食べたことがないものなのに味を知っている気がする。もしくは記憶の中で感じたことがあるという経験の持ち主はいないだろうか?

桃太郎の吉備団子なんて典型的なそれである。

我々は幼少期、桃太郎の物語を語り聞かされるごとにその食べたことのない幻の味覚を味わったはずだ。


 宮崎駿の作品に出てくる食べ物はいつも非常に美味しそうだ。彼の作品にはいつも魅力的なご飯が描かれる。これを世間ではジブリ飯というらしい。カリオストロの城のミートパスタ、トトロに出てくるさつきの作ったお弁当、天空の城ラピュタのパズーの目玉焼き乗せ食パン。挙げればキリがないがとにかく美味しそうなのは間違いがない。ジブリ映画を見るたびに生唾を飲み込む。私はそんな食いしん坊な子供だった。


 それは奇妙な話だと思う。我々は食べたことがないのにその幻の味を知っている気がするのだ。これは人間の空想の力の凄さだと思う。

物語に出てくる食べ物の味すら我々は想像できるのだ。


 しかし実際に食べてみると現実はつまらないもので、こんなものかと私は何度か失望したことがある。空想した味と実際の味わいは当然ではあるが全く違うのだ。


 私はパズーの目玉焼きトーストをはじめて食べたとき、こんなものかと落胆した記憶がある。

ジブリ飯の再現レシピなんで料理本があるが、野暮なことをするものだと思う。

作中に出てくる、憧れたあの味を再現したい。その気持ちは分かるが空想を現実にしてしまうとかなり呆気ないものでこんなものかという落胆があるのみなのだ。


 夢は夢のままにしておいた方がいいこともあり。現実とは呆気なくつまらないことが多いのだから。