これは友人が過去に彼女とランチをした時の話である。

彼はどちらかというと庶民派であり、食事にはあまりお金を掛けたくないタイプだ。回転寿司では100円皿、焼肉はチェーン店の食べ放題がお決まりである。


とある日のことだった。彼女が「鰻を食べに行きたい。」と言ってきたらしい。彼は「いいよ。」と返事をしたが、内心ではあまり乗り気ではなかったらしい。

店に到着するや否や蒲焼の香ばしい匂いが、店外に広がっており、店内は沢山のお客さんで溢れている。1時間ほどしてようやく名前が呼ばれた。彼女の顔には笑が溢れていた。一方、彼はというと浮かない表情をしていた。


席に着き、彼女は一言。「私この1番高い特上にするね!」。彼は一言、「あーじゃあおれ1番安いのでええわー(どうせ同じ鰻で枚数が多いくらいなら少なくてええわ) 」。


その時、空気が凄まじく凍りついた。体感時間としては、とうに5分は経過していたであろう。



これ以来、鰻を食べに誘われることは無くなったらしい。お財布は嬉しいが、複雑だろう。

交際において、価値観がいかに重要なのか気づく良いきっかけになっただろう。


100円寿司チェーン焼肉男の悪あがきはこれからも続いてゆくだろう。