信州に、来ています。
夫とふたり春の旅。
年に何度かは旅する信州。
夫が滑り納めのゲレンデを、今シーズンは野沢温泉スキー場にすることにしたので、その近辺で旅のコースを組みました。
3日間のうち、真ん中の1日は別行動、夫はスキー、私は湯巡り&宿で読書する計画です。
初日、早起きして午前4時になる前に大阪を出ました。
最初に向かったのは戸隠神社です。
松本在住の伊藤まさこさんが著された、何冊かの信州の魅力を伝える本の中に、戸隠神社の参道にたちならぶ、竹細工のお店のことが書かれていたのです。
特産の根曲がり竹で編まれた籠や笊の美しい写真に心惹かれ、ずいぶん昔に、ドライブで通りかかった時から気になっていたのを思い出し、風情ある門前町で、有名な戸隠蕎麦も食べられたらいいし…くらいなノリで提案いたしました。
調べてみたら、戸隠神社は、神話の時代から山嶽信仰の聖地。修験者が厳しい修行をしたと霊山だといいます。
雪に閉ざされたこの季節、奥の院は閉山されているけど、戸隠神社奥社へ続く参道やその周辺の森を歩く、スノートレッキングやスノーシューツアーが人気ということを知り、その様子を伝える何枚かの写真に驚きました。
雪原の中に続く戸隠古道の杉並木や、雪に埋もれた鳥居。
私はたじたじと、ここは踏み込んだらキケンな場所、と考えたけど、夫はこれはチャレンジすべきアクティビティだと考えたらしいです。
見たこともない景色に、私も惹かれて行きました。
「歩こうよ。」
ということになり、夫は防水の効いたトレッキングシューズを購入、私も以前用意していたスノーブーツを持参しました。
スキーのストックを1本ずつ持ち、春の旅だと思って、軟弱な赤いワンピースなんか着てきたけど、一応足元の装備は万全。
まぶしい雪に備えてサングラスも忘れずに、山の中での寒さ対策にはストールぐるぐる巻き。
大きな鳥居から始まる往復4㎞の、まっすぐな雪道です。
これ以上ないくらいの晴天ではないか!
出発!
雪解け水が小川になって流れるせせらぎと、野鳥のさえずり、音といえばそれきりです。
樹木は雪に埋もれ、梢のフォルムが澄んだ青空にくっきりと映え、正面にギザギザの稜線を頂く、気高く白い戸隠山が眩しく見えるばかり。
人ともほとんど出会いません。
ひたすらふたりで歩きます。
なんだか、気持ちもからだも澄みきって行くようです。
真っ白な雪の上に落ちているこんな小枝を見つけました。
可愛い形が嬉しくて拾い上げ、あとから来る人にも見せてあげたくて、再び雪の上へ。
途中、随神門という赤い門を潜ると、辺りの気が一変しました。
樹齢400年という杉木立が日光を遮り、霊気に包まれる感覚です。
日本中を旅していると、人々の信仰の起源となる場所で、ふいに、どうしても敬虔な気持ちがわき上がることに抗えない、スピリチュアルな空気を嗅ぎ取ることがあります。
その感じに身を任せてひたすら前へ。
お腹すいてきた。
徐々に傾斜が急になってきました。
スニーカーで先を行っていた元気な家族が引き返して来ました。
雪道が凍結しているので、その靴では無理とのこと。
もう少しみたいだから、頑張ろう。
ストックを頼りに進みます。
だけど、最後は私も断念。帰りの下り道で滑って転けそうなのが怖くて、夫だけが前進することにして、雪の山道の途中で、私は待っていることにしました。
奥の院までたどり着いた夫が写してきた画像がこれです。
さあ戻ろう。
雪の参道の復路も、意外に長くて、お腹がペコペコです。
ストール要らなかったね。とても暖かでした。
うずら家は、戸隠神社中社の門前にあるお蕎麦屋さん。
戸隠に修行に来た天台宗や真言宗の修験者が、どこかから持ち込んでこの辺りの名物になったそうです。
栄えたときには三千坊もあったという戸隠神社の、古びた宿坊の並ぶエリアには、名物の蕎麦の店はたくさんありますが、うずら家は格別の人気店で、行列が絶えません。
「20~30分くらい、辺りを散策してきてください。」
といわれてぶらぶらしました。
竹かごのお店の場所も確認。
雪の残る信州の山里にも、春の目覚めの気配が漂っています。
これは福寿草。
雪を割って、黄金に輝く花です。
蕗の薹もいっぱいです。
雪解け水の流れる瀬音が激しい。
うずら家さんは、店員さんたちがみなさんはきはきしていて親切で温かく、繁盛する理由がわかります。
すりおろすわさびが爽やかで、お蕎麦が供されるまでの間、野沢菜漬とわさびで蕎麦茶を飲み飲み待っていました。
窓から表の賑わいを見ていたら、夫があっと声をあげました。促されて見たら、私が雪の上に置いてきた自然のオブジェを、リュックサックを背負った山ガールが大事そうに手に持って歩いているではありませんか!
なんだか嬉しくなりました。
やっとありつけたお蕎麦。
のど越しがよくふんわり優しい香り。
山菜とキノコの天ぷらも美味しかった。
そばつゆにわさびをといて、砂糖を少量加えたところへ蕎麦湯を注ぐと、美味しいスープのような滋味。
満足しました。
お土産を探しに竹細工店へ。
「手力屋」は、工房と店舗を兼ねていて、ガラス戸の内側でお祖父ちゃんが作業をし、この春から1年生というお孫さんの坊やが接客してくれました。
私たちが選んだのは、とってのついた丸い籠です。
ここに、季節の料理を少しずつ盛った小さな器を並べて食卓へ出すのもよい趣向ではないかしら?
青い竹は、使い込むうちにつやつやと茶色味を帯びてくるはず。それも楽しみです。
信州で、食材も手に入れて帰りましょうか?
旅は始まったばかり。
この日はこのあと、ワイナリーを訪ねたり、リンゴの産地らしいミュージアムのカフェでリンゴケーキを食べたり、野沢温泉の街を浴衣で歩いてお風呂に浸かったり、宿のもてなしに感激したりでした。
そんな旅の初日の後半は、またのちほどレポートします。