大人並によく喋る小学生、千沙。
父親と母親に「口から先に生まれたような奴だ」と言われながらも、その口調は決して責めるものではありませんでした。
半ば呆れながらもそれは言葉をちゃんと受け答えをする我が娘の取り柄として見てくれた両親でした。
口が達者なのは良い事。 千沙はそう思っていたのです。
小学生になり学校へ通い始めた6歳の春。
最初は楽しい学校生活でした。
入学式用にと買ってくれたピンクのワンピース。
新しいランドセル。
くまさんの柄が入った生地で母親が作ってくれた給食袋。
新品のインクの匂いがする沢山の教科書。
我侭を言って買ってもらった36色のクーピー。
それは千沙が今思い出してもウキウキする毎日でした。
しかし一年が過ぎて小学2年生になった頃、千沙は水疱瘡にかかりました。
1週間くらい休み、明日はやっと登校出来るという日に鏡の前に立った千沙は
「ぜってー行きたくない」
そうです。バッチリと顔に水疱瘡の痕が残ってしまったのです。
今でも残っています。でっかいのが1つ額に。左目の下に2つ。
当日、行きたくないと泣いてみましたが、母親は「子供は学校に行くのが仕事。」と厳格な上に融通も利かない四角四面な人。
泣き落としは通じず、オドオドと登校する羽目に。
クラスの皆はどう思うだろうか。恥ずかしい。誰も見ないで欲しい。
そんな願いも空しく、校舎に入って上履きに履き替えようとした時、それは起こりました。
クラスの男子達が一斉に「あ!千沙が来てる!あいつ、絶対痣が出来てるで!見せてみろや!」
あたしゃどこの芸能人だよと思うほど、靴箱の前でもみくちゃにされて晒し者になってしまいました。
そしてついたあだ名がまめだぬき。
ええ、今考えたら可愛らしいあだ名だと思います。
でもその名前で呼ぶ時と男子達には、明らかに蔑みとからかいが声に含まれていました。
元々それまでも女子はともかく男子とは余り折り合いが良くなかった千沙。
やはり千沙に口では敵わない男子達には嫌われていたのです。
そしてこれで決定的に千沙の中には「男子は敵」と認識されてしまい、両者の仲は最悪に悪くなっていったのです。