夫が倒れた夜のこと、以前に文章にしたものがあったので、少しずつ載せていこうと思います。
【あれから、もうすぐ1年。②の続きです。】
とりあえず子供たちを起こし、夫の両親に電話をかけた。
夫の状況をどのように伝えたのか、よく覚えていない。
「慌てて行ったら運転は危ないから、必ずタクシー呼んで行ってくださいね。」
そう言ったことだけは覚えている。
自分もそうするつもりでいた。
こんな状況で運転する自信はない。
こんな状況で運転する自信はない。
ところが、電話をかけたタクシー会社は、
「すいませんが、すぐには行けないですよ。
「すいませんが、すぐには行けないですよ。
こんな時間だし、1時間は待ってもらわないと…。」
1時間も待っていられない。
夫の状況は1分1秒を争うのだ。
他のタクシー会社の電話番号を調べて電話をかけた。
「お宅の住所は管轄外なので行けません。」
タクシーは諦めて、行ったことのない病院の場所をスマホで検索した。
所要時間15分と出てきた。
街中の運転は苦手で、ずっと避けてきた。
しかも、夜中の3時。
できたら自ら運転するのは避けたかったが、でも、1時間も待てない。
できたら自ら運転するのは避けたかったが、でも、1時間も待てない。
仕方なく子供たちを車に乗せ、夫のいる病院に向かった。
病院へ向かう道中、5年生の次男がすごく頼もしかった。
ふだんから私を気づかってくれる優しい末っ子。
インターホンの音に気付き、私を起こしてくれたのも次男。
ふだんから私を気づかってくれる優しい末っ子。
インターホンの音に気付き、私を起こしてくれたのも次男。
「おかあさん、次の信号を曲がるんだよ。」
知らない場所の運転が得意でない私のために、ナビを見ながら、必死で教えてくれる。
子供たちを乗せているおかげで、こんな時に事故ってはいけないと、冷静に運転できた気がする。
夜中だったこともあり、道は空いていて、15分ほどで病院に着いた。
来たことのない病院。
夜間の救急入り口から入ると、私もよく知っている夫の親友Tさんが待っていた。
自宅まで知らせに来てくれた友人2人と女性の友人も1人。
夜間の救急入り口から入ると、私もよく知っている夫の親友Tさんが待っていた。
自宅まで知らせに来てくれた友人2人と女性の友人も1人。
みなさん学生の頃からの付き合い。
「ご迷惑おかけしてすいません…。」
そう言って頭を下げた私に、
「俺の方こそ、ごめん。何もできなくて…。」
Tさんが私に頭を下げた。
聞けば、お酒を飲んだ後でカラオケに行き、楽しく歌っていたのに、突然膝から崩れ落ちるように倒れたらしい。
飲んだ後はカラオケ。
いつものコースだ。
隣で楽しく歌っていた友人の心臓が、突然止まるなんて誰が想像できるものか…。
飲んだ後はカラオケ。
いつものコースだ。
隣で楽しく歌っていた友人の心臓が、突然止まるなんて誰が想像できるものか…。
私にしたら、そんな時に一番気心の知れている友人がすぐそばにいてくれて、むしろありがたいと思ったほどだ。
妻の私なんかよりずっと付き合いの長い友人に、夫のそんな場面に立ち会わせてしまったことを申し訳なく思った。
親友のTさんから、夫の荷物を受け取った。
見慣れたカバンと、夫が履いていたスニーカー。
それから、見慣れない紙袋が1つ。
中を覗くと、グローブが1つ入っていた。
見慣れたカバンと、夫が履いていたスニーカー。
それから、見慣れない紙袋が1つ。
中を覗くと、グローブが1つ入っていた。
あぁ、そうだった。
Tさんからグローブをもらう約束になっていた。
この春中学に入学した長女がソフトボール部に入り、娘とキャッチボールの練習をするために、Tさんの使っていないグローブを譲り受けると話していた。
この春中学に入学した長女がソフトボール部に入り、娘とキャッチボールの練習をするために、Tさんの使っていないグローブを譲り受けると話していた。
毎晩、夕飯を食べながら、長女の部活の話を嬉しそうに聞いていた夫。
キャッチボールなんて、できるかなぁ?と言いながら、娘とのキャッチボールを楽しみにしていた夫。
どうしよう…このグローブ…。
夫がグローブを使えるようになる日が来るのだろうか…。
まだ顔も見られない夫の未来が、まったく思い描けなかった。
つづく。