津波で全壊した宮城県南三陸町の
特別養護老人ホームに勤めていた
佐々木健吾さん(44)。長男の郁哉君(12)
と長女の千紘ちゃん(6)を連れ
大雄寺の合同葬に参列した。
3人で見送ったのは妻の奈保子さん(38)。町内のデイサービスセンターに
勤務中、震災による津波に襲われ、
3日後に変わりはてた姿で見つかった。
佐々木さんは「介護職として、お年寄りを避難させようと頑張ったのでしょう」と妻の最期を推し量る。
「ママは天使になって天国に行ったんだよ」。
母の死を、子供達にはこう伝えた。
郁哉君は
「お母さんの分まで一生懸命生きる」。
と気丈に答えた。幼い千紘ちゃんは
「透明なママは嫌。本物のママがいい」
と泣きじゃくった。
佐々木さんは子供の前で涙は見せまいと決めていたが、こらえきれなかった。
遺体が発見された後、がれきと化した自らの職場に足を向けた。自分のバッグを見つけた。開くと、一通の手紙が
出て来た。
奈保子さんは夫婦喧嘩のたびに、自分の反省や夫に改めて欲しい点を手紙で伝えていた。泥まみれの便箋には、みなれた妻の筆跡があった。
<子供のために、どうか強いお父さんになってください。>
どんな事で言い争い、なぜそんな指摘を受けたのか。
貰った後に一度は目にしたはずだが、記憶は定かではない。
だだ、今の自分へのエールだと思った。
二年前に新築した自宅は津波に流された。職場は消え、仕事も失った。
それでも、悲観に暮れてばかりいられない。
子供達は今春、そろって小中学校へ進む。登米市にアパートを借り、
入学手続きなどに走り回り始めた。
「妻は2人の成長を楽しみにしていた。立派に育てないと、しかられます」
言葉にした天国への返信は、
自分自身への誓いでもあった。
河北新報より
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