光翳りし時 その4 | 百火繚乱

百火繚乱

特撮大好きです。変身する前も後も、変身した中の人も、声の人も好きです。
ゴーカイジャー、シンケンジャー、仮面ライダー中心かな。
シンケンジャーの小説、殿様で恋愛小説も書いてます。

「触れるなよ、力が弱まる」
栞がしっかり頷いた。
「全くお前達は。これしきの事、夕刻には戻れる。少しくらい我慢しろ」
笑う薫に、丈瑠が横を向く。
薫も共に禊ぎを受けたので、白い袴姿。
丹波が捧げ持った盆から、薫がショドウフォンを取り上げた。
「栞、気を抜くなよ。モヂカラに誘われて外道衆が出るとしたら、この屋敷だ。本来なら、モヂカラを持つ志葉の者、複数で当たる仕事。だが今はお前しかおらぬ。嶺を置いていく。少しは役に立つだろう」
結界を張るのに他のモヂは邪魔になるため、モヂカラの強い者は、志葉の者しか屋敷には残れない。本来なら、結界を張る者と、外道衆が出た時相対する者、二人以上で当たる仕事だ。
嶺は、内向きの用をこなす本家の黒子で、いろいろ役に立つが、モヂカラは持たないので、そばにいても差し支えない。
薫がショドウフォンを手渡しながら続ける。
「これも、変身する力は失われている。使えるのはモヂカラ増幅機能だけだ」
頷く栞を、薫がじっと見つめて、声を落とす。
「・・・無理はするな。危なくなったらここを捨てろ。あとは何とかする」
栞が少し驚いた顔をして、小さく笑った。
「姫、いけません。この場合、命がけで守る様申されるのが筋です」
薫が顔を顰める。
「姫は止めろ。そんな事は分かっている」
「お気遣いなく。それとも、私はそんなに頼りになりませんか?」
優しく笑う栞に薫も小さく笑った。
「薫様もお気を付けて」
「ああ」
薫が丈瑠に顔を向ける。
「先に出る。くれぐれも触れるなよ」
もう一度念を押して、薫は出て行った。
丈瑠が、拳を握る。
そこまで重い役目だと思っていなかった。
「大丈夫なのか?」
心配そうになった丈瑠に、栞が安心させる様に笑った。
「大丈夫です。姫なら一人でできる仕事です」
「お前は母上じゃない」
「この日が来る事は、ずっと前から分かっておりました。だから父も丹波も、私を姫と同様に鍛えました」
丈瑠が悔しそうな顔をする。
「俺が本物だったら」
「どちらにしても同じです。一番強い者は、樹海へ向かいます。丈瑠様達が一番危険な場所なのですから。それもしきたりです。私は戦えないから、ここへ残るだけです」
栞がにっこり笑う。
「力の使い方も教わりました」
栞がショドウフォンを見せる。
丈瑠が小さく頷いた。
「無理はするな」
「丈瑠様こそ、どうぞご無事で」
不安そうな瞳になる栞に、丈瑠が触れられない拳を握りしめる。
栞も、いつもなら頭に置いてくれる手がなくて、心細い。
抱きしめたい相手がすぐ目の前にいるのに、触れ合えない事がこんなに辛い事だと改めて知り、お互いに触れ合えない分じっと見つめ合った。
「・・・帰ってきたら、抱きしめて」
栞が小さく囁いて、丈瑠が笑って頷く。
「約束だ」
「だから、どうかご無事で」
栞が不安そうに見つめる。
「大丈夫だ。必ず戻る」
丈瑠が安心させる様に言って、広間を出た。栞はその場で、行ってしまう丈瑠を見えなくなるまで、ずっと見送った。



-三途の川
赤く揺らめく流れに、白地に花の模様の打ち掛けが浮かんでくる。
たゆたい、たゆたい-
そのうち打ち掛けが、実態を持ち、岸に上がった。
薄皮太夫だ。
「これはどうした事か。ドウコクに全てやったつもりでいたのに、あの打ち掛けにまだ想いが残っていたとは。わちきもつくづく未練だねえ」
自嘲する様に笑い、何も持たない両手を見る。
「・・・新座も、ドウコクも、もう誰もいやしないのに」
三途の川を振り返る。
「わちき一人こんな所へいるのは寂しいね。またあの者に切ってもらうか」
太夫が一人呟いた。






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