残される者 その1 | 百火繚乱

百火繚乱

特撮大好きです。変身する前も後も、変身した中の人も、声の人も好きです。
ゴーカイジャー、シンケンジャー、仮面ライダー中心かな。
シンケンジャーの小説、殿様で恋愛小説も書いてます。

残される者


彦間が、屋敷に茉子を呼んだ。
「おお、悪いな。わざわざ」
「いえ、特になにもありませんでしたから」
茉子が、勧められるまま、座敷に彦間と向かい合って座る。
「殿達の事でちょっとな」
彦間が早速切り出した。
「何かあったんですか?」
「いや何、栞殿が卒業するまで祝言は挙げられんと言っておったのはわしなのだが、それを待たずとも、よいのではないかと思ってな」
「・・・はい」
茉子が曖昧に返事する。確かに、そう言っていたのは彦間だけれど、今更それを覆す理由がよく分からない。
「急にどうしたんですか?」
「ああ、まあ卒業まで一年ちょっとだしな。そう変わらんかと」
「それだけですか?」
「まあ、それだけではないんだが・・・」
彦間が言いにくそうに言葉を切る。
茉子が、要領を得ずに首を傾げた。
「本家の方から、そろそろはっきりさせる様催促が来てな」
本家と言えば、薫のいる志葉の本家。実情は家老達が牛耳っている。
それなら仕方がないかも、と茉子も頷く。
「栞ちゃんがお屋敷に来て大分経つし、いいんじゃないですか?」
「もうお二人は夫婦も同然だから、形ばかりの事なのだが。まあ、言われてみれば、先にお子でもできたら当主として体裁が悪かろうからな」
「え?」
突拍子もない彦間の言葉に、茉子が頓狂な声を上げる。
「ちょっと待ってください、彦間さん。あの二人って・・・」
そんな関係ではないはず。
否定する茉子を彦間が笑う。
「そんなはずはなかろう。夜遅くまで一緒に部屋におる事も多いし、年末など、殿の出張先に栞殿が追いかけていってしまわれた」
「栞ちゃんが?」
彦間が頷く。
「まあ、仕方なかろう。他にもいろいろとな」
彦間がおかしそうに言葉を切る。
「何ですか?」
「いや何。まあしかし、そう言う訳でな、わしも殿に、祝言をそろそろ挙げてはいかがかと言っておるんだが、なかなかよい返事は頂けん」
それなら、彦間も心配する気持ちも分かって茉子も頷く。
「でも二人とも、その辺は弁えているので、大丈夫じゃないでしょうか」
「そうかのう」
「そうですよ。絶対そんな事ないです」
茉子がきっぱりと言う。茉子の見る限り、二人はそういう関係ではないと言い切れる。
「そんなはずは。いくら殿が奥手でも・・・」
と言いながら、彦間も思い当たった。
二人とも、そういう事はすぐに顔に出る。現に、初めてキスした時は、すぐに気が付いた。言われてみれば、今回全くそういう素振りはない。
出張先に栞が行ってしまった時も、連絡を入れなかった事は謝っていたが、それ以外で後ろめたい様子はなかった。
彦間が思い切り顔をしかめた。
「まさか、わしの取り越し苦労だったか」
その後高笑いをする。
「茉子、余計な事を喋ったようじゃ。この話、皆には内緒だぞ」
笑う彦間に、茉子も笑顔で頷く。
「でも、彦間さんが、そんなに理解あるなんて思ってなかったです」
「ははは、そうか?まあな、最初は厳しく言っておったんだが、どんなに夜遅くなっても、翌朝、早くからの朝稽古に、お二人とも遅れずにお出でになり、日頃と何もお変わりにならん。お二人とも完璧で、あれではわしも何も言えんでな。だが、祝言の話は本当だ。それとなく、言ってみてはくれんか」
「はい。じゃあ、まず栞ちゃんから。早速今夜誘ってもいいですか?」
茉子が手で、飲む仕草をする。
「ああ、かまわん。栞殿は、友と出かける事もないからな。息抜きもできて、ちょうど良い」
茉子が楽しそうに微笑んだ。






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