昨日の夜、私は本当に美しいものをみた。だからそれを言葉に例えようとし、困ってしまった。
本当に美しいもの、それを例える言葉を知らなかったからだ。

 執筆業についているベテランのプロなら、美しい例えを2、3思いつくのかもしれない。でも私は駄目だ。どう表現しても言葉にしてみるとありきたりな、陳腐な表現にしかならない。

 私は30年間生きてきて本当に美しいものを見たことがない訳ではない。秋の夕日、湧き出る泉、ルノワールの絵、真冬の流星群、雪山で見た一面の雪原、さっと思い出せるだけでもこれだけある。

 しかし言葉にしろと言われると困ってしまう。解けない数学の問題にぶつかったように指が動かなくなる。

 本当に美しいものを例える言葉は本当に美しいに違いない。

 乙女ゲームだが、死神と少女というものがある。それは記憶のない死神と旅人が本当に美しい言葉、それを探して旅をするというゲームだ。
結局、言葉が見つかったかはゲームを実際にして確かめて欲しいのだが、このゲームも私にとって本当に美しいものの一つだ。
 
 それにしても昨日見たものはとても美しかった。言葉にできないほど綺麗だったのだ。
美しさを例える言葉を知らない私は、惨めに地を這いずりながら泥の中を一生探し続けるのかもしれない。

 本当に美しい言葉を。