皆が一斉に栞を見た。
「え?栞ちゃん?」
どうしてここで栞の名前が出るのか分からずに、首を傾げる。
「あの、栞さんは?」
流ノ介がおずおずと訊ねた。
「何だお前達、知らぬのか?栞殿は志葉のお方だ。モヂカラも使える」
「ええー」
丹波の答えに、茉子と源太以外の、知らなかった三人が驚きの声を上げる。
「こら静かにせぬか。話はまだ終わっておらん」
彦間に怒鳴られ、皆がまた丹波を向く。
「お前達の役目は、樹海を守ることだ」
「樹海?」
「そうだ。結界で都は守られる。だが、樹海は厄介でな。結界が張れんのだ。外道衆が出てくるとしたら、その樹海から。そこでお前達の出番だ。出てきた外道衆を樹海から出すな」
「うわ、何か、樹海の隙間ってすごそう」
千明が顔をしかめる。
「広いしね」
茉子も同様だ。
「そのくらいは何とかせい。何のために呼んだと思っておる」
「丹波は私と共に参る。丈瑠の屋敷は、日下部、任せてよいか?」
また話の逸れそうな丹波を遮り、薫が続け、彦間が頭を下げた。
こちらは、モヂカラではなく、ナナシが現れれば、直接撃退する事になる。
「では、お前達分かったか?」
皆が頭を下げ、話は終わった。
広間を下がりながら、流ノ介達が栞に寄ってきた。
皆と別れている間に着替えたのか、栞は薫と同じ白い袴姿。
「栞さんて、志葉家の方だったのですか」
流ノ介に改めて問われ、栞が小さく頷いた。
「だから丈瑠の許嫁かぁ」
千明が納得した様に頷いた。
「殿様、婿養子にならはるの?」
「それはちょっと違うんじゃない?」
ことはの言葉を、茉子が否定する。
「でも、栞ちゃんも人が悪いよ。留守番って」
「まあ、留守番には違いないだろ」
「こらお前達、喋ってる暇はないぞ。さっさと支度せぬか」
立ち止まる皆を、彦間が追い立てる。
「へいへい」
「じゃあ、また夜にね」
手を振る茉子に、栞が笑って頷いた。
「皆様もお気を付けて」
栞が頭を下げて、皆が次々に部屋を出て行く。
最後の丈瑠が、栞の前で止まった。
皆気付くが、そのまま止まらない。
「丈瑠様も、どうかご無事で」
不安そうに見上げる栞に、丈瑠が笑った。
「ナナシ相手に命を懸けたりはしない。大丈夫だ。すぐに終わる」
丈瑠が手を伸ばし掛けて、栞が一歩下がった。
「先ほど禊ぎを受けました。殿方に触れる事は適いません」
丈瑠が、栞の白い着物を改めて見る。
「何故先に言わない」
「先に言っていたらどうしてたのだ」
後ろから声がして、薫が呆れた顔をしながらやって来た。