(昨日の投稿から続きます)

 

 警察は 王 の 携帯電話 と SIM カード の行方の追跡は継続していた。 その結果、1 週間以内 に可能性 の 高い人物を 容疑者 としてマークすることに成功した。 それは 王 の SIM カードを使用していた男であった。そして、その出所を追跡したところ、そのカードを売った男が判明した。 
 6 月 20 日 05:00 頃、警察はバンタイダラン のアパートで睡眠中の 容疑者 アーマッド・ナジブ・ビン・アリス (27) を逮捕した 。


 

 詳細に家宅捜査を行った結果、コンドーム、ハサミ、鋭利な刃物、血痕が付着し、ポケットに紙の詰まった衣服が発見され、分析のため科学鑑定班に送られた。

連日の尋問で事件の全貌が徐々にあきらかになってゆく。 容疑者が供述した犯行経緯は恐ろしいものであったと同時に、警察にとっては知られたくない恥ずかしい話であった。

 犯人 ナジブ は王を拉致したのち、人気のない場所で王を 強姦 するため何度か行き先を変えながら、オールド・クラン・ロード 約 7 マイル の ニュー・パンタイ・アベニュー の建設現場に来た。 ここは高さ 25 フィート (約7.62m) の壁と廃棄された建設資材に囲われており、さらに早朝であるため路上にはほとんど通行車はなく、ここに駐車して ガムテープ で王の口を封じ、車内で王を 強姦 したのち刃物で王の腹部を数回刺し、さらにまだ意識のある王を車から出して 1m の深さのある溝に飛び降りさせ、コンクリート が詰まった 2 つの大型タイヤ を上から落とし逃げられないようにした。

 顔を見られているため逮捕されてしまうのを恐れ、16 時間経過した 「6月14日」 (事件発生は13日) の晚になって、ガソリン・スタンドで 2 ビンのガソリンを購入して現場に戻り、瀕死の状態の被害者に火をつけ焼き殺したのであった。

 しかし、ここでもう一つの事実がある。 
事件が発生した 13 日当日、犯人は バンサー・ショッピングセンター の駐車場で 王 を誘拐したのち、犯人は 王 を 強姦 するため郊外を走行中、白バイで巡回中の警官に不審に思われ停止させられていたのである。 警官 ラヴィチンタラン は運転中の男子に身分証の提示を求めた。 男は身分証を渡したが、ラヴィチンタラン が助手席にいる 華人女性 を見ると両手を胸の前で合わせ非常に恐怖におびえており、何かを話したそうな表情であった。  男は自分のガールフレンドだといい、警官から車から降りるよう要求されると拒否、身分証 を預けたままいきなり アクセル を踏み込み逃走したのである。 ラヴィチンタラン はすぐに銃を引き抜き タイヤ を狙って発砲したが命中せず、犯人は逃走したという事件があった。 この警官 ラヴィチンタラン は ナンバー も記録せず、追跡もしなかった。 また報告もしておらず、当然検問も敷いていない。 なんというお粗末ぶり!
 しかも警察は事後になって 批難 された際、「この時に押収した身分証が逮捕のきっかけになった」 と手柄のように語っていたほどである。


 
 不快な話はまだ続く。

 ナジブ は既婚者で 生後 9ヶ月 の子供がおり、また逮捕時に妻は 2 人目の子供を身ごもっていた。

 驚くことに、この犯人は 航空機の清掃 を請け負う会社の スーパーバイザー であり、その妻も銀行の高級職員、日頃の生活は申し分なく、家庭のバックグラウンドも良好であったのである。

 この凶悪かつ悲惨な事件が発生したのち、マレーシア 内 では連続して 類似した殺人・遺体に放火する事件 が相次いだ。 民衆の間には マレーシア警察 当局の 事件処理 はほとんど意味がないと感じた。 

 王麗涓の夫、王奕天は アメリカ から マレーシア に駆けつけ、警察や歯科医のレポートから遺体の身元を確認、葬儀ののち王麗涓の遺体は プタリンジャヤ の教会で葬儀が行われ埋葬された。



 セランゴール 州 シャー・アラム 高等裁判所 で開審された後、ナジブは 「警察から、容疑を認めないと家族に不利が起きるぞ、と脅された」 「王が自分から性的関係を望んだ」 「王を溝に捨てたのは王が自分を溝に捨ててくれ、そうすることで自分は天国にいけると要求した」 「早く現場を離れるよう要求された」  などと主張したが、当然信じる者はおらず、高等裁判所は 2005 年に ナジブ に殺人罪として 死刑、強姦罪 で最高の 20 年の禁固と 10 回 の鞭打ちの判決を下した。

  ナジブは 13 年後の 2016 年 9 月 23 日夜明けに、スランゴール 州 カジャン 監獄 で絞首刑を執行された。


・筆者が思うこと
 王麗涓 が失踪したのち、警察は 積極的 かつ 効果的 な行動を何もとっていなかった。 さらに遺棄されたプロトン車が発見されたにもかかわらず、コンピューター・システム が故障しており、警察は対処すらしていなかったのである。 当然車内に残された血染めの証拠品にも気づかなかった。

 王麗涓 を襲った悲劇は、犯人の凶悪さと同時に 「マレーシア警察当局の不真面目さ」 のもとで発生したのである。 過去の記事でも筆者は マレーシア警察 に否定的な表現をしてきた。
今更、「もし…していたら」 を言っても仕方がないのはわかっているが、ほんの少し マレーシア警察当局 に真面目さ・勤勉さがあったなら ・・・ 白バイ警官がまともな対応をしていたら、王は無傷で救出されたかもしれない。
 後半で ナジブ の背景や家庭環境に関して書いた。 筆者も マレーシア で育ち、華人のみならず、マレー人、インド系にも親しい友人はいるので、こんな言い方はしたくない。 しかし時折発生する 妻が妊娠中に自分の娘を強姦した などの、マレー人の異常、というか猟奇的な 性犯罪傾向 には毎回イヤになる。 華人のマレー人に対する感情はよいものではなく、いないところでは 「Orang Babi ! (ブタ野郎 = イスラム教で最も不潔とされる動物に例えている)」 などと呼ぶ人もいる。
華人の女の子に、「どうしても結婚しなければいけないならインド人とマレー人どちらを選ぶ?」 と聞くと、「インド人の方がまだいいわ」 などと言う。

 私事で恐縮だが、女性が深夜や早朝の外出せねばならなかったり、暗がりや治安のよくなさそうな場所に行かなければならない場合はからなず同行、もしくは代理を買って出る。
 下心あるように思われようが、カッコつけてるように思われようが、身の回りで悲劇や不幸が起こってほしくない、というただそれだけのことである。
 国によっては、夜間に女性が襲われても 「そんな時間に、外出する方が悪い」 などと 警察 や 裁判官 が口にするような国も現実に存在するのである。 先週も パキスタン で フランス人 女性が輪姦されたばかりだ。