毎日片道だけ犬と小一時間かけて職場まで歩いている。
時折ご近所さんと立ち話したり、東海岸での生活からは
考えられないのんびりとした通勤である。
得も言われぬようなお花の匂いが道路に立ち込めている時もあり、海が見え、
草の匂い、空の虹、野生の鶏が道を歩いたり、
五感を刺激される散歩道である。
東海岸では片道10キロちょっとの距離を車で1時間かけて渋滞でイライラ、
雪が降れば更なるストレスで職場に着いたら立体駐車場も激混み。
春が来て美しいマグノリアの花が満開でも、秋が来て紅葉が息をのむような
鮮やかな色になっても、冬の雪をまとった樹々が光り輝いていても、
ゆっくりと愛でる時間などなかったし、
ほぼ毎日どこかで交通事故を目撃するという刺激的な通勤だった。
本業の他にフリーランスの通訳をしていたので、クライアント先に遅れないように
行くため、渋滞の高速を何度も車線変更しながら必死で運転したり、とにかくいつも
急いでいた。そして沢山仕事を詰め込んで働くことが確かに好きだった。
都会の便利さと引き換えに得たこの田舎暮らし。日焼けで顔の皮膚の劣化が
加速している他は概ね、満足いや、足ることを知る生活である。