AG(オーソライズド・ジェネリック)は先発医薬品の特許が切れていなくても、特許の許諾を得られれば製造販売が可能です。したがって、従来のジェネリック医薬品が既にシェアを確保している成熟した市場にAGを「後追い」で投入して巻き返しを図るだけでなく、先手を打って特許が切れる前にAGを投入することで他社がジェネリック医薬品を出す前に市場シェアを確保する、という防衛的な戦略をとる製薬企業もあります。

当然、先発医薬品の売上が落ちるリスクがありますが、いずれ来る特許切れで他社のジェネリック医薬品に市場シェアを奪われるなら、自社の関連会社からAGを出す(第一三共→第一三共エスファ、武田薬品工業→武田テバ、バイエル→バイエル薬品販売など)、あるいは他社に特許を許諾してロイヤリティ収入を選び一定の収益を確保する、という考え方です。

上のリストで社名が頻繁に出てくるのでお気づきかと思いますが、AG(オーソライズド・ジェネリック)の市場で強固な地位を築いているのが、第一三共エスファです。親会社である第一三共のアーチスト(高血圧治療薬)とサンリズム(不整脈治療薬)で市場参入した第一三共エスファは、他の先発医薬品メーカーからクレストールやミカルディスなどの大型製品のAGの権利を次々と獲得して事業を拡大しています。目標は2025年に薬価ベースで売上高1,000億円超え。

日本新薬はこれまで後発医薬品事業は手掛けていませんでしたが、自社製品のザルティア(排尿障害改善薬)のAGを子会社シオエ製薬から販売してAG市場へ参入しました。

武田テバファーマは、親会社である武田薬品工業の製品や他社製品を毎年1品目のペースでAGとして販売する方針を打ち出しています。そのほか国内で後発医薬品事業を展開している外資系のサンドもAGを成長ドライバーに位置づけており、今後もAGの市場は拡大し、製品の市場浸透が進むのは間違いないでしょう。