期待の作品『マメオトコ』
ここに小じんまりと消極的に予告!!

明日から始まる新感覚バイオレンスノンストップラブコメディホラー長編小説。
その名も「マメオトコ」は、作者のへっぽこオリジナルストーリーで、適当にUPしていきます。
たまにとてつもない描写がありますので、心臓の悪い方と、卑猥な表現のお嫌いな方は、ご遠慮願いますよう宜しくお願い致します。

それでは改めましてマメオトコの世界に足をふみいれてください。
きっと、とんでもないことがおきるでしょう
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
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といってもスタートは明日からですのですみません。
こうご期待!!!!!