今回は手元のスーツの来歴を記録しておこうと思います。

 

 齢四十を迎える頃に、遅まきながらビジネスシーンの装いをちゃんとしようとを思い立ったワタクシ。靴や時計から手を付け始めたわけですが、やはりスーツにも手を付けないわけにはいかないよなぁと思ってはいました。なんといっても他人から見られる面積が大きいわけですし。でも、なんだかとっつきにくいし、どこで買ったらよいかわからないし…というわけで後回しにしていました。

 

 それまで持っていたスーツのほとんどは、いわゆる紳士服量販店やその系列店で買った既製服で、自分自身では不満は感じていなかったのですが、あるとき手持ちのスーツの中の1着が他のよりも良いと妻から褒められました。今思えばその一着だけは、パターンオーダーイージーオーダーを手掛ける店で仕立てたものでした。やはり、体のサイズに合うように作ると良いのだなあということに。

 

 でもオーダーってお金かかりそうですよね…。ところがネットでふと「オーダースーツが2着で(約)5万円」みたいな広告を見かけまして。安い!これもう、いわゆる紳士服量販店のスーツと変わらないですよね。

 

 そんなわけで、ある日、意を決してその店に行ってみました。

 

 電話で予約を取るときに言われていたのですが、その店が手掛けているのはパターンオーダーでした。生地を選んで、体の寸法を測って、それに合わせて何種類かの型紙の中から最も合うものを選んで、ごく限られた箇所を微調整する、という仕組みなのだと思います。

 

 この店でまずビックリしたのは、「2着で(約)5万円」という最安のプランで選べる生地の少なさでした。感覚的にはもうほんの数種類で、どれも同じような色…どういうわけだかどれも食指が動きませんでした。何がどうして自分の購入意欲を刺激しなかったのかよくわからないのですが、素人でも実物を見比べれば生地の良し悪しがある程度わかるというのは本当なのかも知れませんねぇ。結局、追加料金のかかる生地を選択してしまいました。(ちなみに、グレーのグレンチェックと、ブラウンのシャドーストライプにしました。自分がまだ持っていない色柄を、と考えてのことでしたが、今の私だったら無地のネイビーと無地のグレーにしただろうと思います。)

 

 その後、サンプルのジャケットを羽織ったとき、店員さんから「どうですか」と問われたので、肘を張ったり腕を上げたりしたのですが、腕を上げたときにどうにも身頃が引っ張られるのが気になると伝えてみました。すると店員さんは笑いながら「スーツですから。」というようなことを言いました。

 

 いや…。言われたときにはそういうものかと思ってしまいましたが、今にして思えば、極めて上等な仕立てのスーツであれば腕の上げ下げはもっとスムーズなはずで。それを思うと、「フルオーダーじゃないのでそこまではムリですね」とか言われれば納得できるところなのですが、スーツなんてどれもそんなもんだという感じに諭すのはいかがなものでしょう…。

 

 結局、生地以外にも、オプションでベストを付けたりなんかしたせいもあって、お値段は2着で13万円くらいでした。イメージしていたよりもだいぶ高くついてしまいました。

 

 この2着は今も使っていますし、特に不満もありませんが、同じ店にスーツを仕立てに行くことはもうないかなと思っています。