師匠にお土産を届けに | ママゲリア聖子の大阪ロマンチック

ママゲリア聖子の大阪ロマンチック

北大阪在住、食いしん坊で呑んべえのなかよし夫婦のいろいろを記録しておきたいと思います。こんなに楽しい毎日、本当に感謝しています。


先日、夫と京都に行った折りに、紫野にあるお蕎麦屋さんにも寄りました。
ここのお蕎麦は「京都でいちばん美味しい名店」のランキングの1位になったこともあるというウワサ。確かに毎日ご主人が手打ちで出すつなぎを使わない蕎麦の味は、他では食べられない絶品だけれども、私たちが夕方訪ねると、店の戸は固く閉ざされたまま、小さなことわり書きが。

「昼間の営業で、今日の分の蕎麦は売り切れました。」とのこと。

夫が
「なんや今日は売り切れかい?」
と店の前から電話したら、ご主人が出てきてくださいました。繁盛しているのは、とてもよきこと。夫とは幼稚園時代からの親友。
実はこの度はどうしてもお目にかかりたい用事があったのです。
ミラノの次男坊にとっては、生まれたときから成長を見守ってくださる人、また腕1本で真の名店を切り盛りするその生き方は、大人の男はこうあるべきという偶像に近い、人生の師匠なのであります。

次男坊の進路選択の時にも背中を押してくださった恩人です。


次男坊は、ミラノに行くことになって、師匠から、ひとつだけお土産を頼まれました。
このお蕎麦屋のご主人、今時にしては珍しく、便箋にペンを走らせて、手書きの書簡を交わす文通相手がいるのだそうで、それに使うイタリアのレターセットを所望されたのです。
年末、次男坊のところを訪ねた際に、ふたりで約束通り探し当てたレターセットを、今回私は言付かって来たのです。

お蕎麦がないのを申し訳ないといって、ご主人は、お店に灯りとストーブをつけて私たちを招き入れ、コーヒーをたててくださいました。
実験用のビーカーに、ご自分で手縫いしたネルで濾す、1滴1滴、琥珀色の泉が滴るような丁寧な淹れ方。そして、探し抜いた昭和初期の国産の茶器。いただくのがもったいないような珠玉の飲み物。こんな繊細な仕事をなさる名人と、うちの夫が50年近くも親友だなんて、似てない者同士惹かれ合うのかな?


顔出しも、お名前出すのも「やぶさかである」とのことなので、手だけ登場していただきます。

ミラノの名所のひとつ、レオナルドダヴィンチの「最後の晩餐」の壁画がある「サンタマリアデッレグラツィエ教会」の向かい側に、「カルトリア ルッフィーニ」という小さな老舗の文房具屋さんがあります。美しいイタリアの名産の紙を、レターセットやノートやグリーティングカードに、店主自らハンドメイドで商品化しておられます。
私たちは、陳列された数々の紙製品に魅せられてしまいました。
「おっちゃんに持っていってあげて」
という次男坊からの依頼を、果たしましたよ。

ご夫婦で、包みを開けて、その美しさに息を飲んでおられました。

「あの子に何か伝えることはありますか?」
と言ったら、
「からだに気をつけて」
って、普通かいっ!?

歩く名言集みたいな人なのに。

また本人と、いつか直接話してください。ヤツが大きく眩しくなって凱旋してきた暁にね。

Skypeで、
「からだに気をつけて」
って、おっしゃってたよと伝えたら、次男坊から送られて来たのが巻頭の写真。

「この頃は、食事にも気を使っています。」
「野菜をたくさん入れたラビオリです。」
って言葉を添えて。