きょう、北朝鮮は核計画の申告を行い、よって、アメリカは北朝鮮のテロ支援国家指定を

解除する手続きを進めると報道されています。


私たちにとって、3つの視点があると思います。

ひとつは拉致問題の解決、ふたつめは核兵器の放棄、みっつめは東北アジアの和平について。


拉致問題の解決にむけては、6者協議のなかにそれを求めて米国に頼りつづけた日本の外交戦略

の失敗であったことを政府は反省すべきです。昨年から米国は姿勢を一変させていたのに、日本は

早くから方針転換して2国間交渉を進められなかったのはなぜなのか、大きな責任があります。

あるいは、米朝の既定路線にのっかりながら、テロ指定解除を外すなとポーズをとっていたとすれば、

国民に対して大きな嘘をついていたことになります。


拉致被害者家族の長い闘いと必死の願いを思うと、ほんとうに胸が苦しくなります。


ふたつめに、今回の決定の先に、北朝鮮は本気で核兵器を手放すのかどうか。

「申告に核兵器は含まれない」と発表されていることや、核兵器だけでなく東北部にある核実験場や

西北部の起爆実験場なども申告されない方針であることに不安を覚えます。


6者協議の一国として、隣国として、今回の内容が北朝鮮の核兵器を温存するような米朝プロセスだ

とすれば、日本は、核兵器の放棄を徹底して求めていく必要があると思います。


もし、北の核兵器放棄に疑念が残れば、核危機の再燃だけでなく、韓国が核開発をしたり、

台湾に核保有の議論が飛び火したり、なにより、日本が核武装する可能性も高まります。

すでに、中国とロシアは核保有国。そんな恐ろしい核兵器地帯にわたしたちは暮らしたいでしょうか。

北朝鮮にも、アメリカにも、核廃絶を求めるのが日本の歴史の役割だと思うのです。


みっつめは、東北アジア地域の和平の視点から。

2002年のブッシュ大統領の「悪の枢軸」発言を経て、アメリカによる先制攻撃戦略が真剣に議論され、

北は核兵器を保有。「朝鮮半島第二次核危機」がピークに達して、イラク戦争につづく第二次朝鮮戦争

になりかねないリアルな脅威と危機の日々がありました。そう振り返ると、米軍基地を抱える日本の

私たちにとっても、地域における武力衝突が回避されたプロセスとして、今回の進展をもっとはっきり

評価してもよいのではないでしょうか。


今回、20年続いた対北朝鮮テロ支援国家指定が解除され、まもなく、50年以上も続いた朝鮮戦争の

休戦状態に終止符がうたれ米朝国交正常化へ踏み出していくとすれば、世界で唯一、冷戦構造が

残っている東北アジアに雪解けの時代がやってくることになります。新しい時代です。


しかし、日本にとって、これからがハードな日朝交渉の本番かもしれません。

制裁圧力一辺倒でない、粘り強い対話交渉を軸として、

拉致問題や核・ミサイルなどの安全保障問題が進展するような外交交渉上の信頼構築と、

そして、過去の清算に誠実に向きあう努力が道を開くと思います。


「憎しみや怒りをぶつけあって、お前が悪い、いやお前だ、 

 と言いあっても何も生まれないと思うのです」と拉致被害者家族の蓮池透さんは語っています。


米朝交渉を後追いするアメリカ頼みの対北朝鮮外交ではなく、

日朝国交正常化を目標とする主体的で積極的な対北朝鮮・関与外交を期待します。