「お待ちください、姫」
端の家臣の一人が発言する。ずっと姫側に付いていた者の一人だ。
「此度の騒動、発端は筆頭家老榊殿。御処分は如何様に」
「聞いてなかったのか。此度の騒動、私が家臣に諮らず勝手にしたことが発端だ。大体、謀反だ等と言うが、榊が本当に私欲だけで動いたのならば、自分の娘を十九代目と結婚させればすむことではないか。それをわざわざ逆の事を言い出したのは志葉家のことだけを考えたからだ。処分などいらぬ」
「姫」
対立していた者たちは、納得いかないようだ。
「正式な抗議でもなかったであろう、今日のこの場にもその議題は上がっていない。それにこれは、丈瑠の問題だ。丈瑠、お前はこの者たちの処分を望むか?」
「いや」
突然振られて、丈瑠が簡単に否定する。
「だ、そうだ。まだ何かあるか?」
反論した家臣は、また平伏して黙った。薫が一息吐いて、皆が静まるのを待ってから、また声を上げた。
「処分する者は他にいる」
薫の言葉に皆がざわめく。
「静かにせい」
丹波が一括して、その場が静まる。
「榊栞」
父親が処分されなかった事にほっとしていた栞が、突然名前を呼ばれて、驚いて顔を上げてから、慌ててまた伏せた。
「此度の一件で、お前は育ててもらった恩義も忘れ、父榊雄一郎の会社を乗っ取り、騒動を起こした。理由は聞かぬ。侍道に反する行いだ。よって、栞は榊家から絶縁とする」
栞が伏したまま驚く。絶縁って・・・
「すでに、榊雄一郎と栞の養子縁組は解消した。榊、皆の者、よいな、今後一切栞は榊家とは関係ない。栞がどうしようと榊とは関係ない者と思え」
そして、小さく付け加える。
「・・・たとえ十九代目と結婚しようともな」
薫が丈瑠をからかう様に見て、丈瑠は目を逸らした。
「本日はこれまでとする」
丹波が締めて、家老会議は終わった。細々としたものはもう既に決まっていて、承諾のみだった。