第18幕の9 | 百火繚乱

百火繚乱

特撮大好きです。変身する前も後も、変身した中の人も、声の人も好きです。
ゴーカイジャー、シンケンジャー、仮面ライダー中心かな。
シンケンジャーの小説、殿様で恋愛小説も書いてます。

 翌日は朝からモヂカラの稽古の日だった。栞が一人先に座敷で待っていると、丈瑠が入ってくる。
「おはようございます。丈瑠様」
「ああ」
丈瑠が座るのを、栞がじっと見ている。
「何だ?」
「寝癖が・・」
くすくす笑い出し、丈瑠が面倒臭そうに指で髪を梳いたが、全然直らない。
「天気が悪いといつもこうだ」
その日はあいにく雨だった。外を見なくても分かる。
「そこじゃなくて・・・」
栞が手を伸ばし掛けて、少しためらってから立ち上がる。丈瑠は一段高い畳に座っているので、栞が立ち上がると栞の方が少し高くなり、栞がそっと丈瑠の跳ねた髪を指で梳いた。
「私も、雨の日は大変」
丈瑠が目の前の栞の髪を見る。栞の髪はふわふわのカールだ。今朝は緩く編んである。
「一度短くしたら、あまりの大変さに、それからはずっと伸ばしてます」
丈瑠の髪は、ひどい跳ねじゃなかったので何とか収まる。
「後で、お湯で押さえれば大丈夫」
そう言って、栞が戻ろうとした時、丈瑠が目の前に立っていた栞の腰に手を回して抱きしめた。栞が驚いて身を竦める。
「丈瑠様?」
栞が困ったように、丈瑠を押し戻そうとするが、いつもと逆の体勢なので、力が入らない。
丈瑠の頭が、ちょうど栞の胸の辺りに来る。栞は自分の心臓がものすごく早くなっている事を自分でも分かっていて、赤くなった。
「ちゃんとお稽古しないと」
栞が小さく言うが、丈瑠は腕を緩めない。
「あの時と同じだな」
丈瑠とこの体勢で向き合うのは、丈瑠が眠っていたあの時だけだ。
「休んでいたら、抱きしめられて起きられなくなった」
丈瑠の言葉に栞がはっとする。
「・・・起きて、たの?」
責めるように丈瑠を見て、栞が押し戻そうとする手に力を入れるが、丈瑠は離してくれない。
 しばらく丈瑠の手から逃れようとしていた栞が、昨夜の彦間の言葉を思い出して手を止めた。自分の気持ちを伝えて、丈瑠にも尋ねたらいいと。
 肩に置いていた手で、丈瑠のシャツをぎゅっと掴む。
「・・・・あの時は、嫉妬したんです。丈瑠様とことはさんが、とても仲が良さそうだったから」
あの時様子がおかしかった理由を聞かされて、丈瑠が顔を上げる。栞は丈瑠が近すぎて、目を合わせられずに唇を噛んだ。それから、決めた様に丈瑠をじっと見つめる。
「・・・丈瑠様を独り占めしたかった。今も、ずっとそう思ってる。・・・丈瑠様は、私をどう思っているの?」
揺れる瞳で丈瑠をじっと見つめ、丈瑠もその目をじっと見つめ返して、小さく微笑んだ。


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