前回からの続き
長いので覚悟して読んでくださいね
娘とスマホを覗き込んでいると
ライン電話の着信が!
相手はもちろん彼女である
仮にミザリーと呼ぶ
「どこにいるのよ
なんで出ないのよ
どうしてよ
どうしてよ
どうしてよ
どうしてよ
どうしてよーーー」
スピーカーにしなくても
街の喧騒を切り裂く勢いの怒声
すれ違っていく人々が振り返っていくのが見える
ミザリーの息継ぎの合間に
慌てて、娘が学校でケガをして迎えに来たことを伝えた
ミザリー
「そう・・・
・・・・・・
それなら仕方ないわね
今度の木曜日休みでしょ
木曜日に一緒にカフェ行きましょう
私
「わかった…
今日はごめんなさいね…」
通話を切ってから気が付いた
なぜ私の休み
知ってるの…
これ、けっこう後にわかったんだけど
アパートの斜め前に町内会長さん住んでて
その会長さんに聞いた話だと
ゴミ捨て場でゴミ袋を開けて
ごそごそとしているミザリーの姿をよく見かけたそう
声をかけると
捨てちゃいけないもの間違って捨てた
とか言っていたそう
やられてたな完全に
うちのゴミ漁ってた
シフト表はビリビリに破いて
他の紙のゴミに包んで小袋に入れて捨てていたんだけど
休みって結構偏るから
当てずっぽうかもしれないけど…
そこからの
異常行動の加速はすごかった
プレゼント攻め
断っても断ってもあきらめない
受け取るまでしつこく来るし
玄関先で対応していると
しまいには笑いながら玄関内に
投げ込んで帰っていく
返しに行っても出てこない
骨盤矯正クッション
扇風機
お食事券
猫用クッション
猫砂
キャットフード
電気毛布
次から次へと持ってくる
スイカの時は怖かった
一度はしぶしぶ受け取ったが
それから何度も持ってくるので
ちょっと強めに断ったら
私が仕事でいない時を狙ってやってきた
娘が職場に泣きながら電話してきたので
驚いて理由を聞いたら
また、スイカを持ってきたという
そして母がいないので、と断ったら帰っていき
しばらくして再び現れて
「いいから
お母さんの許可とってるから
受け取って
受け取るだけでいいから
受け取れっていってるでしょー」
と怒鳴り散らして
娘にスイカを押し付けて帰っていったんだそう
困った、と思いながら袋のなかのスイカを見たら…
毛だらけ・・・
長い髪の毛が
びっしりスイカの赤い面にくっついていたんだって
慌ててそのスイカを持ち
自転車に乗って自分のバイト先に行って
業務用のゴミ箱に捨てさせてもらって
バイト先のバックヤードから
私に電話してきたというわけ
そりゃ泣くよ
他には
夜明けの4時半
玄関をドンドンと叩く音で目覚める
何事かと出ると
ミザリーが…
スマホを私の顔面に押し付けるように
掲げ持ち
「私の携帯が
変なの」
寝ぼけ眼なのと驚きで
「えっえっ
」
となる私
するとミザリーこう仰った
「一日消えたのよーー」
・・・・・・
知るかっ
「消えてません」
と言って扉を閉めた
他には
カチッカチッカチッ
と、謎の音が聞こえるようになり
心霊現象かと怯えていた
私たち母子
何の音かと日々気になっていたが
ある日・・・
きゃぁぁぁぁぁ‼
娘の悲鳴が響き渡った時に
謎が解けた…
夜遅く
トイレに行こうと部屋を出た娘
部屋を出るとすぐ目の前が玄関
その隣がトイレという間取り
部屋を出るとすぐ近くで例の
カチッ という音
音に釣られて玄関を見ると…
郵便受けの間口から
ふたつの目
そりゃ悲鳴あげるよ
毎日毎日そこから覗いていた
ミザリー
まだあるの
もうちょっと書いてもいい
以前、記事に書いた事情で
引っ越しすることになり
私と娘は引っ越し先がバレないように
厳戒態勢でのぞんだ
だって近いんだものアパートと
私たちが引っ越すと知ったミザリーは
町内会長さんの所に駆け込み
泣き叫んだそう
な、なぜに会長さんに泣きつく
なんやかんやあって
引っ越し当日
双子の姉夫婦が手伝いに来てくれた
引越屋さんも来てくれて
玄関から荷物を運び出している時に
ミザリーがやってきた
当たり前のように玄関から入り込み
引越屋さんたちに
「お世話様~
今日はよろしくお願いしま~す
お願いしまーす」
と、一人一人に
挨拶をしているミザリー
ビックリしている引越屋のおにいさん達
言葉もなくボーゼンとする私と娘
そこへ・・・
オイ!あんた!
アンタだよ!あんた!
誰のこと
とキョロキョロするミザリーに向かって
姉の愛する旦那さまが
人んちに勝手に入ってくんじゃねーよ
邪魔なんだよ!出ていけよ
と一喝
ビックリしている引越屋さんに
「この人、赤の他人なんで
すぐに追い出しますんで相手にしないでください」
と言ってくれた
「今日は遠くまで引っ越しだから
大変だと思いますが
よろしくお願いします」
と、引越屋さんに向かって目配せしつつ
ミザリーに聞こえるように大きな声で言ってくれてる
引越屋さんも空気を読んで
「遠いですからね
急ぎましょうか」
と答えてくれた
アパートを去る時に
娘と2人の時間が蘇って
感傷に浸るかな~と思っていたけれど
ミザリーから離れられる安堵のあまり
感傷的にはならなかった(笑)
こうして無事に
和製ミザリーから逃げることができたのでした