9.
と、いうことはホストファミリーである産まれた家の家族も、権威ある先生も影響力ある人物も皆等しく広い宇宙各星からの留学生、生徒。しかも栄えある王室の王女、王子。
悩める子羊、学んでいるという立場は全く一緒、そして尊重しあわなければならない。
地球に降り立ったとき纏ったコスチュームと環境が違うだけで学びが異なるだけ。
しかも、地域や属するカテゴリで「こうあるべき」という振る舞いと中には思考様式までなかば矯正されることも。
ペナポテは言った。
「地球には先生がいないの。居たとしても生徒がそれを見つけた、と思ってそれを奉じるかどうか。流行や、ドラマや小説などに自分を当てはめよう、理想としようとする人間もいるわね。基準がないのよ。それは宇宙においてもそうだけれど」
私は「少なくとも今、私は自分のミクロな世界観のドレイであったことがわかったわ。他の人達の苦しみもきっとそうね。」
「あら、苦しみたい人も一定数居るらしいのよ。そういう感情が面白いって思うゲーム。それを知らずに選択している人もいるわ」
「でもペナポテ、私は幸せになりたいの、お父様に会いたい、アルバロにも帰りたい。だけれどその前にこの地球で幸せに楽しくいたいのよ。苦しんで、傷ついて流した涙で大地を濡らしたくない。地球を悲しませたくない。美しい軌道に載り、喜んでクルクル廻る自転のワルツを踊って欲しいのよ」
「あら、ココ。あなたがさっき自然にうっとりとしていた時、地球が微笑んでいたわ。それを続ければ良いのよ」
ペナポテは意外に普通の事を言った。設定、設定と言っていたからもっと特別な何かがあるのかと思っていた。彼女はこの思いを見透かして続けた。
「あのね、決めてしまうことよ」
え?決める?
「私は地球を楽しむ、幸せである、と設定してしまうこと。これはあなたの、みんなの絶対的な権利。どんな力も暴力も罵詈雑言もこの権利を奪うことはできない。この設定はすべての元になりいつでもあなたにエネルギーを与えるわ」
分かるような分からないような…
「私もあなたと再会して間もないうちにカスタマイズとか言ってあなたを混乱させて悪かったと思うけれど。たとえばね」
彼女は冊子を取り出した。それには
„You know
, I know 地球世代を拓く脳 IQ
301 ご使用の手引き ピニアル社 „と書いてある
ペナポテは パラパラとページをめくって
「ここに初期設定って書いてあるの。皆が纏っている地球仕様の衣装としての身体には大抵の場合それに相応しい脳アプリが搭載されているはずなの。ホストファミリーや環境でたまたまマッチングが上手く行けば自然とベストな設定に切り替わることもあるんだけどそれは稀。良心的な旅行代理店だったらすべてセッティングしてくれて地球に送りだしてくれるところだけど。地球ダイジェストでの情報によれば…これまで地球ツアーを取り扱ってきた代理店リストを見てみると…アルバロツアーズを筆頭にGo!ソーラーシステム社、アース&アース社、シェアの大部分を占めた大手は同じ穴のムジナ、そのサービスを受けられなかった留学生が殆ど。あなたのようにカウンセリングや講習会どころかこの冊子を誰も持っていないし」
さらに彼女は
「この地球用アプリはこのピニアル社しかつくっていないので皆これを搭載しているの。競合がいないからアフターサービスや保証期間の発想もないし売りっぱなし。先代の社長はそれでも良心的だったらしいのだけど経済学部を出たての息子さんに代替わりして..」
さらにペナポテは冊子を捲る。「お客様ご自身による再設定」のページを見て私は目を見張った。続く