ジョン・ロックの『寛容についての手紙』を、加藤節氏と李静和 氏による2018年に岩波文庫で出版された日本語訳で読みました。本書は、ロックがラテン語版で1689年に出版したものをホップルが英語に訳してロンドンで刊行したものの翻訳で、解説や注を含めても、文庫本で183ページの薄い一冊です。そして、本書は、薄い本なのですが、政治と宗教の領域を分けて捉える政教分離という思想の英語での原点と捉えられている重要な一冊です。高橋氏と李氏は、本書の翻訳に、1992年夏のフランスでの経験を起点にして取り組まれていて、その成果をまとめたものが本書になります。1688年のいわゆる「名誉革命」を踏まえて、その理念を明解に述べた本書は、1690年に出版された『統治論』と並ぶ、ロックの名著とされています。魂の 

救済を目的とする宗教と、人民の現世的利益の保護を目的とする政府の役割を明確に分けて説明した本書は、アメリカ独立宣言やフランス人権宣言を経て、日本国憲法にも引き継がれることになる欧米の政治思想の原点と見なすことが、できるようです。現在の朝ドラのテーマにもつながる理念が、新しく明解な日本語で読めるようになったことを、我々は、嬉しく思います。

 ところで、私が本書に辿り着いたのは、マコーリーの『グラッドストン論』(1839年)を読む中で、政教分離という思想の原点を確かめる必要に迫られたからです。古い生松敬三氏の1968年の訳で読んでからの歳月の中で、ロックの本書の位置付けも大きく変わったのだと、つくづく感じています。生松敬三氏の翻訳からもう半世紀以上が立ちました。

 


 

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