8月

弟家族の都合で

帰省はお盆が過ぎた20日になった

 

主人の運転で

私の車で行くことになった

家を出てから

樒を買いに近くの花屋に立ち寄り

そのまま高速に乗るのかと思っていたら

主人がガソリンを入れに行くと言う

そこまでは何でもなかった

ただ

最短距離を移動するために

主人が何気なく通った道は

あの場所だった

あの娘が最後に歩いたところ

 

 

そこは禁忌地であり聖地

特にその車線は

絶対に車で通ってはいけない

通らないと誓った場所

 

 

そこを通った直後に私は壊れた

GSで待っている間も落ち着かない

何であそこを通ったと

震える声で主人を責めた

家に帰る!と繰り返し

家に入ったとたん

私は大声で泣き叫んだ

多分今までで一番大きな声で

腹の底から絞り出すように

押し込めていたものが

堰を切って噴出した

 

 

近所に声が漏れるとか

主人の気持ちとか

約束の時間に遅れるとか

そんなことは一切お構いなしに

真夏の真っ昼間に

 

もう一人の私が

何をやってるん?

ご近所に恥ずかしいやん

パパが困ってるやん

〇ちゃん(弟)に連絡せな

と、冷静に意見するのを聞きながら

 

 

 

一時間くらいで

何とか自分を取り戻し

主人に謝った

主人は玄関に座り込んでいた

 

 

それから

予定より大幅に遅れて実家へ

 

 

お墓参りは主人と二人で行った

平日の田舎の小さな墓地には

誰もいなかった

 

お線香を多めに持って行ったので

お隣の誰も来ない親戚と

お寺の代々と

同い年の従妹と

無縁さんと

六地蔵さんにも

お線香を少しずつ手向けてきた

暑い日だった

 

 

 

8回目の夏が来ても

傷は少しも癒えてなんかなくて

ちょっとしたことで

薄皮が破れて鮮血が噴き出る

 

 

 

 

 

2023酷暑