鉄板、とはこういう作品のことを呼ぶのでしょうね。
まず、1つ1つの音の完成度がものすごく、無条件の安らぎを与えてくれます。
映像もさすがのPhotonskytoさん、という仕上がりで、
繊細な表現と壮大な世界観が、静と動が見事に同居しためくるめく空中演舞には、
一度見た者を捕らえて離さない強烈な力が備わっています。

ただ、作品を聴きこめば聴きこむほど、本当にこれでよかったのか?という
疑問がいくつか湧いてきたのも事実なので、記しておきましょう。

まず、楽曲の方ですが、リズムの演出。確かにハウスとしては間違いない選択ですが、
綺麗な音をのっけるための器、という以上の印象を持つことができず、
魅力的なリズムで聴き手と曲をより深く結びつける力はあまり感じられませんでした。
(この辺、同じジャンルのBMSではsyattenさんのAltostratusが素晴らしいですね。
 後半に行くにしたがって少しずつひねりが効いてくる点も含めて。)

次に、映像ですが、「晩夏」というテーマでここまでスペーシーになってしまうと、
ちょっとついていけない気がしてしまいました。
1つ1つのカットの美麗さ、全体の流れのスマートさは驚嘆のレベルですが、
作曲者と映像作家の間でよりイメージが共有されていれば・・・と思わずにはいられません。

音と映像の完成度の高さが、かえってBMSという媒体の難しさと奥深さを浮き彫りにした、
そんな作品であると思いました。

Late Summer
by Ryo Nakamura
Progressive House
from THE BMS OF FIGHTERS 2013(Delta Sounds)
930 pts.