時間潰しだけに借りてきたDVD の上映予告に、光を浴びた若い俳優が映し出された。
その瞬間、熱くもない、痛くもない、ただ、風圧を感じる衝撃が身体を突き抜けた。
少し体温が上がった。
『透明な人だなI綺麗な人だなIでも朝には忘れてるよ。』
その時まで、愚兄を軽蔑し憎悪し、亡母の言葉を責務としながら、5年間生きてきた。欲を捨て、夢も棄て生きていこうと決めていた。笑うことを止めた。
目が覚めた。覚えてる。
『綾野剛って言ってたな』
もっと、作品が観たいIスクリーンで観たいI出掛けるために、服を買おうI靴も買おう

毎晩、作品を観た。
綾野剛を知った。楽しい嬉しい気持ちが甦った。
心が軽くなった。憎悪は封印した。責務は母に託された任務になった。魂が強くなった。
綾野剛を観た。声を聞いた。
また、少し体温が上がった。
私を取り囲む全てが救われた。

私は笑って生きている。