「千明、これ、まだ持ってたのかよ」
「あったり前。こんな面白いもん、誰が消すもんか」
「う、これを見るとトラウマが・・・」
源太が額に手を当てて、よろけてみせる。
「おい、千明、まさか」
源太のその反応に、丈瑠がぎょっとした顔をして、携帯を奪おうとするのを、千明が阻止する。
「もう見られたんだから、諦めなよ、丈瑠」
千明の持ってる画像と言えば、一つしか思い付かず、丈瑠が本気で携帯を奪おうとする。
「栞、今すぐ消せ」
「丈瑠、横暴」
丈瑠と千明の攻防戦を、栞はおろおろしながら見守り、源太と彦間は笑って見ている。
その時、大きな足音が近付いてきて、恐るべき早さで流ノ介がやってきた。
「殿~~!」
こういう時は決まって、あのド派手な舞台衣装だ。さすがに化粧はしていない。
「殿、先ほど、殿のお名前でメールが。あれは何かの間違いでしょうか?」
息を切らしながら、丈瑠の前にひざまずいて訴え、画像の件は、後回しになってしまう。
「間違いじゃないぜ。丈瑠が送ったのをこの目で見た」
千明が横から頷きながら言って、そこで初めて千明と源太の存在に気付いたように流ノ介が顔を向けた。
「何だ、千明、源太、来てたのか。一体どういう事だ。さてはお前達の仕業だな?」
あらぬ疑いを掛けられ、千明と源太が大げさに否定する。
「流ノ介、栞殿の携帯を何故知っておる」
彦間が本題に入り、流ノ介が固まった。丈瑠から、もう連絡するなとメールが来て、慌てて駆け出してきたが、よく思い返してみると、送信元は栞の携帯だった。栞にもう連絡はするなという事かと思い当たる。
「殿、違います。確かにメールはしましたが、私はただ、栞さんが屋敷に慣れないのではないかと思って、いろいろとアドバイスをですね」
眉間に皺の寄っている丈瑠に、必死に言い訳する流ノ介に彦間が手を出し、流ノ介が渋々ショドウフォンを取り出した。
黒子が受け取ると、彦間の指示で、栞の番号も履歴も、全て削除する。
「栞殿に用事がある時は、わしを介せ。不都合はないだろう」
「あーあ、消しちゃったよ。流ノ介が余計なことするから、俺らまで同じ扱いじゃんか」
千明が腐り、黒子から返された携帯を見つめて、流ノ介が項垂れた。
「それがいいな。この二人に番号教えて、いい事はないぞ」
「何だよ。源ちゃんだって一緒だろ?」
「はっはっは。俺はもう栞ちゃんに信用されてるからな。お前等とは違うんだね、これが」
「お前はどれだけ屋敷に入り浸ってるんだ、源太」
胸を張った源太に、流ノ介が思いきり呆れた顔になった。
「でも栞ちゃんさ、屋敷に来る前はそんなんでどうしてたの?」
栞のあまりの世間知らずぶりに、いい加減千明も心配になって訊く。
「学校へ行く時は、運転手とボディガードが」
当然のことのように言ってしまう栞に、千明が唖然となった。
「何?栞ちゃんって、やっぱ超セレブな訳?うーわ。そんなん丈瑠じゃないと相手できないじゃん」
「当たり前だ。お前がちょっかい出すな」
流ノ介が追い払う仕草をする。
「ちょっかいなんか出さないけどさ、そだ、丈瑠、指輪とかあげないの?」
突然聞かれて、丈瑠の眉間に皺が寄った。
「千明、たまにはいい事を言う。殿、婚約されたのなら、指輪は贈るべきです」
「お、そいつはいいなあ、丈ちゃん、そうしな」
流ノ介と源太まで同意して、彦間は何故かにやにや笑って、丈瑠を見た。
「じゃあ、今からみんなで買いに行っちゃう?」
千明が、腕を取ろうとするのを、丈瑠が邪険に振り払った。
「いい」
「えー、何でだよ、栞ちゃんも指輪欲しいでしょ」
聞かれた栞が盗み見る様に丈瑠を見た。指輪は欲しいけど、頷くと丈瑠が困るのは分かっていて、結局栞は首を横に振って、三人ともそれ以上は無理強いできない。
丈瑠はそんな栞に小さくため息をついた。
流ノ介は、稽古を抜けて走ってきたらしく、また急いで帰り、千明と源太もひとしきり騒ぐと帰っていった。
つづく
次へ(ごめんなさい、限定にリンク貼るのは大変で。その3へはテーマ一覧からお進みください)
お、核心出てきました。「紅差し指」は、薬指です。
「名無し指」の方にしたかったのですが、ナナシみたいで、やめました。
その3ちょっと甘くしたので、限定にしてしまいました。