「油は高い!魚は安い!」
悲鳴に近い声が、15日、日比谷公園に響きわたりました。
初めて、漁船20万隻が全国一斉に休漁しました。
これまでどれだけ、日々、
海や太陽、風や波という大自然を相手にしながら、体を張って生活してきたのか―。
もともと豊かな自然のなかに生きながら、
なぜ人為的な投機マネーによる原油高や食料高騰にこんなに大きく影響されなきゃいけないのか。
ダイバーのはしくれの私は、海に行くたびに、漁村の人間味ある生活に触れるのが楽しみの1つ。
船を走らせる勢いのいい漁師や、漁協で働くおじさんたちから、
海のすごさと厳しさを「教えて」もらったり、ドヤされたり、お酒を飲んで大笑いしたり。
でも、褐色に輝くたくましい顔の漁師のおじさんたちの表情が曇るときの話は、
漁村も農村と同様、どんどん高齢化していること、獲れる魚も減っていること、
スーパーで売られる値の3分の1以下しか収入にならないこと、
老朽化した船もお金がなくて直せないこと。そんなところへ、燃料価格の暴騰・・・
日本の漁業は、その85%がそれぞれの地域の家族単位で営まれていて、
地域社会のつながりの要になっているし、季節感もあって、独自の暮らしや文化がある。
いっぽう、日本は世界一の水産物輸入国。
日本は周りじゅう、豊かな海に囲まれた島国なのに、
中国やアメリカ、ロシアはじめ世界のなんと145カ国から輸入しているのは、驚きです。
しかも、いま世界の主な水産資源の75%が獲り過ぎといわれ、乱獲や海洋環境の破壊が
指摘されるなかで獲られた魚を私たちは安く食べている。漁場で働く人びとの口に入らないまま・・・
「輸入が増えると魚の価格が不安定になって、我々はやっていけんのよ!」
(日本の漁師)
「○○産は不安よね・・・・。安くて助かるけど、産地偽装も多くてどうしたらいいのか」
(日本の消費者)
「安く買いたたかれて、命がけで漁にでても、必死に養殖しても、結局貧しいまま・・・」
(インドネシアの漁民)
安さと競争。
いったい、誰のための、何のための、漁業であり水産業なのか。
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物価高がすすむなかで、魚の値段もこれから高くなっていきそうです。
今回、政府は、漁業関係者へ緊急措置をすると発表しましたが、
本当に必要なのは、
原油価格が落ち着いても変わらない、輸入が困難になっても安定性のある、
水産物の自給の仕組みをつくることではないでしょうか。
それは、食生活を守るという意味でもあるし、
漁師の生計を支えるだけでなく、
漁村の地域経済や文化を残していったり、
海の生態系や環境を守ることにもつながるはずです。