ある身の上相談記事の中に、こんな英文が出ていた:

 She asked her best friend to be her maid of honor, and then asked my brother to be best man because her fiance didn’t have anybody who would do it.

 (母は花嫁介添え人を自分の親友に頼んで、それから新郎の側には介添え人をする者がいないので、わたしの弟に頼みました

best man という語は面白いと思った。

花嫁の介添えをする女性がいるのは知っていたが、花婿の側にも同じような存在がいるものらしい。

辞書を見ると

 a male friend or relation of the bridegroom who stands with him and helps him during a marriage ceremony

 (花婿の男性の友人か親類の者で、結婚式の行われている間、花婿のそばにいて世話をする係り

とあった (→ Cambridge Dictionary [best man])。

文脈がなければ、「最高の男」などと読んでしまいそう。


◎ 引用した英文の出典 (New York Post, 2024-09-19)
  Dear Abby: My brother molested me as a child — should I tell his fiancee?
  → https://nypost.com/2024/09/19/lifestyle/dear-abby-my-brother-molested-me-as-a-child-should-i-tell-his-fiancee/



相談者の母親が結婚式を挙げようとしているのだが、弟には介添え人の声がかかったのに自分にはかからなかった。

そもそも、相談者は、その結婚に必ずしも好感を抱いていないのである (母親の年齢は84歳で、新郎は83歳)。

自分が文句を言ったら、介添え人を頼まれた。何だか面白くない、といった相談。

人間の仕事は AI によって奪われてしまうのではないか、という記事の中に、こんな英文があった:

 The experts issue their warnings with a caveat: there are still things AI isn’t capable of – tasks that involve distinctly human qualities, like emotional intelligence and outside-the-box thinking.

 (専門家たちは、悲観的なことだけを言ってるわけではない。相手の気持ちを察したり、常識にとらわれない見方をするといったような、人間ならではの仕事については、AI にはまだそこまでの能力はないという

outside the box という表現が面白い。辞書には

 to explore ideas that are creative and unusual and that are not limited or controlled by rules or tradition

 (創造的で独特な、そして規則や伝統に制限されたり支配されたりしないアイデアを求める

とある (→ Merriam-Webster [think outside the box])。

box というのは、箱のことではなくて、下のような図のこと。

 ●  ●  ●

 ●  ●  ●

 ●  ●  ●

これらの黒丸のすべてを通る一筆書きの線を描くという、おなじみのもの。

その領域の外にまで線を伸ばす必要があるのだが、その領域内でなければならないものと勝手に思い込んでしまうと答えが得られない。

外に出ればいいじゃないかという発想ということで outside the box と呼ばれる。


◎ 引用した英文の出典 (BBC, 2023-07-13)
  The jobs AI won’t take yet
  → https://www.bbc.com/worklife/article/20230507-the-jobs-ai-wont-take-yet

M. L. ステイリー 作 「盗まれた心」(14)
The Stolen Mind By M. L. Staley


*** [盗まれた心 (13)] のつづき ***


キーンは階段の上で体を縮めるようにして後ろに控えてはいるが、それが見せかけに過ぎないのだということを、暴露してやりたい気がした。

ドアが打ち破られてバリバリという音とともに内側に開き、もうもうと立ち昇る埃を突っ切って2人の刑事が突入した。

「いたぞ!」 という誰かの声。

キーン・クレイソンは部屋に飛び込むと、いくつもの家具の間に、布張りの椅子にしっかりと縛り付けられて押し込まれている男に向かって 「フィル、大丈夫か」 と呼びかけた。

しっかりと猿ぐつわをかまされていたので返事はなく、胸の上の綱をバーク刑事が切断すると、前のめりに頽れた。長椅子に横たわり、しきりに手足をマッサージしていたが、やがて血流が戻って、具合が良くなったようだ。

フィリップはがばっと身を起こすと、刑事たちを押しのけた。

「いま、何時です?」 と、心配そうな声を出す。

「1時だよ」 キーンはフィリップの肩を親し気に叩いてすぐに答えたが、その心の内を知るクエストは、忌々しい思いでいっぱいだ。

「よかった。間に合って良かったよ。一体、どうして ・・・ 体は大丈夫か?」

「ああ」 とフィリップがおざなりな声で答えた、「筋肉が強張ってるだけだ。明日までには良くなる」

「体に問題がないのなら、ここにどうやって連れて来られたのか、簡単な説明を聞きたい」 とバーク刑事が言った。「こんな目にあわされた理由が分かりますか? 連中の中に見覚えのある者はいませんでしたか?」


   *   *   *   *   *
STEM という語があるそうだ。

植物の「茎」を意味する stem のことではない。

Science, Technology, Engineering, Mathematics (科学、技術、エンジニアリング、数学)の頭文字を取った略語。

いわゆる「理数系」である。

今年の10月8日は、国際的に、そういった分野への女性の進出を支援する意図を込めた Ada Lovelace Day であるそうだ。

その Ada という名前は、私でも知らぬではない。18世紀ロマン派の詩人バイロンの娘。

父親は、生まれてきたのが娘であったことに失望したようではあるが、彼女は、科学技術の歴史に名を刻むことになる。

詳しいことは省くが、なかなか興味深い生涯を送った女性。

その彼女の名を冠したのだが、運営する組織は、資金難にあえいで、存続もむずかしい状況にあるようだ。


◎ 記事 (BBC, 2024-09-15)
  Women in tech groups 'can’t run on inspiration alone'
  → https://www.bbc.com/news/articles/c7858w2yj75o


旅行に出かけるにあたって、バッグやスーツケースの類に、これでもかと詰め込む人がいるという。

日本ではどうなのかは知らないが、米国の場合だと、飛行機に搭乗するにあたって、そういう荷物には手数料が課されるらしい。

実際に現地で必要ないものまで詰め込んでしまうという無駄についての記事を見たら、こんな英文が出ていた:

 This summer, we've also had a few high-profile baggage altercations, including a Texas mom who was booted off a United Airlines flight because she was carrying too much luggage.

 (今年の夏、テキサス州の婦人が、手荷物の量があまりに多過ぎるという理由で、ユナイテッド航空機への搭乗を拒否されるということがあったし 他にも手荷物のことでの悶着がいくつかあった

この boot off という表現は面白い。辞書を見ると

 to force someone to leave a place, job, or organization, especially because they have done something wrong

 (好ましくないという理由で、場所、仕事、組織から離れることを強制される

とある (→ Longman [boot somebody ↔ out])。

boot は ブーツ つまり 長靴 みたいなものだから、それで蹴とばして追い出すイメージを抱いてしまう。実際にそうするわけではなくても、イメージとしてはかなり強烈だ。

kick out みたいなものか。


◎ 引用した英文の出典 (USA Today, 2024-09-06)
  You're carrying too much luggage. Here's how to lighten up.
  → https://www.usatoday.com/story/travel/columnist/2024/09/06/packing-tips/74920437007/