シュウが亡くなって

胸にポッカリと穴があいた

というよりも

重機でえぐり取られた

そんな感じ

家中

どこにいても
どこを見ても

シュウの姿が見える

シュウの呼ぶ声が聞こえる


あの子との出会いは

2014年の9月

8年前のことだった

住んでたアパートに越してきた
母娘

その小学生の女の子が
シュウを自転車の籠に入れて
連れ回り

飽きると
アパートの玄関前に投げつけて
置いていっては

またそれを繰り返す

小さなシュウが
ぐったりとして
見ていられず
注意すると

「あたしの猫だから触るな!

と、怒鳴り返される

3日ほどそんな事が続き

ある日アパートのドアを開けると

うちの玄関の前に
シュウは倒れていた

指先からは血を流し
抱き上げても
力無く

私は慌てて動物病院に連れていった

怪我は爪が剥がれかけていただけで
あとは栄養失調と脱水状態で

ちゃんとご飯と水をあげれば
元気になると先生に言われた

あと耳ダニがひどくて
その治療も必要だった

処置を終えたシュウを連れ帰り

アパートの1階の母娘の家を訪ね

母親に

「お宅の猫ちゃんが怪我をして倒れていたから
 勝手に病院に連れていきました
 耳ダニもいるので治療が必要と言われました」

さう報告すると

「うちでは猫なんて飼っていません!

と、怒鳴られた

娘さんが毎日連れ回して
うちの猫だと言っていましたが

と伝えても
そんなことは知らない
うちの猫じゃない!

と…

私は怒りで

「じゃあこの子はうちで引き取ります!
 お宅の娘さんにもちゃんと言っておいてください  !

そう怒鳴り付けて
シュウをうちに連れ帰った

その年の4月に
ナツを引き取ったばかりだったけれど

あの母娘にシュウを渡したら
殺されてしまうと思った


ナツは最初
シュウの存在が許せなくて

怒ってばかりいた

それがいつの間にか
シュウと寝るようになり

ベルたち親子には
全く見向きもしないのに

シュウのことは弟として
いつも一緒にいるようになった



シュウは

娘が大好きで

いつも

「ねーね照れねーね飛び出すハート

頭で頭突きするように
甘えていき

常に傍らに寄り添って

そんな娘とシュウを見るのが
まるで幸せの象徴のようで

胸が愛と優しさでいっぱいになって…


シュウは愛情深い猫で

他の人たちには
決して懐かないのに

息子とくまには
すぐに懐いて

くまが来ると
後を追いかけ回して
抱っこをせがみ

息子がゲームをしていると
膝に乗り

お腹を撫でろとひっくり返って

撫でられると

ハァ~ヨイヨイルンルン

ヨヨイノヨイルンルン

とまるで踊っているかのように
ゴロゴロと満足そうに転がっていた

その姿を見ると

家族が

家族全員が

愛しさで笑顔になった


一番辛く悲しいのは
娘なんだ

だから

私がしっかりしなくては

そう思うのに

目をあげれば
シュウの姿を追ってしまう

声が聞こえた気がして

一瞬の喜び

その後の絶望


苦しくて苦しくて

この悲しみに耐えられない


いつか

思い出に変わるとしても

今はただ

胸の痛みに
押し潰されています