のぞみ | malle店主の話

のぞみ

よりハイソ感を増した最近の田園調布の駅。


改札を背にして右に向かうとハイソとは

少し違った昔ながらの商店街に差し掛かる。


商店街は降り坂に沿ってわりと長く続く。


そんな坂の途中に「望」という喫茶店がある。

田園調布というと、こ洒落たカフェを想像するが

そこは時代と逆行したいわゆる喫茶店だ。


タバコとコーヒーで一服したく

その店に吸い込まれた。


店内は意外と広く50席はあるだろうか。

中年男性二人がどうやら店の人間らしい。


店内を見渡せる奥の席を選んで座った。

壁には大きめの絵がいくつも飾られ、

ディスプレイ用の棚にはコーヒー器具が

並べられていた。


一番大きなジャズマン達を描いた絵は

ここはジャズ喫茶だったのでは?と思わせるほど

の存在感。


しかしここに流れるBGMはジャズとは程遠いものであった。

このミスマッチがどうにも楽しい。

気張る必要はない息を抜ける店だということがそこからわかる。


店員らしき男性らはオーダ-以外接触してこない。

サイホンでいれたコーヒーを届けると

すぐに視界から消えてしまった。


ここは「コーヒーおかわり自由」のようだ。

あらゆるところに「コーヒー、紅茶おかわり自由」の

シールが貼られている。(もしかしたらノリづけかも・・)

綺麗に並べられたディスプレイ用の棚にまでも。

「コーヒー、紅茶おかわり自由」という夢のような言葉が

うるさく感じるほどの貼られようだ。

ここまで貼られるとネタなのでは?と思えて笑える。


シールは汚れると貼りかえているようだ。

シールの剥がし跡が残っていたのでわかった。

新しいのを貼る前に綺麗に剥がそうよ。と思ったのだが

それは間違い。

剥がし残りを触ると、もうそこには剥がし残り独特の

ベタベタ感はなく、少し黄ばんだ薄紙が張り付いているだけ。

不快になど思わない。

もうこれは店内にマッチした装飾の一部なのだ。

深い、深すぎる。


お洒落とは程遠い昔の大衆喫茶店の姿。

石油ストーブがあればスキー場の休憩小屋にも思えるし

寂れたホテルのロビーにも思える。

都会の喧騒を忘れるのには打って付けだ。


ゴチャゴチャしてるのに素っ気無い。

タイムスリップしたのかどこかに旅行に来たのか

なんだかわからなくなるぐらいの空間。

田園調布のイメージとはまさに逆行している。

素晴らしい!!


お洒落なカフェも好きだが

こういう喫茶店でひと時を過ごすのもまた格別である。

田園調布に来た時はまた来よう。


もちろんメニューはお茶以外にお汁粉とかオニギリとか

サイドメニュー充実。しかし

The 喫茶店の王道!!のナポリタンはなかった・・・・多分(涙)。