こんにちは。渡辺真里子です。

11月24日東京・学士会館で行われた日本国際薬膳師会設立15周年記念式典。



おかげさまで盛会のうちに終了しました。

私は司会進行の担当で、式典の間ずっと舞台横から客席の方を見ていましたが、
ほぼ満席の中、みなさんのとても真剣な眼差しと熱気がすばらしく、
それに後押しされながらなんとか最後までお役目を果たすことができました。


そしてこの日のメインイベントは日・中それぞれからお越しのお二人の先生による特別講演会。

今回はその内容をまとめてご紹介しますね。


まずお一人目は、中国からお越しの高思華先生。



元北京中医薬大学学長で、現在、「国際薬膳師」資格認定元の中国薬膳研究会副会長、そして我々日本国際薬膳師会の最高顧問もお勤めです。

今回は「薬膳と健康長寿」というテーマで通訳を交え一時間近く熱のこもったお話をいただきました。

お話の内容は、前半が薬膳の歴史、後半が薬膳を日常に応用するための原則という二部形式。

歴史の方は、薬膳を学び出した頃に教科書に出て来た書名や有名な医家の名前がバンバン出で来て、
「おお、そうだったよねー」といううなずきの連続だったのですが、

改めて今回のお話から(もうお一人の先生のお話とも共通するのですが)
昔は健康維持だけでなく病気治療にも「食」がとても重視されていたのだなあとしみじみ感じました。

例えば中国で初めて医師の制度が定められた時に「食医」という王族の食事まで管理する医師が最も地位が高かったとか

唐の時代に出版された「備急千金要方」という医学事典の「食治篇」の中に「病気の治療をするときはまず食事療法から始め、それでも治らない時に薬を用いる」という一文があったり。

でも、それはよく考えてみれば当然のことで。

昔は誰もが気軽に医療を受けられるわけではなかったですよね。

そして、現代のように手術とかピンポイントで効かせる薬や放射線など、強力で即効性のある治療法というものも発達していなかったわけです。

だからまずは病気にならないこと、予防することが大事だし、
かかってしまったら口に入れるものすべてを治療に役立てよう、という考えが強かったのではないかと思います。

振り返って、

今の私たちって、病気はかかってしまったらその時になんとかすればいい、薬を飲んだりお医者さんに頼ればいい、と思っているところはないでしょうか?

こんな時代だからこそ、薬膳も含めた養生思想がまた少しずつ注目されるようになったのではないかと思います。

そして後半の応用原則のお話のところで、高先生から繰り返し聞かれたのが、

「薬膳はそもそも偏りがあるもの。
 だから正しく選択すれば効果があるが
 間違って選択すると逆効果になってしまう。」

という言葉でした。

そうなんですよね、薬膳っていくら素晴らしいレシピや素材であっても、
やはり食べる人であったり、季節であったり、食べる地域であったり、あと体質や病気のタイプによって合うもの、合わないものがあります。

私が「つばめ」で理論にこだわってお伝えしているのは、まさしくこの高先生の言われていることを強く感じているからです。

正しく選択して薬膳の恩恵を受ける人がどんどん増えるように、
しっかりと理論に基づいて薬膳レシピを組み立てられる人、薬膳料理を提供できる人が増えていってほしいな、と願っています。





そして講演のお二人目は、東北大学からお越しいただいた、関隆志先生。



東北大学のご出身で内科医として長く漢方での診療を行われている先生で、もともとは鍼灸を組み合わせた開業医をなさっていたのだそうです。

現在は東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターに籍を置くほかに、宮城県涌谷町の国民保険病院の技術参事もお勤めです。

この日は「人生100年 今こそ薬膳養生」をテーマに、
世界各地の医学では「食養生」をどのように捉えているか、
そして、関先生ご自身が活動として薬膳とどう関わっておられるか、ということをお話しくださいました。

世界の医学というと、大きく分けて西洋医学と東洋医学に分かれるわけで、

イメージ的には西洋医学は機械を使って画像診断したり、手術したり化学合成された薬を使ったり、といかにも現代のテクノロジーの最先端という感じがしますよね。

その一方で東洋医学は食だったり、自然薬だったり、鍼灸など身体への刺激だったり、とちょっと素朴な感じがします。

でも歴史を遡ってみると、実は同じようなことを大切にしていました。

それは「食」。

例えば、西洋医学のルーツであるヒポクラテス医学では、治療の根幹は「食餌法」であり、それに運動や水浴びを組み合わせた治療が行われていたのだそうです。

また、東洋の中でも南インドのアーユルヴェーダ医学には「台所が薬局」という考え方があります。

すなわち、食事そのものが薬という考え方だったのですね。

そして中医学には薬膳があります。

今ではある意味真逆のアプローチというか、イメージのある西洋医学と東洋医学ですが、
もともとは共通して「食」を治療の一環と考えていた、というのは、ちょっと目からウロコが落ちる感じがしました。

関先生からはこのほかに、現在のご自身の活動の中で薬膳と関わるもののご紹介もありました。

私が興味を持ったのは、病院の栄養士さんを集めて行われている薬膳の研究会。

今では病院食で季節に合わせた薬膳を提供することを検討するレベルにまでなっているのだそうです。

そしてこれから力を入れたいのは「子供に薬膳を伝えること」。

たしかに、子供の頃から薬膳の考えが身についていれば、きっと養生に対する意識も高まるだろうし、何よりちょっとした不調なら自分でお手当てできてしまいます。

今、私たちが薬膳を伝えようとしても、残念ながらまだまだ薬膳自体広く知られていない現実があります。

だから「薬膳とはどういうものか」というそもそも論から始めないといけないジレンマが日々の活動について回ります。

でも、これから「薬膳を知る子供」が増えれば、薬膳がきっと食事療法のひとつのスタンダードになるだろうし、養生思想も広まることでしょう。

すごく将来が楽しみ!ですよね。



今回、先生方のお話を聞いて、まだまだ薬膳を伝える者としてはやらなければいけないことがたくさんあるなあ、と感じました。

派手なことはできないけど、コツコツと長く発信し続けていきたい。

改めてそんなことを思った講演会でした。

私はこの日のお話で、これからも仕事を続けていくことにとても勇気付けられたのですけれど、
これを読んでくださった、薬膳に関わる活動をされている人にはどう届いたでしょうか?

ほんのちょっとでも後押しになれたらうれしいな、と思います。




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