ペナポテ 34.
私は再びペナポテの 超高級スーパー宇宙船の中にいた。
「ココとこうして旅行が出来るなんて思いもしなかったわ。とっても楽しい。だけれど地球に残してきたあなたの体の生存期間は地球でいうあと60日も残されていないの。その間に再び設定しなおさなければ自動的に望むと望まざるとにかかわらず宇宙に戻ってくることになるの。地球でのココの命は終わってしまうのよ。 だから先を急ぎましょう」
そうだった 今はあの懐かしい私のベッドの上で仮死状態のようにスヤスヤ眠っている私。
「 あと何日あるの?」
「 あら意外とゆっくりだわ。まだ 1日も経ってない」
「じゃあ、まだまだ平気ね」
私はほっとして 窓から見える宇宙空間を眺めた。
「 あらあれは何?」
「 えっと待ってね」とナビを見るやペナポテはケラケラ笑った
「やだー、ソソッカの星じゃないの。 覚えてる?いつも私たちの前の席で消しゴムや鉛筆を 机から落としてた子」
「え~」
「 あの子は今はなかなかの名君らしいのよ。 国民からとても慕われてるらしいの。 住んでみたい政情の安定した星ナンバーワンらしいわ 。そうだソソッカ国営放送がここでも受信できるから見てみよう」
私たちはワクワクしながら 宇宙船の壁に投影された画面を見た。
この星では日曜日の夕方に 国王の メッセージの時間があるらしい。 恰幅が良いが紛れも無くあのソソッカ王子の面影を宿した男性がソソッカ国王として画面に映し出された。
「親愛なるソソッカ星の皆様。 今日も健やかに お過ごしになられましたでしょうか。 我々がこうして 穏やかな 日曜日の 家族とのひととき自然との 語らいの時間を持てるというのは 本当に幸せなことだと思います。 先の大戦争を我々は 大変な混乱の中一人一人が力を合わせて切り抜けてここまで復興してこられたわけです。 今日はその 終戦記念日にあたるわけですが 皆さんお一人お一人に 言葉には尽くせぬ思いがおありでしょう。 私もその一人です。 私は 戦争ということで学業半ばにして 呼び戻され 亡き父の跡継ぎとして王位を継承せざるを得ませんでした。皆さんご存知の通りです。 私はまだ 宇宙バカロレア(大学受験資格試験)すら受けていません。が宇宙王族 学校最後の日、校長先生が おっしゃった いつか卒業式を迎えましょうと言った言葉を支えにここまで生きてきました。 人というのは不思議なものです。 私にとって学校生活は 楽しくもありましたが不器用な私には勉強が大変でした。 なんで先生方はこんなに難しい課題を私達に課すのだろう? と疑問を持ちつつ勉強しテストにも悩まされていました。しかし いざ急にそういう環境を取り上げられてしまうと 厳しくとも必ず正解を教えてくださる先生、必ず回答の存在するテスト というものが無性に懐かしくなるのです。 国政には正解がない 。急に私が正解を求められる側になったのです、 17歳にして。緊急事態で 王位を継承した新国王ではあるが、私のサインひとつで 軍隊が動き多くの人命が脅かされるかもしれない、 その重みは 想像以上のものでした。 ひとつひとつの決断を迫られ どれだけ勉強しても誰に聞いても誰一人正解を持っていない。判断が 間に合わず後悔したことも 一つや二つではありませんでした。 自分の判断が間違ったために 人に苦しみを与えたのではないか と。 しかしそのうち、より 少ない苦しみを 選択することが正解だと思えばよいではないかと 思うようになりました 。 人の気持ちではなく国益や 人口の趨勢 のみでカウントするようになりいつしか私は 後悔することをやめました。私の人生では A か B どちらかを選ばなければならない ことの連続でしたから。
でも皆さん 私は決して自分に満足していません。 心のどこかで もっと違った提案ができるはずだと叫んでいるのです。 皆さんが私を支持してくださっているのはわかっています 。 本当に感謝しています皆さんの愛情があったからこそ私はここまで釣続けてこれたのです。 けれど私はもう一度学校に戻り勉強したい。王族学校の学生として 。そう、宇宙のこの星圏内は形の上では 一応の平和が保たれていますが 私達は魂を磨かなければいけない。 そうでなければまた同じような 戦争を引き起こすでしょう。それらの火種は常に心の中に種子として芽は出さずとも眠っているものです」
私たちはあっけにとられた。 あのあわてんぼうのソソッカが こんなに思慮深い、堂々たる、また 内省的な点を兼ね備えた国王に成長しているとは…!