花房さんこんにちは。


こんなことが、自分にも起こりうるんだなあとどこか他人事に想いながら、その現場におりました。

よくある話・・・・そう、よくあることなんでしょうね、私の話を聴きながら、うん、うんとうなずいてくれている花房さんは当然のように驚きもせず、花房さんだからかなあとか、よくある話だからかなあとか想いながらの告白でしたね。


こうやって思い返すと、私はいつもそのときそのときの、目の前に起こっている出来事と違うことをぼんやり考えながら、その場をやりすごして生きてきたように思います。


48のとき、主人が脳梗塞で倒れてそのまま入院、亡くなったとき・・・

子供は独立していたので、そのあとは一人になりましたが、主人が倒れたときも、主人の育てていた庭の植物たちのことを考えていました。

私は興味がないので、一緒に草をむしったりするのがつまらなかったなあとか、花の名前を言われてもなかなかどれがなんだか覚えられなくて、それでも女かと笑われたこととが・・・

亡くなって、お葬式を出すときにも別のことを考えていました。

息子の中学生時代の彼女のことです。

まじめそうに挨拶してくれて、人懐っこい子で私は好きでした。息子の部屋で一緒にたばこを吸っていたとき、わが子と同じくらいきつくしかってしまって、泣かせてしまったことや、

その彼女が私に、おばちゃん、私妊娠したかも・・・と泣きそうな顔で相談してきた日のこと、結局それが間違いで、息子と彼女がけんかになって、仲裁したこと。


主人のお葬式の最中、そんなことを考えていました。


覚えているものですね、ずっと前にこの場面で、こんなことを想っていたなどということを。


60に手が届きそうな頃、俳句を始めました。

そこで知り合った46歳の既婚の男性と、いつしか恋の仲になり、奥様の目を盗んでは逢瀬を重ねました。

それが私の家で一緒にいるところを、奥様に乗り込まれてしまいましてね。

男のひとって、ああいうとき私のほうをひとっつもかばってはくれませんね。

無理もないですか、私は恋だと思ったものを、彼にしてみればただの遊び、会えば寝る、食事も出る、母親のようで、きっと居心地がよかっただけなんだろうなあとうぬぼれました。


男を見る目もなかったんでしょうね。

奥様をなだめるためとはいえ、ひどい言葉で私を貶めて・・・

女性としてはかなり傷付きます。でも、私は途中からまた違うことを想い、その時を過ごしましたよ。


主人が亡くなって、お庭の植物は松以外はすべて処分してしまった。

ええ、松は大きくて、殺せなかったの。

あれは生き物みたいで、夜とか夕方など、ちょっと怖いでしょう?

さわると、脂(やに)が脂(あぶら)みたいで・・・漢字まで同じでしょう。人間と、同じ。


主人が亡くなる前も、ずっとセックスしてなかったの。だから、あの男性とセックスした時まさに20年ぶり?それ以上かしら。とにかくものすごく久しぶりのセックスだったわけです。

おなか、痛くなりました。

ちっとも優しくなかったけれど、あれがなくなったらさみしいものですね。はっきりさみしいと感じました。


孫も、ときどき遊びに来てくれますし、息子のお嫁さんも人情あるかたで、はたからみたら不満など贅沢だといわれてしまうのでしょうけれど、

他人さまのご主人に手を出して・・・

還暦のこの歳でですよ。笑っちゃいますよね。


花房さん。




女は、いつまで女でいなくちゃダメでしょうか。

私は、ときどき夢に見るんですよ。

お庭の、主人の松が男性に化けて、私の胸やお尻をまさぐりにくるのです。

生理もとっくに上がっているというのに。

嫌ですね。







その男性ですか?

まさか私にこんなことが起こるなんて、信じられませんね。あの出来事の後、亡くなりました。私は、二つの罪を犯したのです。






















(おばあちゃんの松を、私は一度も見たことがない。花房灯子。)