栞は夢を見ていた。
丈瑠に抱きしめられている夢で、腕の中がとても心地よくて、はだけた胸に頬を寄せる。
夢の中なのに感触がリアルで、頬に丈瑠の指を感じて、ゆっくりと目を開けた。
間近で見つめる丈瑠に、幸せな気分のまま微笑むけど、丈瑠は笑ってくれなくて、いつもの少し怒った表情。
夢の中くらい、もう少し優しい顔をして欲しくて、甘えた仕草で頬をなぞると、ますます表情が険しくなって。
丈瑠が隣に寝ているなんて、夢に違いないのに、だんだん意識がはっきりしてきても、夢から覚めず、徐々に栞の笑顔が消える。
何か、決定的に間違えている気がして、栞は必死に記憶を手繰った。
昨夜丈瑠に抱きしめられた後の記憶が、ない。
夢じゃないのだとようやく気が付いて、咄嗟に布団に潜ってしまった。
部屋は、外の光で既に明るくなっていて、少しだけのはずが、結局朝まで過ごしてしまった事に、どうしていいか分からなくなる。
「目が覚めたか?」
布団の上から丈瑠が軽く小突くと、布団の山が小さくなる。
「・・・ごめんなさい」
消えそうな声で、とりあえず謝るが、布団からは出られない。
丈瑠がゆっくり体を起こした。一晩中腕の中で、とどめに寝起きがあれでは、精神力も途切れそうになる。
栞の入っている布団の固まりを見ながら、深くため息をつくと、固まりが崩れて、栞がベッドからそっと滑り降りた。
「顔を、洗ってきます」
顔は上げられず、耳まで真っ赤になったまま頭を下げて、部屋から飛び出していく栞を見送ってから、丈瑠は呆れた様に小さく笑った。
次回完結