こんにちは!
前回のブログで紹介した『月収』を読んだ話の続きを書こうと思っています。
まずは、この本に出てくる各章の主人公の女性たちを紹介しておきますね。
月収4万円 乙部響子(66歳)年金暮らし
月収8万円 大島成美(31歳)会社員作家
月収10万円 滝沢明海(29歳)独身会社員
月収100万 瑠璃華(26歳)パパ活女子
月収300万 鈴木菊子(52歳)未亡人の資産家
月収17万 斉藤静枝(22歳)介護士から起業


最初のストーリー、第一話は乙部響子(66)
※感想を書くにも、あらすじというか、少しネタバレが混ざりますので、知りたくない方は、ここで読むのをやめてくださいね。
響子は1年前に熟年離婚。その際に残ったお金で戸建てを一括で購入して、毎月の生活は年金暮らし。
離婚の際に、35年ローンの終わった家を元夫にあげてしまった。その理由が「建築家の元夫が建てたかった家」だから。
その家に住みたいと思わない理由は「彼のエゴが充ち満ちている」
↑その人が好きなように建てた家は「エゴ」が溜まっている。この感覚、すごくわかるなーと思う。
その小さな家で、響子は思いがけない臨時収入を得ることになるのだけど…
(そこはネタバレせず読んでからのお楽しみに)
さて、響子には時枝という娘がいて、38歳で出産したばかり。
チェーン店系カフェ(おそらくドトールみたいなイメージ)で、物語の始めには、赤ちゃん連れの娘と待ち合わせしていました。
自分用にコーヒーのSサイズ(240円)を買ったのに、娘にはルイボスティーのMサイズ(350円)を買う。
自分の分を買う時には240円を小銭で払えたことに「やったぁ、お札を崩さずに済んだ」と小さな喜びを感じていた。
(さすが専業主婦で35年ローンを返した強者!)
けれど、娘の分を買う時には「ルイボスティーの単価自体が、私の頼んだコーヒーより高い」と思いながらも、母としての見栄を張ってSではなくMサイズを注文する。
そして、娘は感謝の言葉もなく受け取って一気に飲み干す…
こういった場面の描写に、もう驚くほどのリアリティがあるんです。なぜこんなに詳しくギリギリの生活費で暮らす主婦の内心を、ご存知なの?!と思うくらい。
(取材力なのか?ご自身が元々節約主婦感覚なのか?)
でも、ある意味、読んでいてほっこりするとか、幸せな気持ちになる描写が続くわけでもなくて。
(この本の前に『また団地のふたり』を読んだから、余計にそう思う)
大きなことも、小さなことも、日常的な行動、人とのやり取りなど、堅実で、現実社会の厳しさを感じるほど。
「あー、そこでそういう選択をするんだ」
「そっちに行って大丈夫?」
「私だったらそうはしないなー」
なんて思いながら読みました。
「もしも自分だったら?」を思うは、女性の人生だからなのかも知れません。
私にもこれから先にそういうことが起こったら?
全然知らない人の話のに、どこか「知り合いの知り合い」くらいの関係性の人のお話のようで、実際にありそうなリアルさや身近さがある。
そんな風に、色々ツッコミながら読み進める中で
「人の人生って、その人の価値観によって選択された小さな行動の連続で方向づけられていくんだな」
と思う。
『三千円の使い方』も、まさにタイトルからしてそうなのだけど。
ただ受け身的に読んで楽しむのではない感じは、原田ひ香さんの小説ならではなのかも。
この1章はまだ序章なので、先に進むに連れて、登場人物が増えて、どんな展開されていくのか?全く読めない状態でした。
でも、確実に「読んでよかった」と、この先の自分の人生への影響力を思う本なのです。
次の章は、会社員をしながら小説を書いている成美が主人公。読み進めると、この本のキーパーソンが出てきます。
また感想を書きたいと思います。