第12幕の4 | 百火繚乱

百火繚乱

特撮大好きです。変身する前も後も、変身した中の人も、声の人も好きです。
ゴーカイジャー、シンケンジャー、仮面ライダー中心かな。
シンケンジャーの小説、殿様で恋愛小説も書いてます。

夜、栞はさすがに疲れて、縁側で座っていた。彦間の勉強も今日は免除してもらった。
「栞はいつもここにいるな」
丈瑠が来て隣に座り、栞が小さく微笑んだ。
「ジイに、栞の後見人になる様に言われた」
丈瑠が栞を探して来たのは、そのせいらしかった。
「勝手に頼んでしまってごめんなさい」
栞が謝ってから、丈瑠を見つめる。彦間の言った事が気にかかった。丈瑠が強いとはどういう意味だろう。
「俺のせいで、家に帰れなくなったのか?」
栞が困った様に微笑む。
「私は、初めからあの家とはうまくいっていませんでしたから」
「ここでの行儀見習いが終わったら、どうするつもりだ?」
栞が、丈瑠の言いたい事を探る様に、じっと見つめる。丈瑠は庭を見たままだ。
「家に帰れないのなら、ここにいたらいい」
栞は、ぎゅっと苦しくなった胸を押さえた。口を開けば涙が零れそうで、唇を噛んでじっと俯く。
「今日、栞がいなくて退屈だった。栞がそばにいる事が、いつの間にか普通になってた」
もう無理だった。俯いたままの栞の目から、涙が落ちた。
 丈瑠が庭から栞に目を戻し、栞は涙を見られない様に顔を背けた。
「何故泣く?」
隠したのに、丈瑠に気付かれて、栞は何も言えずに唇を噛む。丈瑠が栞に手を伸ばし掛けたが、その手は栞に触れる前に、握りしめて下ろされた。
丈瑠には、ここにいろと言った栞が、こんなに悲しそうに泣く理由が、無理なことだと諦めているからか、そうではないのか判断が付かなくて、ただ俯いたままの栞を見つめる。
 そのまま顔を上げない栞に、掛ける言葉も見つからなくて、丈瑠はため息を吐くと立ち上がった。
 そして、そこから一歩踏み出した時、栞にシャツの裾を掴まれて、驚いて振り返る。
 栞は慌てて手を離し、唇を噛んで目を逸らした。
「すみません、何でもない、です」
栞が急いで涙を拭く。
「栞?」
 栞が居たたまれなくて立ち上がり、一礼して立ち去ろうとした時、丈瑠が栞の手首を掴んで、栞が身を竦めて立ち止まる。
 どんな顔をして振り返ればいいか分からず、そのまま後ろを向いたままの栞の腕を、丈瑠は引き寄せると強く抱きしめた。
 栞は一瞬何が起こったか分からなくて、息が止まる。そして、丈瑠の腕の中にいる事を理解した。
 苦しかった。栞の考えていることは、ただ丈瑠を守ること。それが初めはそのまま栞の望みだった。でも、ここにいるうちに変わった。栞が一番望むのは、こうやって丈瑠の腕の中にいること。そしてそれを丈瑠も許してくれるのに、栞にはもう手の届かない物なのだ。栞は、丈瑠のシャツをぎゅっと掴んで、声を殺して泣いた。
「もう、泣くな。俺が栞を守る」
栞を強く抱きしめて、丈瑠が耳元に囁いた。


 丈瑠の想いを聞いても、栞の決意は変わらず、ただ互いを守りたいと、そればかりを願う、丈瑠と栞でありました。殿様御家騒動恋模様、第十二幕、まずはこれまで。




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