聖夜の足音
丈瑠が仕事から帰ってくると、何やら座敷の方が騒がしい。
「お帰りなさいませ」
出迎えも彦間だけで。
「何事だ?」
彦間もいつもよりにこやかだ。
「源太が来ておりまして」
「源太か」
丈瑠が苦笑する。源太が来ると、賑やかになるのはいいが、いささか賑やかすぎる。
「栞は?」
いつもは、栞も出迎えに来る。
「源太と一緒に」
話しながら座敷へ入ると、部屋の真ん中に大きなもみの木。
その木に、源太と栞と、黒子達が飾りを付けている。
源太がクリスマスにもみの木を用意するようになったのは、戦っていた時から毎年だ。
「お、黒子ちゃん、いいねえ。そこ、もうちょっとこう、綺麗にな」
夢中になっていて、丈瑠が帰ったのに気付かない源太達に、彦間が咳払いをする。
「殿のお帰りだ」
彦間の声に、黒子達が一斉に頭を下げる。
「お、丈ちゃん、お帰り。丈ちゃんも一緒にやるか?」
飾りを振ってみせる源太に、丈瑠が顔をしかめた。
「勝手にやってろ、着替えてくる」
部屋へ向かおうとして、栞が不満そうな顔をしているのに気が付く。
「どうした?」
「丈瑠様が帰ってくるまでに飾り付け終わらせて、驚かそうと思ってたのに・・・」
「悪かったな。早く帰ってきて」
むっとする丈瑠に、栞が慌てて首を振る。
「戻ってくるまでに終わらせとけ」
栞が頷いて金色のボールを手に取った。
頭より上の枝に付けようとして、背伸びした時、頭の上から飾りを取られる。
背中に丈瑠を感じて、そのまま止まってしまった栞の、頭越しに、丈瑠が飾りを付ける。
手を下ろし際、軽く栞の頭を撫でると、丈瑠は部屋へ入っていった。
振り返らないままとても幸せそうな顔をする栞を、彦間と源太が笑顔で見ている。
「おーしできた。ダイゴヨウ、頼むぜ」
「へい、親分」
丈瑠も戻ってきて、みんなの見つめる中、もみの木のてっぺんで、星の代わりに収まっているダイゴヨウが、明かりを付けた。
「いよいよクリスマス、って感じだねえ」
「源太、また屋敷へ来るつもりか?」
クリスマス当日も、毎年源太は屋敷へ来る。
「じいさん、寂しい事言うなよ。俺に一人でクリスマスすごせって言うのか?」
「寂しい奴だな。クリスマスを過ごす相手もおらんのか」
「ほっといてくれ。栞ちゃん、来てもいいよな?」
栞が笑顔で頷く。源太だけでなく、家臣達も、何となく集まってくる。
「おし。寿司握ってきてやるからな」
「で、親分。おいらはクリスマスまでここにいなきゃいけねえんですかい?」
ダイゴヨウがてっぺんで、遠慮がちに訊ねる。
「ちゃんと連れて帰ってやるよ。クリスマスにまた頼むぜ」
何気ない師走のある日。穏やかな夕暮れのことでありました。
完
初めてじゃないかと思える、ほんとに短編。
でも、中途半端だ。
出典は、言わずもがなのエムグラです。
ツリー飾るの、かわいかったので。
手だけ雰囲気。今更追加(謝)
来週、続きなクリスマス。
水曜日から始めると、リアルクリスマスやら、冬休みやら。
なので、月曜日くらいから。の予定です。
