3. ソソッカ王子 と最後の授業

スペースメルヘン  「カスタマイズ特使 宇宙王女ペナポテ」

 

「ココ、あなたは地球での姿をしてるけど目は同じ、すぐわかったわ。私たちは声に出さなくても思うだけで会話ができるのよ。あなたの記憶設定を戻したわ」

宇宙学校7年クラス、ペナポテは前から3番目、左から2番め、私はその右隣だった。前にはソソッカ王子、気はいいけど授業中ちっとも落ち着きのない彼のことで私たちはしょっちゅう笑いをこらえていた。

「ソソッカ、覚えてる?しょっちゅう消しゴムやらノートやら落としていた子」

ペナポテ笑って

「ええ、学校最後のお別れの日まで人一倍号泣しながらもなんかボロボロ落としてたわよね。それ見て私たち泣き笑いしたもの。でもね、今彼はソソッカ星の王位を継いでわりと立派に星をおさめているの。」

「ええー、信じられない。であなたペナポテは?」

「私の星は..」ペナポテは少し言い淀んだ

「住めなくなってしまって。父は遠い星に行ってしまって。私は奨学金を得て大学を出て今は宇宙環境機構の職員でいわば視察官のような仕事をしているの」

「わあー、かっこいい。あなたにピッタリ ..」 と言いながら私はハッとした。

ペナポテ星は戦争で滅ぼされたんだ、そして私のアルバロ星とは敵対していた..

「あ、もしかしてお父様は」

「あの戦争で故星は破壊され、住民は移住し父は星流しになってしまったわ」

苦い記憶。そうだった.. 私と彼女は親友だったし父同士もそうだった。幼い頃から家族ぐるみで遊びに行き来してお互いの星はよく知っていた。美しい虹にすっぽりと包まれたペナポテ星。あらゆる鳥がさえずり、輝く光の球体の人々が優しくふうわりふうわりと空中を行ききする。いつもおだやかな音楽を奏でる花々が咲きみだれ、霧のような河が流れ、なんとも清々しいそれは満ち足りた星だった。


しかし私たちが親元を離れ宇宙王族学校で寄宿生活を送るうち故国ではそれぞれ属する星圏の条約に齟齬が生じたのを発端にあれよあれよという間に戦争ということになったのだった。

はじめは何てことない、すぐおさまるよと私たちは楽観的に笑っていたし前年の学園祭を参観にきた親同士も和やかだった。

しかしそんな私達にそれぞれの親元から「○○星の子とは距離を置くように」と政治がらみの手紙が矢のように届くようになって最初は「しっかりしてくれよーPTA ー」と茶化していた生徒たちも次第に不自然にギクシャクするようになった。

いつも賑やかで結束の固かった宇宙アニオタ部も解散、宇宙将棋部は無期長考に入るとし、紳士的な部員数2名の宇宙時刻表倶楽部テツオ王子とスーツ王子も御互いに無視を決め込むようになった。

私にも懐かしいアルバロ星の消印で父からの手紙が届いた。続く

 

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