虚身 その6 | 百火繚乱

百火繚乱

特撮大好きです。変身する前も後も、変身した中の人も、声の人も好きです。
ゴーカイジャー、シンケンジャー、仮面ライダー中心かな。
シンケンジャーの小説、殿様で恋愛小説も書いてます。

栞もまた、霧に取り込まれていた。
河原に降りた途端、濃い霧に包まれて、すぐ前を歩いていた丈瑠の姿が消える。
「丈瑠様」
慌てて呼んでも返事はなく、どこまでもただ白い霧が続いている。
霧と言っても、まるで目に見えない程細かい何かが、意志を持って無数にうごめいている、不気味に動く濃い靄だ。
栞が警戒しながら霧の中を進んでいくと、一カ所だけ霧が晴れていた。

スクリーンの様に、切り取られた景色が見えて、その向こうに丈瑠がいる。
「丈瑠様」
栞がほっとして駆け寄るが、どこまで行っても距離は縮まらず、その先には行けない。
「結界?」
栞が走るのをやめて、白い壁の様な霧を見回した。
霧の向こうの丈瑠は、川の方をじっと見ていて、そこから何かが飛び出してくる。
「!」
丈瑠に抱きついたのは、栞だった。
「私?」
これは、今起こっていることか、それとも幻を見せられているのか解らない。
丈瑠に抱きついた栞の手に、シンケンマルが光った。
「丈瑠様っ」
届かないと分かっていても、声を上げる。
その瞬間、丈瑠が栞を突き飛ばした。
直感だ。これは、幻などではなく、今この霧の向こうで丈瑠に起こっている事。

丈瑠は今、自分の姿の敵と戦っているのだ。
丈瑠が、その偽物の栞を突き飛ばしたので、まやかしだと気付いたと思ったのに、刃を交える様子がおかしい。
ただ、刀を避けるだけで、相手を傷付けない様にしている。
そのまやかしはコピーした様に、太刀筋まで栞と同じで、まだそれが偽物かどうか判断が付かずにいるのだ。
このままでは丈瑠が危ない。
栞が何とかして、霧から出ようと試みる。
そして、思い出して、ポケットからショドウフォンを取り出した。
丈瑠達の持っている赤いショドウフォンではなく、それは、茶色い彦間のショドウフォン。もしもの場合に備えて彦間が持たせてくれたものだ。
変身は出来なくても、モヂカラ増幅機能は付いている。
栞が迷わずシンケンマルを取り出した。
丈瑠がまやかしに倒される。
「惑わされないで。それは私じゃない」
栞が刀を振る。
霧は一瞬切れるが、またすぐに元の姿に戻る。
まやかしが、丈瑠を押し倒しているのが見える。
「丈瑠様に触らないで」
刀を持つ手に力が入る。刀をむやみに振り回しても、何の効果もない。それでも、刀を振り回す。
丈瑠に触れるまやかしと一緒に、こんな時に嫉妬している自分の邪念も切ってしまいたかった。
そうしているうちに、霧の向こうの丈瑠が、偽物の栞を切り倒した。
ほっとして、息を切らして立ち止まった瞬間、強烈な悪意が周りに立ちこめる。
丈瑠を倒す事に失敗した敵が、今度は栞に矛先を向けた様だ。
栞が刀を構え、今まで栞に斬りつけられるだけだった霧が、今度は固まりになって襲ってくる。
刀で霧は切れないが、切れないなりに固まりは崩せて、衝撃は避けられる。
とにかくここから出なければ。
まやかしは消えた。邪念を取り払い、モヂカラを集中させる。
霧の攻撃の合間にショドウフォンを構えた。
霧の一点に狙いを定めて、一筆一筆モヂカラを込めて、「破」と書く。
「はっ」
かけ声と共にショドウフォンを振った瞬間、文字が反転して、僅かに霧が晴れる。
栞がすぐにその間に飛び込んだ。

その様子は、シタリの鏡にも映っている。
「悔しいねえ、この女、あたしの術を破ったよ。しくじったねえ、どっちも破られたんじゃ、台無しじゃないか。こうなったら、あれだけでも守るよ」
シタリが悔しそうにまた鏡を操る。




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