35. ソソッカ王の問い

あのかつての 恥ずかしがりやで あわてんぼうのソソッカが こんな堂々たるそして思慮と愛情に満ちた言葉を彼の全国民に発しているとはとても信じられなかった。 私とペナポテは仰天して顔を見合わせた。 そして二人ともほぼ同時に言った「ソソッカに会いに行こう!」

彼の星はとても緑豊かな広大な星で 海のような水の大きな表面積はないがその代わりに 大河がいくつもあった。 宇宙から見ると  緑の宝石に水色の美しい龍が幾重にも護っているように見えた。着陸は非常にスムーズ、というのはソソッカ星の方で我々の姿を認めぜひともご来訪を、ささやかながらペナポテ大使の宇宙任務への備えのご協力をさせていただきたい、という打診があったのだ。

「うわー、 なんかおおげさに歓待されちゃったわね、ココ」

ほんと。ちょっとソソッカに 挨拶するだけでいいんだけどね」

岩場だらけのホップス星から来た私にはこの広大な緑の星が 鮮やかな大きな生き物のように見えた。 緑の主体をなす巨大な樹木は 地面に生えているが ここに暮らす人々は重力から自由であるようで、飛んだり跳ねたり縦横無尽に空中を移動でき それこそ木のてっぺんの果物まで自由に取って食べることができる。 遊んでいるのかそれとも仕事なのか、しかし人々一様に楽しげに見える。 その珍しさに見惚れながらガラスばりの謁見の間に入っていくと、 先ほどの放送を終えた 国王が書面を手に大臣と話し込んでいた。 しかし私たちの到着を告げる 声に振り返った国王は

「ああっ。ココさん、ペ、ペナポテさん!ど、どうしてここに?」と 先ほどの威厳はどこへやら、 途端に慌てて 持っていた書類を全部バラバラっと地面に落としてしまった。

私たちは吹き出して大笑いしたいにも、彼は国民の尊厳を集める国王、 いくらクラスメイトだからといって臣下の前でふざけるわけにはいかない。傍らの大臣はポカンとしている。

だがそこはペナポテ、 凄腕の大使の腕の見せ所

見事な龍の住まう麗しい緑の星のソソッカ国王陛下、 おなつかしゅうございます。 拝謁至極にございます。 私どもは地球 滞在中である アルバロ王女ココと共に 任務を帯びて移動中のおり、 偶然にも あの名高いソソッカ星の 近くを通ったのでございます。 そして一言ご挨拶を申し上げたく お目通りを願ったのでございます」

昔のソソッカとまったく変わりない様子を見て必死で笑いを堪えながらもこれを言ってのけたのだ。 私はと言えば笑いをこらえるのに口を押さえていたが体が震えるので、感激のあまり咽び泣いているフリをしなければならなかった。

ソソッカは 身長と 人の良さそうな顔はそのまま。おじさんになって多少肉付きが良くなった。 けれども少年の身で載冠し大変な試練を乗り越えて国をおさめてきたと納得させるに相応しい重みが加わり貫禄があった。 そして何よりまず誠実さと真剣さが見て取れたのは笑顔にも髄伴する眉間の皺だろうか?けれども予期せぬ私たちの登場で彼は すっかり慌てだし、 ぺナポテの挨拶にもしどろもどろ、 それを見かねたお付きの者が その晩の国王のプライベートな晩餐に私たちを招待してくれることでその場を収めた。

「でもどうしようペナポテ私ドレスなんて持ってきてない」すると彼女は

「あらココ、すっかり忘れたの?地球での生活はさぞかし不便だったでしょうね 。こうやって私たちはすぐに装いを換えてきたんじゃないの」と私の姿を エレガントなフォーマルのドレスに換えてくれた。

約束の時間に 王宮を訪れると先ほどディナーに招待してくれたお付きの長官が 多くの 広間や廊下を 通って 私たちを案内してくれながらこう語った。

お二方のことは国王様がまた王子でいらっしゃった頃から私どももよく存じ上げております。 学校では大変に良くして頂いたそうで母后様が 授業参観の時に お二方のご両親様とよくご歓談されたということを聞き及んでおります。 ココ王女様のアルバロ星、ペナポテ王女様の星とは 我が星のとても大切な友好国でございました。 あのような混乱がなければ、 と申しあげたところで致し方ございませんがソソッカ国王は実によく我が星のために尽力して来られ御家族を持つ暇もなく国政に打ち込んでこられたお姿が尊くも、また一方で国王を一人にすべての責任を負わせてしまったこと、 私ども臣下の遺憾と致すところでございまして

次の瞬間、美しく 支度の整えられた王の 食卓に私達は案内された