8。音楽 徒歩人生  それは淡い..

それまでの私の ピアノ人生というのは「うちの子だからピアノを弾かなきゃいけないの 」と 文字通り親に言われてやってきたものでした。 ピアノが嫌いかと言われればそうではないけれど 好きかと言われれば うーん という感じ。 弾いてみたい曲はまだ弾けないか 譜読みも禁止され、練習する曲は大嫌いなハノン、 バッハ、チェルニー、 古典 そして ちょっとのロマン派 。 それも誰も知らないようなマイナー系の渋い曲。
けれど日常的に家に流れていた曲はなかなか楽しんで聴いていました。毎朝のFM 「バロック音楽の楽しみ 」日曜日には ブラームスかベートーベンのシンフォニーのレコード、 アルヒーフのバッハ大全集が家に届いた頃には自分から色々探して 他の楽器の曲も聞いてみようというクラシックへの興味と好みははっきりしてきていました。 中でも 東芝EMIの ピアノ曲全集 では(前にも書いたスペイン ものも良かったですが)特にフランス系にぎゅっと心を惹かれました。 録音したピアニストは主に4人、ドビュッシーとラヴェルは フランソワ、サティ、サン=サーンスは チッコリーニ、フォーレはコラール、メシアンはベロフでした。 私は響きの不思議さ 新しさ 色彩の豊かさに驚き、 フランソワのラヴェルに異世界への 強い憧れを覚え、 チッコリーニのサンサーンスの協奏曲に 圧倒的な ヴィルトゥオジテを感じ、 香り高い花びらの 手触りにも似た恥じらいに制御されつつも時に情熱に翻弄されるフォーレに不思議と共感を覚えたのでした。 そしてその弾き手であったピアニスト、当時20才前半であったまさに王子様のようなコラールのジャケット写真に。 この素敵なピアニストに会ってみたい、コンサートに行ってみたい、
そういう気持ちからいつしか私はピアノを眺めるようになっていました。