ニューヨークのバレエスクールに何年かいた事がありますが、そこでは全レッスン生ピアノでした。
ニューヨークらしい、と言うべきか、ピアニストが弾く曲はクラシックは勿論、オペラ、ミュージカル、ジャズ・・と多彩でした。
一つ一つの動きの練習のリズムが合っていれば、だいたいどんな曲でも良いのです。
バレエのレッスンは基本的に毎日同じ事の繰り返しなのですが(1日練習を休むと自分にわかり、2日休むと・・・というのはバレエもピアノも同じなのです)、
自分の動きに集中しながらも、その日ピアニストが弾いてくれる曲を楽しんでいたものです。
レッスンでのピアノはただの伴奏ではなく、そこにはコンチェルトのように、対話がありますし、
ただの伴奏だと思ってレッスンする人の動きは、見ていてとても退屈なものです。
ダンサーは動きのひとつひとつが音楽であるべきで、その時ピアニストが弾いてくれる音楽をそれが例え練習であっても表現するのが当たり前なのです。
クリスマスが近くなるとクリスマス・キャロルだったり、雨の日には鬱々とした気持ちを吹き飛ばすような軽快な音楽だったり、雪の日は雪にちなんだバレエ音楽だったり、
ピアニストのレパートリーの広さに脱帽したものです。毎日ほぼ違う曲でしたし、まあ、ピアニストも毎日同じ曲じゃ飽きるんでしょうけれど。
ある日、小さいジャンプの練習をした時、ピアニストが弾いた曲はペトルーシュカの「ロシアの踊り」。
小さなグループに分かれて代わる代わるピアノに合わせて練習するのですが、第一グループが練習している間、
第一グループ以外の生徒の殆どが、ある者はバーに寄りかかって(私ですが)、一斉にペトルーシュカに登場する人形たちの足さばきをしました。
先生も、生徒も、ピアニストも大爆笑してしまい、一時レッスンが中断されましたが、
その後も皆ノリノリでジャンプの練習をし、そしてレッスンが終わった時はいつもより大きな拍手がピアニストへ贈られました。
当時はこの曲が超絶技巧曲だなんて知らなかったので、単純に「わーペトルーシュカだー」くらいにしか思わなかったのですが(勿論、あの曲を全部通しで弾いたわけではなく、レッスン用に主題を繰り返す等のアレンジがありましたが)
あの曲をレッスンで普通に弾いていたピアニスト(アダムという名前だったと思う)って凄かったんだなあ、と今にして思います。