「さて、とりあえずみんなにも連絡しよっか。」
空也から楓の依頼を聞き、招集をかけるつもりだ。
「僕たちだけでも良くないですか?」
楓から仲間を集えと言われたとはいえ、
蘭丸はあまり他人を巻き込みたくない様子。
「ん~、簡単な仕事のうちにみんなも慣れておかないとね。」
優子はやる気満々だ。
「でもまだ万一のための装備が出来てないですよ??」
刀匠、山中彦左衛門に依頼した武器はまだ完成していない。
蘭丸が依頼した際、約1ヶ月掛かるという返答を貰っていた。
よって、まだ後2週間ほど掛かる見込みである。
「大した相手じゃない、って空也さんも言ってたから、
多分その心配はないんじゃないかなぁ?」
「空也さん基準での評価ですから当てにならないかと。」
「ふーん、あの人ってやっぱり強いのか。
ま、どうしてもって言うなら道場の真剣使えば良いし。」
- ピンポーン、ピンポーン -
「あれ、こんな時間にお客さん?」
現在時刻、夜の九時半である。
夜分に支倉家への来客は、珍しいことなのである。
「はーい、どちら様ですか?」
祥子がインターホンで応える。
「山中です、頼まれていた物、出来てる分だけお持ちしました。」
「あら、彦左先生、今開けますね、入って下さい。」
・・・・・
「ふぅー、やれやれ、この荷物はさすがに骨が折れますわい。」
「重かったでしょう、どうぞ、上がったらして下さい。」
「はっはっは、いやはや、かたじけない。」
「仰って下されば取りに伺いましたのに・・。
先生自らお越しだなんて、そちらの方はお弟子さん?
お茶でもお出ししますから、お座りになってて下さい。」
「はっはっは、いやはや、いつもながらお優しい。
それに、近所で評判の美人親子に会えれば、
こんな疲れなど吹き飛びますわい、はっはっは。」
「もう、先生ったらお上手ですね。」
「(エロジジイ・・・。(優子の心の声))」
「弥太郎、それを広げてご披露して差し上げなさい。」
「はい、師匠。」
彦左衛門が連れてきた弥太郎と呼ばれた者、
齢10~12歳ほど、どうみても女の子であるが、
幼い割りにしっかりとした物腰で、武具の扱いも手慣れている様だ。
「先に真剣、それと祥子さんの薙刀が出来ました。
セラミックでの依頼は材料不足でもう少し掛かります。
(このお姉ちゃん、良い匂い・・。)」
作品を検分して貰うため、優子に刀を差し出す弥太郎。
緊張を隠しているのか、心なしか、顔を赤らめている様にも見えた。
「そうですか、無理な注文も多いから仕方ないですね。」
答えながら、優子は真剣に真剣をチェックしている。
「無駄のない綺麗な波紋ですね。」
優子は徐に、絹で出来た布を宙に舞い上げ、刃を差し出す。
落下し刃に触れた布は、刃に触れた瞬間に真っ二つとなった。
「ほぉ、これは見事な業物じゃな。」
居間でテレビを見ながらその様子を窺っていた信長も、
思わず見とれて感嘆の声を上げる。
「でもどうして、わざわざ今日持ってきて下さったんです?」
お茶を出しながら祥子が訊ねる。
「なに、夕方にの、燕尾服に裸足のけったいな男が来ての、
入り用になったから出来ている分だけでも納めてほしいのじゃと。」
「(裸足・・・)ぷっ。」
思わず吹き出す蘭丸。
「刀は終えておったし、どうせならと思い、
薙刀にも急いで柄を付け、持って来たのじゃ。」
「なるほど、良い頃合いに空也が催促しに来たというわけか。
まぁ、それもおそらく楓の読みなのであろうが。」
「そのお陰でみんなに声掛けて、すぐにでも準備できるね。
でもお母さんのは急がなくても良かったかなぁ・・。
って、あれ? お母さんは??」
「祥子なら薙刀を手に取るなり一目散に道場に向かったぞ。」
「なんですと!?」
なんで止めてくれなかったの?という表情の優子。
しかし信長は喜々として道場に向かう祥子に声を掛けられなかった。
微妙に身の危険を感じたのかも知れない。
「なにやら慌ただしくなったで、儂らはお暇するとするかの。」
彦左衛門が立ち上がり、弥太郎に帰り支度を促す。
「あ、彦左先生、もうちょっと休憩してからでも。」
道場に向かったという祥子が気がかりだが、平静を装い、
社交辞令的に彦左衛門を引き留める優子。
「いや、お仲間にも連絡したいのじゃろう?
もう良い時間じゃし、早くした方が良いのではないかね?」
「あ、それもそうですね! じゃさようなら、彦左先生!!」
「はっはっは、って、帰る人は二度引き留めんかい!!
・・・まぁ良いじゃろう、またな、優子殿。」
すれ違いざまに、優子の尻を撫でていく彦左衛門。
「うっ! ハ、ハイ、オヤスミナサイ、センセイ・・#」
「目が怖いぞ、優子殿、せっかくの美人が台無しじゃて。
では失礼致す、はっはっは。」
「おやすみなさい、お姉さん。」
顔を赤らめて別れの挨拶をする弥太郎、これでは怒れない。
「オホホホホ、お、おやすみなさい、弥太郎ちゃん。
(これが狙い?!あんのエロジジィ・・いつか泣かす!)」
嵐でも去るのを見送るかのように悲喜交々な顔の面々。
「蘭ちゃん!!」
「は、はいぃぃい!!」
「みんなに連絡して、電話帳に連絡先載ってるから。」
「は、はいぃぃい!!」
「信長さん!!」
「むぉ!?」
「お母さん見てきて頂戴、信長さんが行くのが良いと思うから。」
「あ、相分かった・・。」
「あのぉ、幸子さんたちには優子さんが連絡した方が良いんじゃ?」
恐る恐る蘭丸が提案する。
「ん???わたしは食器洗ったり色々あるの!!」
「わ、わかりましたっ!!あ、あの、いつ集まりますか?!」
「場所が近くだし、明日の放課後、夕方で良いわよ!!」
「は、はいぃぃい!!」
斯くして、優子の号令のもと、散っていく信長主従。
こんな調子で初仕事は上手く行くのであろうか?
つづくんです。
...
