先日手に入れたジョンストン&マーフィーのLE96は、つま先にかけて2本のステッチが伸びたスワールトゥと呼ばれるデザインです。
今回は、このスワールトゥにまつわる、私の中で未だ解明されていない謎について書き留めておこうと思います。
まず、今の時点で私に分かっているのは、次のようなことです。
・スワールトゥは、つま先の長さを強調するためのデザインであるとされている。
・ドレッシー過ぎて、ビジネスにはあまり向かないとされている。
・ロングノーズが流行した時期(2000年代前半ごろ?)に普及したらしい。
・日本で販売されている安価な靴に採用されているケースが多い。
・外国の高級紳士靴メーカーが採用しているケースはあまり見かけない。
・現在の革靴愛好家には敬遠されがち。
そして、謎というのは次のようなことです。
謎1 スワールトゥは、いつ、どのようにして生まれたのか?
革靴のデザインには普遍的と言ってよいほどポピュラーなものが何種類かあり、少し調べればそのデザインが生まれた背景についての情報に辿り着くことができます。
例えば、ストレートチップ(キャップトゥ)なら「傷つきやすいつま先を別の革で保護したのが起源」、ブローグシューズなら「アイルランドやスコットランドの湿地帯で、湿気が抜けやすいように穴をあけたのが起源」、モンクストラップなら「修道士の靴が起源」、…というような具合です。
では、スワールトゥは?
私は、近代日本で、ロングノーズの隆盛を背景として、ロングノーズに向くデザインとして生み出されたのではないかと思っているのですが、どうにも裏が取れません。モヤモヤします。
謎2 なぜ「スワールトゥ」という名前なのか?
スワールトゥの「スワール」という言葉を英語で調べるとswirlという単語に行き当たりますが、意味は「渦」。デザインのどこがどう「渦」なのかよくわかりません。
一方で、同じデザインをスワロートゥと呼ぶこともあるようです。これは、頑張って考えると、つま先にかけて延びる2本のステッチを、燕の尾が二股に分かれていることになぞらえたようにも思います。
…とすると、もしかして「スワール」って「スワロー」を聞き間違えた人が使い始めたのではないでしょうか…?
ちなみに、今回調べてわかったこととして、スワールトゥにせよスワロートゥにせよこれらは和製英語のようで、ちゃんとした英語ではbicycle toe(bike toe)というらしいです。
「ツーシーム」と呼ばれることもあるようで、これは海外で通じるかはわかりませんが、意味はわかりやすいですね。
謎3 なぜ安価な靴に採用されやすいのか?
今や「ダサい靴」の代名詞的存在として、いわゆる「ギョーザ靴」に次ぐ地位を得てしまった感もあるスワールトゥですが、実はそんなに悪いデザインじゃないというご意見もちらほら見かける気がします。
では、なぜ「ダサい靴」というイメージがついてしまったかというと、それはこのデザインが安い靴に多く採用されているからだ、という説を見たことがあります。なるほどという気がします。
さらに、安いスワールトゥを買う人は往々にしてあまりケアをせずに履くので、そのくたびれたスワールトゥが見られることでますますスワールトゥの評判が落ちたという説もあって、これもなるほどと思います。
とすると、問題の根源はこのデザインの靴が安いせいだという気もしますが、どうして、安い靴にこのデザインが多いのでしょうか?
例えば、このデザインだと安価に製造できるとしたら、安くなるのは頷けます。ただ、どうしてこのデザインだと安く造れるのかがよくわかりません。小さな革片を効率よく接ぎ合わせることができて経済的であるとか、造りやすいとか、何かあるのかも知れません。
あるいは、安価な靴を求める人たちの間ではいまだにこのデザインが絶大な人気を誇っているのかも知れません。安価な靴を求める人と、高価な靴を求める人とで、どういうデザインをカッコイイと感じるかが変わるというのは、どういう理屈でそうなるのかよくわかりませんが…。