そのまま部屋の前で、ノックする事も出来ずに立っていると、不意にドアが開いて、驚いて声を上げそうになった。
「どうした?」
ドアの前にしばらく立っていたので、気配に気付かれたのだろう。
「・・・あ、の、お誕生日おめでとうございます。って、一番最初に言いたくて」
最後は聞こえないくらい小さく言う栞に、丈瑠がまた呆れた顔になる。
「明日の朝でも一番だろ」
もっともな事を言われて、栞は顔も上げられないまま、小さな包みを差し出した。
丈瑠が黙って受け取ると包みを開ける。お守りだった。
「あまり心配ばかりするな」
俯いたままの栞の頭に手が乗せられて、栞が思いきり身を竦める。
「入るか?」
そう言って、ドアが大きく開けられて、栞が困った様に視線を泳がせた。
丈瑠の部屋は、別荘の中で一番大きな部屋で、ベッドもダブルサイズだ。
部屋の明かりは落としてあり、ベッドサイドのスタンドが一つ点いている。
丈瑠が黙って部屋を横切り、そのままテラスへ出て、そこで栞に来る様振り返る。
栞も、言われるままに後を付いていった。
「わ、あ」
思わず声を上げる程の、星空だった。
息苦しくなる程の満天の星空。
屋敷からも星は見えるが、これほどの星空は見た事がない。
「すごい。降ってきそうですね」
星空を見上げる栞が笑顔になって、丈瑠を振り返った。
「やっと笑ったな。別に怒ってないから、笑っていろ」
源太達が出かけてから、丈瑠が不機嫌そうに見えて、おどおどしてしまっていた。
「だって、せっかくの誕生日なのに、ごめんなさい」
「たまにはいい。屋敷じゃないのも、ジイも黒子もいないのも、お前がいるのも」
星空を見上げたままそう言われて、栞がじっと丈瑠を見つめる。
丈瑠も栞に視線を戻して、伸ばされた丈瑠の指先が頬に触れて、栞がぎゅっと目を閉じた。