インドで教育史を教えられていらっしゃるR.V.Raoさんの著書『beyond Macaulay: Education in India』(Routledge, London, 2020)を読みました。
この本は、イギリス東インド会社の統治の下に置かれていた地域で行われていた教育の歴史について、ハードカバーの260ページを費やして考察を加えた英語で書かれた 研究書です。タイトルで示されているように、焦点は、 T.B. Macaulayが1835年2月5日に、当時のインド総督ウィリアム・ベンティンクに提出したいわゆる『インド教育についての覚書』に合わされています。本書で、ら当時の東インド会社が統治していた地域にどのような学校が存在していたのか、学校・教員・生徒のそれぞれの数を明らかにした上で、東インド会社のインド総督府が現地での教育政策についてどのような議論を行い、どのような施策を施したのかを、イギリスと現地の それぞれに遺されている資料に対して実証的に考証を加えることを通じて、ラオさんは、明らかにされています。マコーリーの『インド教育 覚書』一点に議論を集約するのでは不十分で、マコーリーがインド在任中に作成した教育について作成した数々の覚書にも目を向けることが 必要であることは、既に、平田雅博氏の著書や信澤淳氏の論文で、日本語でも、指摘されていることなのですが、ラオさんは、資料を博捜することを通じて、明らかにされています。東インド会社における教育についての議論を英語派と東洋語派という言葉で単純化することや、マコーリーをインドの後進性の元凶扱いすることが正確ではないことは、本書によって確認することができます。
イギリスの植民地での英語教育の歴史に関心をお持ちの方には、本書は お薦めしたいと思えます。
→この本です。
平田雅博氏が『インド教育覚書』にも触れられている本です。
本書を読む手がかりになります!