--------3話のつづき--------
「やはり、5階に行くのは止めた方がいいかもしれんな。危険だ。」
「なんだと!バビシャ!!そいつぁどういう事だ!?」
みんな意味が分からず戸惑っている。
「危険って、どういうことなんだ!!!バビシャ!なぁ!バビシャバビシャバビシャ!!」
モコトが焦りと不安をそのままバビシャにぶつける。
バビシャは、小うるさいモコトを制するかのように、
ゆっくりとした口調で話し出した。
「実は・・・・・・おれに来た招待状には体育館に集合するように書いてあったんだ。」
「それはただ単に玄関には人が多すぎるから分けたんじゃないのか?」
ヒロが口を挟む。
「いや。違うな。おれが指定された時間に行ってみると、そこには誰もいなかった。」
おれらは指定された時間に遅れてしまったが、ほとんど同じ展開じゃ!
まさか・・・・
バビシャが頷く。
「そう、まっ赤な紙が貼ってあったよ。」
「!!」
みんなが唖然とする。
「でも、それだけでは危険かどうかなんてわからないじゃねーか!ま、ましてやただの同窓会なんだぞ!!」
またもやヒロが口を挟む。
どうやらヒロが一番怯えているようだ。
「じゃあ、耳をすましてみろよ。おれの言っている意味が分かるはずだ。」
俺たちはバビシャに言われるがままに耳を澄ます。
何も聞こえない。もちろん人の気配などない。
聞こえるのは隣で興奮するモコトの荒い鼻息だけだ。
おかしい、ここは4階。
さっきは3階くらいから4階のバビシャと神戸の声が聞こえた。
ならばここから5階で開かれている同窓会の声が少しは聞こえてもいいはずだ。
・・・・・・・・・・
「な、分かっただろ?・・・・・・いわゆる一つの、こんなにおかしなことはない。」
バビシャがゆっくりと口を開く。
みんなもその言葉に促されて頷く。
しかし、そんな中、一人だけまだ目を閉じ耳を澄ましている男がいた。
モコトだ!!!
どうもモコトはまだ理解できていないようだ。
そんなモコトをほっといてバビシャの話は進む。
「実はおれは前日に土谷と安木と連絡をとっていたんだ。」
土谷と安木もそんなに仲良くはなかったが、俺たちの同級生だ。
もちろんみんな知っている。
「なんと驚くことにみんな集合場所が違ったぜ。だから、ちょっと警戒して遅れて行くことにしたんだ。
まぁ、実際仕事が忙しかったからって理由もあったがな。
土谷と安木は先に時刻通り行き、おれがこっちに到着したらケータイに連絡するようにしてあったんだ。
だが、電話してもつながらない。どれだけかけても、2人とも圏外なんだ。
一応4階まで来たが、そこでばったり神戸に出くわして・・・」
なるほど、そういう経緯があったのか。
それにしても・・・・圏外だって?
おれは慌ててケータイを出す。
みんなも各自ケータイを確認している。
電波表示は・・・・・・「圏外」だ!
「おいおいーー!!!どーゆーこったこりゃ!!」
タックが悲鳴にも似た叫びを上げる。
「な、なんだよ!人口カバー率99.9%達成ちゃちゃちゃうんか?
まさか、か、か、ここ残りの0.1%?パパパパパ・・・!!」
珍しく噛み噛みでモーテルが慌てる。
いや、違う。
この学校に入るまでは3本電波は立っていた。
だって、おれは確認したんだ。
チカちゃんからのメールが入っていないか、この学校に入る前に確認したんだよ。
だから間違いない。もちろんチカちゃんからのメールはなかった。
「この学校新しいから、圏外になるんじゃね?」
ヒロの言っためちゃくちゃな一言に、みんなが無理矢理納得する。
みんな、恐かったのだ。
だから無理矢理納得するしかなかったのだ・・・・
「くっそー。でも、ほんとにおかしいことだらけだぜ。もう帰っちまおーぜ。」
タックが怒る。
「おう!そうだぜ。帰ろうぜ!!帰ろうぜ!!」
ここぞとばかりにモコトも同意する。
なんだかみんな不安を隠しきれなくなってきているみたいだ。
「でもやっぱり5階が気にならねーか?実はみんなおれらを驚かそうと静かにしてるだけかもしれねーじゃん!」
ついついみんなに同意を求めてしまったおれがいた。
だって、おれはどうしてもこの同窓会に参加したかったんだ。
そのためにこんなに15万もかけてオシャレしてきたのだ。
こんなところで終わってたまるか!!
おいらのヘア・マックスはどうなる!!!
おれのサクセスロードはここから始まるのだ!!!
「やめよぉーぜぇ。なんか嫌な予感がする。何か・・・何か恐ろしいことが待っている気がするんだ。」
モコトが怯えて訴えるが、モコトの話に耳を傾ける奴は誰もいない。
インチキ霊能力者のレッテルは思ったより大きいのだ。
「まあ、取りあえず行ってみるか?こんだけいりゃなんかあっても大丈夫だろ。」
ヒロの言うとおりだ。こんだけ人数が揃っていれば大丈夫だ。
ましてやバビシャがいる。
こいつがいれば鬼に金棒だ。
バビシャも渋々同意して、おれたちは5階に行くことになった。
暗く長い階段を上り、5階につく。
相変わらず校内には異常なくらいの静けさが続いている。
「美術室はどこやろかいな?」
モーテルが辺りを見渡す。
「うぅん。。」
その時バビシャの背中に背負われていた神戸が口を開く。
「おお、神戸・・・・大丈夫か?」
リョウが心配そうに神戸をのぞき込む。
「うん。だぁいじょおぶだぁよ。・・・なんだかバビシャ君が急所を外してくれてたみたいだよ。」
神戸はそう言ってバビシャの背中から降りる。
「ゴメン。バビシャ君・・・・・・・・・・いわゆる一つの、ぼぉくが悪かったよ。」
神戸がバビシャ調で、バビシャに謝る。
「いいや。いわゆる一つの、もう気にするな。」
バビシャは笑顔で神戸を許す。
緊迫した空気の中、ようやくみんなにも笑顔がこぼれた。
それは、ほんの一時の出来事だったが、俺たちの堅くなった心を少しだけほぐしてくれた。
本当に、良かった。
神戸ももう大丈夫そうだ。
そんな神戸だったが、
その後のモコトの神戸への、くどいまでの説教を逃れることは出来なかった。
取りあえず俺たちは暗く、どこまで続いているかわからない廊下を歩いた。
教室の表札を見ながら一つずつ確認しながら進む。
中には教室名が書いてない表札もあるので、その都度、緊張しながらドアを開けて確認した。
「しっかしこれじゃ、ラチがあかんな。」
ヒロが疲れたように言う。
確かに教室の数も多すぎる。
これでは全室調べるのには相当時間がかかるだろう。
その時、ふと、おれは窓の外を眺める。
外はもう日が落ちて、すっかり暗くなっていた。
ん?
ってゆーか、真っ暗だ。何も見えない。
あっれ?なんかオカシイ。。。。
心の奥に隠していた違和感が、一気に溢れだしてくる。
ずっと感じていたことだ。
そう・・・俺たちはこの中学校に閉じこめられたのではないか?ということだ。
おれだってそんなこと考えたくない。
だが、現実に誰かにここに呼ばれ、そして俺たちはどんどん奥へと足を向けている。
何かに導かれるように。
ひょっとして、俺達、とんでもないことに巻き込まれているのではないか!?
この学校だってそうだ。おれが外から見た最初の外観は以前と全く変わっていなかった。
なのに中に入ると、なんだ、このとてつもない広さは!?
ケータイも何故か圏外だし、不思議なことばかりだ。
そんな風に考えがまとまると、おれの中に急に焦りが生まれる。
おれは急いで窓に近寄った。
あっけなく窓は開いた。
ふぅ。なんだ。開かないかと思ったぜ。思い過ごしだな。
軽く安堵のため息をつき、下を見る。
ハァ!!??
下が見えない!真っ暗だ。
ここはたかだか5階なのに下が・・・地上が見えないってどーゆーことだ!?
その暗闇は、どこまでも続いていそうにも思える。
まるで、ブラックホールにでも吸い込まれたかのような感覚に捕らわれた。
そこしれぬ恐怖が、またおれの心を満たす。
いやいや、暗いからだ。
今日は曇りで月も見えない。だから異様に暗いだけなんだ。
おれは自分をそう納得させて、また美術室をさがすため廊下を歩く。
大丈夫。
きっと美術室に着けばみんなが楽しく同窓会をやってるさ。
「ドサッ」
その時、おれたちの後方から、
何かが床に倒れるような鈍い嫌な音がした。
つづく。