「よし、完成」
満足そうな源太に笑顔を見せてから、栞が丈瑠の元へ駆け戻る。
「大きなのができました」
嬉しそうに言いながら、濡れてしまった手袋を外すと、手が真っ赤になっていて、丈瑠が舌打ちをしてその手に触れる。
案の定、氷の様に冷たい。
「子供か、お前は」
にやにや眺めている彦間に構わずに両手で包んで温める。
「それでは間に合わぬでしょう」
彦間が黒子に声を掛けて、すぐにお湯を張った桶が運ばれてきた。
丈瑠に温めてもらった方がよかったように、一瞬栞がつまらなそうな顔をしてから、離された手をお湯に浸けた。
「源太さんは大丈夫ですか?」
庭にいる源太を振り返ると、一人で雪つぶてを作っている。
「平気平気、さあて身体も温まったし、丈ちゃんやろうぜ」
「何する気だ」
「決まってんだろ、雪合戦だ」
雪つぶてが飛んできて、避けた丈瑠の後ろの壁でつぶれる。
「こらっ源太!屋敷に投げるな」
「やべっ」
彦間の怒鳴り声に源太が逃げ出して、遠く離れてから振り返った。
「下りて来いよ、丈ちゃん、一緒にやろうぜ」
後で遊んでやっから。の意味が分かって、栞は微笑みながら、温まった手を拭いている。
また投げそうな源太に、これ以上屋敷に被害が及んではいけないと、黒子達がおろおろし、丈瑠が思い切り顔をしかめた。
「やめんか源太!」
悪のりして雪玉を構えた源太の頭に、どこからか飛んできた雪つぶてが当たった。
「痛て、誰だ」
源太が飛んできた方を振り返ると、千明が楽しそうに雪を構えている。
「源ちゃん油断しすぎ。こんな楽しい事してるなら、俺も呼んでくんなきゃ」
「殿ぉ助太刀に参りました」
流ノ介もやって来て、結局丈瑠も庭に引っ張り下ろされた。
大の男四人で雪合戦を始める様子を、今度は栞が彦間と縁側から眺めている。