休日、母が休みで家にいると

嬉しくて恥ずかしい。


やっと母に近づけても恥ずかしくて

話しもできない。


何を話していいのかも分からない。


ただ母の周りで

引きつった笑顔を浮かべているだけだった。



だが、その一方で

朝、会社に行く母の足の片方にしがみつき

行かないで。

と必死に泣き叫んだ。


結局は、母に振りほどかれ、祖母に引き剥がされ

母が行ってしまったその後でも悲しくてさみしくて

行かないで。置いてかないで。

と繰り返し泣き叫けび母を呼び続けた。











私の家には

昭和産まれなら想像できるであろう

屋根付きの向い合せで乗れる

屋外向けの子供用ブランコ。

それが庭にあった。



ある日、母がそのブランコの周りの草をむしっていた。


幼い私は、

母の背中が見えるブランコの片側に座り

そっと揺らした。


すると、私の向かい側の誰も乗っていない方のブランコが母の背中にぶつかってしまった。


母は酷く怒った顔で

こちらを振り向き、


そうして、私がいるのを確認し

目を見開き


痛い!

何やってるの!

何なの!お前は!



と、言い捨て、むしっていた草もそのままに

家の中に入って、行ってしまった。



母を追いかけて家に入るでも無しに

ブランコの片側にひとり座っていた。


母が外に出て来てくれる事はなかった。

私を迎えに来てくれる事はなかった。



私はひとり、

ただ引きつった笑顔を浮かべていた。




幼稚園に入園する前の記憶のお話し